第一話 仲村家の歴代写真アルバム
本編完結後のおまけ企画です!
五世代にわたる『Bingata Legacy』の物語。
今回は、歴代の写真を眺めながら、
これまでの出来事を振り返ってみます。
……ただし。
仲村家のアルバム、よく見ると――
王族、軍人、政治家、スパイ、社長、研究者。
なぜ紅型職人一家の写真に、
こんな人たちが写っているのでしょうか(笑)
読者の皆様から
いつの間にか「外交サロン仲村家」と
呼ばれるようになった、この一家。
その歴史を、
写真とともに振り返っていきます。
まずは1879年――。
琉球王府と清の使節団から。
午後。
仲村家のお茶の間。
ちゃぶ台の上に、
一冊の古いアルバムが置かれている。
継
「……これ、何ですか?」
美咲
「仲村家の歴代写真よ」
継
「歴代?」
文造
「昔の写真がいっぱい入ってるんだって」
澪
「見ようよ」
モーガン
「面白そうね」
尚造も横から覗き込む。
尚造
「僕も見ていいですか?」
継
「もちろん」
隆造
「懐かしいな」
継
「……隆造さん、写ってるんですか?」
隆造
「最初の方にいるぞ」
継
「写真が残ってるんだ……」
隆造
「儂の時代は貴重だからな」
ページをめくる。
⸻
一枚目。
1879年。古い写真。
琉球王府の人々と、清から来た使節団。
中央には、
尚泰王と使節代表が写っている。
後ろに尚典、尚綾、尚秀。
隆造は琉球側の端にいる。
隆造
「これは琉球処分の頃だな」
継
「うわ……歴史の教科書みたい」
文造
「この人、誰?」
清側の端にいる男性を指差す。
継
「……」
澪
「どうしたの?」
継
「……林明浩に似てる」
全員
「…………」
ページを拡大する。
確かに。
現代の林明浩とほぼ同じ顔。
美咲
「本当だ……」
尚造
「林家の先祖じゃないのか?」
隆造
「林景修」
全員
「?」
隆造
「清から来た使節の一人だ」
継
「知ってるんですか!?」
隆造
「綾さんに声をかけていた男だ」
尚綾
「……」
継
「ナンパ!?」
尚綾
「失礼な方でした」
美咲
「林家、昔から変わってないんだ……」
継
「待って」
「これ、歴代写真アルバムですよね?」
「最初のページから外交問題なんですが」
⸻
二ページ目。
1944年。
軍服姿の男たち。
その中央に――
大量の焼き芋。
継
「……何これ」
尚造
「焼き芋パーティーです」
継
「第32軍で?」
尚造
「はい」
文造
「楽しそう!」
写真の隅に、尚造と隆司。
そして中央には牛島、長、八原ら。
継
「……」
「何で将校たちが焼き芋食べてるんですか?」
尚造
「食料事情が厳しかったから」
美咲
「でも楽しそう」
その時。
後ろから声。
バックナー
「……」
全員が振り返る。
バックナー
「戦中に何をしているんだ」
尚造
「!」
継
「バックナーさん」
バックナー
「俺は沖縄戦の司令官だぞ」
尚造
「知っています」
バックナー
「その俺が後世で見せられる写真が」
写真を指差す。
バックナー
「焼き芋パーティーなのか?」
尚造
「美味しかったですね〜」
隆司
「はい」
バックナー
「そういう問題ではない」
尚造
「戦争中でも、食べるものは食べる」
バックナー
「……」
少し考える。
バックナー
「……まあ、そうだな」
継
「納得するんだ」
⸻
三ページ目。
1947年。
戦後復興が始まった頃の仲村家。
焼け跡から少しずつ家を建て直し、
村の人々は物資を分け合いながら暮らしていた。
写真には、
幼い美咲と彩花。
その後ろに立つ、
文とバックナーの姿。
文
「この頃はね」
「ご近所付き合いが色々複雑だったのよ」
バックナー
「……色々あったな」
継
「文さん」
文
「はい?」
継
「それ」
「ご近所問題じゃなくて外交問題です」
美咲
「でも、お隣さんだったんでしょ?」
継
「お隣さんの肩書きがおかしいです!」
バックナー
「仲良くするのに肩書きは関係ないだろう」
継
「その結果」
「後の仲村家が外交サロンになったんですが」
文
「まあ、そうねぇ」
――写真の裏には、ただ一言。
『ご近所さんと復興を頑張った日』
継
「絶対もっと重要なこと書いてあるだろ……」
⸻
四ページ目。
1973年。
華やかな結婚式。
美咲と隆司。
その周囲には――
文。
彩花。
健一。
小林。
バックナー。
ジャック。
ジョン1世。
屋良。
ランパート。
さらに様々な関係者。
継
「……」
澪
「……」
文造
「……」
モーガン
「これは……」
バックナー
「……」
継
「何で結婚式に外交関係者がこんなにいるの?」
美咲
「知り合いが多かったから」
隆司
「仕事関係だ」
継
「仕事関係」
写真を見る。
継
「こっちは?」
美咲
「米軍関係」
継
「こっちは?」
隆司
「政府関係」
継
「こっちは?」
美咲
「文化関係」
継
「……」
澪
「外交サロンだね」
文造
「仲村家だね」
バックナー
「俺も写っているな」
継
「あなた、幽霊になってから見るんですか?」
バックナー
「いい写真だ」
美咲
「でしょう?」
隆司
「……」
隆司が写真を見つめる。
隆司
「若かったな」
美咲
「そうね」
文
「二人とも可愛いわねぇ」
隆司
「お義母さん」
文
「何?」
隆司
「この写真、誰が撮りました?」
文
「CIAの人じゃなかった?」
隆司
「結婚式のカメラマンまで怪しいんですけど」
⸻
五ページ目。
2005年。
復興した首里城の広場。
この日、ジョン3世は二十歳を迎え、
バックナーから「エイサー将軍」の称号を継承した。
……ただし。
バックナーはすでに故人である。
写真には、若きジョン3世と、
その隣で笑うバックナーの姿が残っている。
ジョン3世
「バックナーさん」
「幽霊なのに、なんで式典に出てるんですか?」
バックナー
「君の晴れ舞台だからな」
美咲
「懐かしいわねぇ」
継
「いや、待って」
「幽霊が普通に記念撮影してるんだけど」
文
「仲村家では普通よ」
継
「普通じゃない!」
――なお。
この日からジョン3世は、
米軍関係者からも「将軍」と呼ばれるようになった。
継
「なんでエイサーが米軍に継承されてるんだよ……」
⸻
最後のページ。
2045年。
大量の写真。
沖縄。
東京。
アメリカ。
中国。
ヨーロッパ。
各地で紅型を広める継。
そして写真の隣には、
ジョン3世。
林明浩。
御厨。
チャン。
ヒナ。
その他、大勢。
継
「……」
美咲
「どうしたの?」
継
「いや」
「俺、こんなに色んな人と会ってたんだなって」
澪
「楽しそう」
文造
「父さん、これ何の旅行?」
継
「紅型のワールドツアー」
モーガン
「写真だけ見ると外交官ね」
在沖米軍副司令。
中国の経済王。
文化庁。
歴史研究者。
被爆者代表。
継
「……」
静寂。
継
「……俺、本当に紅型職人?」
美咲
「そうよ?」
尚造
「紅型職人です」
隆造
「間違いない」
文
「仲村家だからね」
継
「その説明で納得できないんですが」
⸻
継がアルバムを閉じる。
継
「……こうして見ると」
「仲村家って」
「昔から色んな人と付き合ってきたんですね」
隆造
「ああ」
尚綾
「人と人との縁は大切よ」
尚造
「戦争中も」
文
「戦後も」
美咲
「返還の時代も」
継
「そして今も」
少し穏やかな空気になる。
継
「……紅型って」
「人を繋ぐものなのかもしれませんね」
全員
「……」
いい話になりかける。
その時。
文造がアルバムをもう一度開く。
文造
「あ」
継
「?」
文造
「この写真」
一枚を取り出す。
林景修。
文造
「この人、明浩さんにそっくり」
継
「それ、さっきやった」
文造
「でもさ」
写真を裏返す。
そこには――
「尚綾姫へ」
と書かれている。
全員
「…………」
尚綾
「……」
隆造
「……」
尚造
「母さん?」
尚綾
「知らないわ」
隆造
「絶対に知っている顔だぞ」
尚綾
「知らないわ」
継
「……」
「林家、1879年から何してるんですか!?」
仲村家の歴史は、
まだまだツッコミどころが多い。
⸻
(つづく)




