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Bingata Legacy 〜沖縄戦×米軍基地配置×禁忌の紅型〜  作者: ちま
第一部 尚継編 ― 未来に紡ぐ色 ―
39/144

最終話 沖縄戦後100年、その展示

展示とは、過去を並べることではない。

問いを残すことだ。


沖縄戦から百年。

一枚の紅型が、静かに公開される。


それを見るのは、

研究者だけではない。

歴史を生きる人々だ。

東京。

国立博物館。


2045年6月。

朝。


まだ人の少ない展示室。


静かな光の中に

一枚の布が置かれている。


紅型。


沖縄本島。

海。

そして――

日章旗と星条旗。


継は静かにそれを見ている。

背後から足音。


彩乃

「もうすぐ開館ですね」


健太

「思ったより静かだな」


「……嵐の前だから」


健太が笑う。


健太

「展示で嵐ってなんだよ」


「歴史です」



開館。


ガラス扉が開く。

人々がゆっくり入ってくる。


学生。

観光客。

外国人。

研究者。


そして――

沖縄出身者。


紅型の前に人が集まる。

ざわめき。



壁パネル。


沖縄戦終結100年

1945–2045


特別展示

「日米地位協定」


挿絵(By みてみん)



人々の声。


来場者

「これが紅型?」


来場者

「布なんだ」


学生

「沖縄本島だ」


外国人

「Beautiful…」


沖縄出身の老人

「……」


黙って布を見る。



少し離れた場所。


リン・チャンが

来場者の様子を観察している。


チャン

「予想以上ですね」


御厨

「展示は成功です」


「まだ始まったばかりです」



その頃。


SNS。

スマートフォンの画面。

次々と投稿が流れる。


|投稿①

|#沖縄戦後100年展

|紅型で歴史語るのすごい


|投稿②

|#国立博物館

|日本とアメリカの旗がある意味深


|投稿③

|#日米地位協定

|布なのに政治展示


|投稿④

|#沖縄戦100年

|沖縄のこと考えさせられる


|投稿⑤

|#仲村尚造

|これ作った人天才では?


|投稿⑥

|#歴史は布に残る


投稿が増えていく。



展示室。


林明浩が入ってくる。

スーツ姿。

相変わらず余裕の笑顔。


「大盛況ですね」


「あなたのおかげではありません」


「市場のおかげです」


「文化です」


「どちらでもいい」


林は紅型を見る。


「面白い」



その時。

背後から声。


「……美しいですね」


継が振り向く。


一人の女性。


挿絵(By みてみん)


年配。

柔らかな着物。

短い銀髪。


手の中に折り鶴。


ヒナ

「この布」


「祈りの布ですね」


「……」


ヒナは紅型を見る。


沖縄本島。

海。

そして二つの旗。


ヒナ

「沖縄の物語ですね」


「はい」


ヒナ

「でも」


一拍。


「日本の物語でもあります」


「……」



ヒナは微笑む。


ヒナ

「私は広島の者です」


「広島?」


ヒナ

「ええ」


折り鶴を見つめる。


ヒナ

「戦争は」


「場所が違っても」


「同じ痛みを残します」


「あなたは…研究者ですか?」


ヒナ

「いいえ」


一拍。


ヒナ

「ただの来場者です」


ヒナはもう一度紅型を見る。


挿絵(By みてみん)


ヒナ

「ですが」


静かに言う。


「展示とは」


「過去を並べることではありません」


「……」


ヒナ

「問いを残すことです」



ヒナは継を見る。


ヒナ

「いい展示です」


「ありがとうございます」


ヒナ

「次は」


一拍。


「広島ですね」


「……?」


ヒナ

「日本戦後百年」


静かに笑う。


ヒナ

「またお会いしましょう」



ヒナは人混みに消える。


「……」


チャンが来る。


チャン

「知り合いですか?」


「いいえ」


継は紅型を見る。


「ただの来場者だそうです」



展示室。

人々。

SNS。


紅型。

沖縄。

日本。


そして未来。



静かな展示室。


ガラスケースの中。


一枚の布。



歴史は

終わらない。


語られる。


議論される。


そして――


未来へ渡る。



尚継編・完

作者より


ここまで読んでくださり、

本当にありがとうございました。


第一部・尚継編は、これにて完結です。


この物語の中で描いてきたのは、

「文化とは何か」

そして、

「それを誰が決めるのか」という問いでした。


そしてその答えは――

まだ、物語のすべてではありません。


---


もしこの物語が少しでも心に残ったなら、

ぜひブックマークしていただけると嬉しいです。


この先の物語も、

きっと繋がっていきます。


---


■外伝「林明浩編」


次回は――

まったく違う物語が始まります。


林明浩。

大企業の若き社長。


完璧に見える彼の、

“婚活”が始まります。


ここまでとは少し空気の違う、

軽く読める外伝です。


ですが――


この物語もまた、

確かに本編と繋がっています。


---


次回、

外伝「林明浩編」でお会いしましょう。

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