第一章4 種明かし
「ファイア・コア!!!!」
できる限りの最大火力を森全体に対して放つ。もし、魔物がいるなら出てこい。
透明な魔物が本当にこの世界にいるなら見えるはずだ、その影が。
木々が大きな音を立てながら燃える。風を切るような透明な斬撃は見えなかった。シールドの中にいる二人が安全なのを確認しながら、周囲から何か来ないか警戒を強める。
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遡ること昨日のことである。自分の記憶の中にある地域の伝承や魔物の知識に総当たりしたが、透明な魔物なんてものはいなかった。
おそらく最も魔物に関する情報量の多かった図鑑には、類似する魔物は居た記憶がある、完全な透明化ではなく不完全で霧のような透明化をする魔物だ。そして、何よりも気になったことがある。
俺がいた時代は、それまでの時代に比べて平和で食糧も豊富な時代だった。ゆえに多くの若人たちが、スリルを求めて冒険者になったのだ。その時代に父さんも冒険者をやっていた。
その流行によって、魔法や魔物、ダンジョンなどに関する情報収集が盛んに行われた。もちろんその中には民間伝承に出てきた魔物に関する情報も含まれていたはずだ。ミガリという大きな都市が近くにある、エパネの町にその情報網がかかっていないわけが無いのだ。
ここから、俺が導き出した推論は、こうだ。
一「エパネの町の住民が戦争に巻き込まれ全員亡くなった」というものだ。このように考えたが、ミガリという都市は俺が生きていた時代にもあった。ならば、かつて行っていた空路の輸送が必要な理由として、透明な魔物についての記録が残っているはずだ。魔物に関する情報収集は、冒険者協会をはじめ公的な機関も関与していたはずだ。以上から、一つ目の結論が本当だろうと誤りだろうと透明な魔物とかいう特殊なスキルを持つ魔物の情報が俺の耳に届いていないわけないと推測したのだ。
ということはおそらく、透明な魔物は、魔術師に生み出されたものあるいは、そう見せられたものということになるだろう。
その場合、次に考えなくてはいけなかったのは、仮に透明な魔物が魔術師によって生み出された幻影だったとして、どうやって解除するのかという話になってくる。おおよそこういう魔術は、羊皮紙のような朽ちにくく、描きやすいものに魔術師本人の血を用いて魔法陣を描き、対象が魔法陣の上を通ったタイミングで発動するというものが多い。
しかし、その場合も魔法陣に込められた魔力は事前に術師本人が事前に込めていた魔力だけになり、数十回の魔力弾のようなものは厳しいと思った。この疑問だけが解決されずに、いや、この疑問が解決されることを願って俺は森に来たのだ。
森一体が炎を上げる。魔法陣は全部燃えたはずだ、、これでもう終わりなはずだ。
そうやって後ろでシールドに守られた2人の方を振り返った時だった。女剣士が叫ぶ声が聞こえると共に、背中に激痛が走った。
背中が熱くなる。
「う.....」
痛みに悶えて、足がもつれる。俺が張っていたシールドは、解かれた。女剣士が急いでこちらに近寄り、少女に治癒の指示を出す。
「アテナ、早く傷を!」
女剣士は周囲からの斬撃を警戒したが木が焼けたり、折れたりする音で小さな魔術の起こりを捉えるのは厳しそうだった。
シールドが解かれた瞬間に過ったことがあった。そうだ、魔術は術師本人が攻撃を受けたり、したら解かれるのだ。
逆に言うと術師本人が攻撃を受けないかぎり、その術は解かれない。かといって無制限に離れた位置に術師がいることもできないはずだ。つまり、術師は近くにいて俺達に攻撃を放った。
それも戦争に参加しないような術師だ。だが、そんなやつは俺が絶対に勝てないような剣士相手に一撃を食らわせたりしたのだ。痛みで思考が早く浅くなるが、本気で考える。少女が傷を治癒してくれているがすぐに治るような傷ではなかった。
ミガリ側の術師なのか?それとも......エバネ側の術師か?....。それも何年もいるのか?そんな術師が?秘密裏に戦争にも出ずに?
女剣士の右手に負った傷は、シールドに守られている間に少女によって治癒されたのだろう。
万全な状態とは、とても言えないが不可視の斬撃を研ぎ澄まされた感覚で打ち消していた。
さっきの俺の攻撃によって生まれた炎の壁は、女剣士の邪魔になっていたことを少し後悔する。何か手助けになることをしなくては...。
そう考えたが、なかなか思いつかなかった。
また木々を焼き尽くす炎のせいか、這いつくばっている俺は、呼吸がしづらかった。
炎を消すために今度は逆に水の巨大魔法を使えばどうかと思ったが、魔力不足で撃てそうにない。様々なことに考えを巡らしていた時、あることに俺は気づいた。
炎を放つ前の斬撃とは違い、不可視の斬撃はある一方向からのみ来ているのだ。その瞬間、俺は術師の存在を確信した。
おそらくこのことは、女剣士もそして術師本人も気づいており、直接戦闘は時間の問題であることを3人全員が認識しているだろう。となると、この勝負かなりこちらに分がありそうだ。
しかしながら、同時に俺ら側には急所となりうる少女がいた。
治癒術師は、だいたいの場合において戦闘には不向きであることが多い。そして、少女が狙われて致命的な傷を負った場合、女剣士並びに俺の敗北は決定的であり、術師を倒したところで取り返しがつかないのだ。
以上から俺のとれる行動はほとんど1つと言って差し支えないだろう。最強であろう女剣士ではなく、俺と術師本人との直接対決だ。それに敵の数が一人だと決めつけることができないからである。
そうやって結論が出ると共に、戦いの合図がなるかのように俺の傷は少女の治癒魔法によって治されたのだった。
「エダさん、俺がヤツを倒します!後ろは任せます!」
相当な能力の高さの術師を相手にするのでシールドを張りながらの戦闘は、とてもじゃないができない。
それに最初から透明な魔物を一人で倒す予定だったじゃないか。そうして俺は風魔法オーバーフローで大まかな術師の方向へと森の木々そのものや炎をかき消すように道を作った。
斬撃が刹那の一瞬だけ途切れた瞬間に、加速魔法アクセラとフローの混合魔術で全速力でその方向へと進んだ。
周囲の炎で木の皮が焼け落ちる音は聞こえなくなった時、術師の姿が見えた。
俺は、唖然とした。
アイツだったのだ。
ーーーそこに立っていたのは、町長・アベルだった。
アベルの爺さんは、こちらを悲しそうに見つめていた。しかし彼の目には確かな殺意が灯っていた。
読んでいただきありがとうございます!
次回は第一章5 「確かな差」です。更新予定日は来週の水曜日6/24のつもりです。
今週は、多忙のため来週に見送ります。(6/24)来週からは、まとまった時間ができるので集中連載をして第一章を終わらせるつもりです。m(_ _)m
※更新が遅れる場合もありますが、ご容赦くださいm(_ _)m




