↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
351/352

第一話 仲村家の歴代写真アルバム

本編完結後のおまけ企画です!


五世代にわたる『Bingata Legacy』の物語。

今回は、歴代の写真を眺めながら、

これまでの出来事を振り返ってみます。


……ただし。


仲村家のアルバム、よく見ると――

王族、軍人、政治家、スパイ、社長、研究者。


なぜ紅型職人一家の写真に、

こんな人たちが写っているのでしょうか(笑)


読者の皆様から

いつの間にか「外交サロン仲村家」と

呼ばれるようになった、この一家。


その歴史を、

写真とともに振り返っていきます。


まずは1879年――。

琉球王府と清の使節団から。

午後。


仲村家のお茶の間。


ちゃぶ台の上に、

一冊の古いアルバムが置かれている。


継

「……これ、何ですか?」


美咲

「仲村家の歴代写真よ」


継

「歴代?」


文造

「昔の写真がいっぱい入ってるんだって」


澪

「見ようよ」


モーガン

「面白そうね」


尚造も横から覗き込む。


尚造

「僕も見ていいですか?」


継

「もちろん」


隆造

「懐かしいな」


継

「……隆造さん、写ってるんですか?」


隆造

「最初の方にいるぞ」


継

「写真が残ってるんだ……」


隆造

「儂の時代は貴重だからな」


ページをめくる。


⸻


一枚目。


1879年。古い写真。


琉球王府の人々と、清から来た使節団。


中央には、

尚泰王と使節代表が写っている。


後ろに尚典、尚綾、尚秀。

隆造は琉球側の端にいる。


挿絵(By みてみん)


隆造

「これは琉球処分の頃だな」


継

「うわ……歴史の教科書みたい」


文造

「この人、誰?」


清側の端にいる男性を指差す。


継

「……」


澪

「どうしたの?」


継

「……林明浩(リン・ミンハオ)に似てる」


全員

「…………」


ページを拡大する。


確かに。


現代の林明浩とほぼ同じ顔。


美咲

「本当だ……」


尚造

「林家の先祖じゃないのか?」


隆造

「林景修(リン・ジンシウ)」


全員

「?」


隆造

「清から来た使節の一人だ」


継

「知ってるんですか!?」


隆造

「綾さんに声をかけていた男だ」


尚綾

「……」


継

「ナンパ!?」


尚綾

「失礼な方でした」


美咲

「林家、昔から変わってないんだ……」


継

「待って」


「これ、歴代写真アルバムですよね?」


「最初のページから外交問題なんですが」


⸻


二ページ目。


1944年。


軍服姿の男たち。


その中央に――

大量の焼き芋。


挿絵(By みてみん)


継

「……何これ」


尚造

「焼き芋パーティーです」


継

「第32軍で?」


尚造

「はい」


文造

「楽しそう!」


写真の隅に、尚造と隆司。


そして中央には牛島、長、八原ら。


継

「……」


「何で将校たちが焼き芋食べてるんですか?」


尚造

「食料事情が厳しかったから」


美咲

「でも楽しそう」


その時。


後ろから声。


バックナー

「……」


全員が振り返る。


バックナー

「戦中に何をしているんだ」


尚造

「!」


継

「バックナーさん」


バックナー

「俺は沖縄戦の司令官だぞ」


尚造

「知っています」


バックナー

「その俺が後世で見せられる写真が」


写真を指差す。


バックナー

「焼き芋パーティーなのか?」


尚造

「美味しかったですね〜」


隆司

「はい」


バックナー

「そういう問題ではない」


尚造

「戦争中でも、食べるものは食べる」


バックナー

「……」


少し考える。


バックナー

「……まあ、そうだな」


継

「納得するんだ」


⸻


三ページ目。


1947年。


戦後復興が始まった頃の仲村家。


焼け跡から少しずつ家を建て直し、

村の人々は物資を分け合いながら暮らしていた。


写真には、

幼い美咲と彩花。


その後ろに立つ、

文とバックナーの姿。


挿絵(By みてみん)


文

「この頃はね」


「ご近所付き合いが色々複雑だったのよ」


バックナー

「……色々あったな」


継

「文さん」


文

「はい?」


継

「それ」


「ご近所問題じゃなくて外交問題です」


美咲

「でも、お隣さんだったんでしょ?」


継

「お隣さんの肩書きがおかしいです!」


バックナー

「仲良くするのに肩書きは関係ないだろう」


継

「その結果」


「後の仲村家が外交サロンになったんですが」


文

「まあ、そうねぇ」


――写真の裏には、ただ一言。


『ご近所さんと復興を頑張った日』


継

「絶対もっと重要なこと書いてあるだろ……」


⸻


四ページ目。


1973年。


華やかな結婚式。

美咲と隆司。


その周囲には――


文。

彩花。

健一。

小林。

バックナー。


ジャック。

ジョン1世。

屋良。

ランパート。


さらに様々な関係者。


挿絵(By みてみん)


継

「……」


澪

「……」


文造

「……」


モーガン

「これは……」


バックナー

「……」


継

「何で結婚式に外交関係者がこんなにいるの?」


美咲

「知り合いが多かったから」


隆司

「仕事関係だ」


継

「仕事関係」


写真を見る。


継

「こっちは?」


美咲

「米軍関係」


継

「こっちは?」


隆司

「政府関係」


継

「こっちは?」


美咲

「文化関係」


継

「……」


澪

「外交サロンだね」


文造

「仲村家だね」


バックナー

「俺も写っているな」


継

「あなた、幽霊になってから見るんですか?」


バックナー

「いい写真だ」


美咲

「でしょう?」


隆司

「……」


隆司が写真を見つめる。


隆司

「若かったな」


美咲

「そうね」


文

「二人とも可愛いわねぇ」


隆司

「お義母さん」


文

「何?」


隆司

「この写真、誰が撮りました?」


文

「CIAの人じゃなかった?」


隆司

「結婚式のカメラマンまで怪しいんですけど」


⸻


五ページ目。


2005年。


復興した首里城の広場。


この日、ジョン3世は二十歳を迎え、

バックナーから「エイサー将軍」の称号を継承した。


……ただし。


バックナーはすでに故人である。


写真には、若きジョン3世と、

その隣で笑うバックナーの姿が残っている。


挿絵(By みてみん)


ジョン3世

「バックナーさん」


「幽霊なのに、なんで式典に出てるんですか?」


バックナー

「君の晴れ舞台だからな」


美咲

「懐かしいわねぇ」


継

「いや、待って」


「幽霊が普通に記念撮影してるんだけど」


文

「仲村家では普通よ」


継

「普通じゃない!」


――なお。


この日からジョン3世は、

米軍関係者からも「将軍」と呼ばれるようになった。


継

「なんでエイサーが米軍に継承されてるんだよ……」


⸻


最後のページ。


2045年。


大量の写真。


沖縄。

東京。

アメリカ。

中国。

ヨーロッパ。


各地で紅型を広める継。


そして写真の隣には、


ジョン3世。

林明浩。

御厨。

チャン。

ヒナ。


その他、大勢。


挿絵(By みてみん)


継

「……」


美咲

「どうしたの?」


継

「いや」


「俺、こんなに色んな人と会ってたんだなって」


澪

「楽しそう」


文造

「父さん、これ何の旅行?」


継

「紅型のワールドツアー」


モーガン

「写真だけ見ると外交官ね」


在沖米軍副司令。

中国の経済王。

文化庁。

歴史研究者。

被爆者代表。


継

「……」


静寂。


継

「……俺、本当に紅型職人?」


美咲

「そうよ?」


尚造

「紅型職人です」


隆造

「間違いない」


文

「仲村家だからね」


継

「その説明で納得できないんですが」


⸻


継がアルバムを閉じる。


継

「……こうして見ると」


「仲村家って」


「昔から色んな人と付き合ってきたんですね」


隆造

「ああ」


尚綾

「人と人との縁は大切よ」


尚造

「戦争中も」


文

「戦後も」


美咲

「返還の時代も」


継

「そして今も」


少し穏やかな空気になる。


継

「……紅型って」


「人を繋ぐものなのかもしれませんね」


全員

「……」


いい話になりかける。


その時。


文造がアルバムをもう一度開く。


文造

「あ」


継

「?」


文造

「この写真」


一枚を取り出す。


林景修(リン・ジンシウ)。


文造

「この人、明浩さんにそっくり」


継

「それ、さっきやった」


文造

「でもさ」


写真を裏返す。


そこには――


「尚綾姫へ」


と書かれている。


全員

「…………」


尚綾

「……」


隆造

「……」


尚造

「母さん?」


尚綾

「知らないわ」


隆造

「絶対に知っている顔だぞ」


尚綾

「知らないわ」


継

「……」


「林家、1879年から何してるんですか!?」


仲村家の歴史は、

まだまだツッコミどころが多い。


⸻


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。