↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Bingata Legacy 〜沖縄戦×米軍基地配置×禁忌の紅型〜  作者: ちま
第五部 バックナー編 ― 平和へ結ぶ縁 ―
PR
301/349

第十七話 エイサー将軍、幽霊と遭遇する

エイサーが鳴る。


踊る村人。

踊る将軍。


そして――


帰ってきたのは、

ご先祖様だけではなかった。

1949年。夏。

 

お盆。

夕暮れ。


太鼓の音が村へ響いていた。


ドン。

ドドン。


子どもたちが走り回る。


彩花も、美咲も嬉しそうだった。


「始まるー!」


⸻


広場。


村男Aが太鼓を叩く。


「よし!」


「将軍!」


「今年は本番だ!」


挿絵(By みてみん)


バックナーは鉢巻きを締め直した。


「ああ」


「去年よりは踊れる」


文は笑う。


「期待してますよ」


⸻


太鼓が鳴る。

エイサー開始。


バックナーも村男たちと一緒に踊る。


去年より動きは自然だった。

村人たちが拍手する。


「将軍!」


「うまくなった!」


彩花も飛び跳ねる。


「おとうー!」


美咲も手を叩く。


「おとう!」


⸻


その時だった。


バックナーの隣へ、

一人の男が現れた。


軍服ではない。

和装の尚造だった。


尚造

「楽しそうですね〜」


バックナー

「……!」


思わず踊りが止まる。


村男B

「将軍!」


「そこ右!」


バックナー

「あ、ああ!」


慌てて踊る。


尚造は笑う。


「去年より上手ですよ」


バックナー

「……尚造」


尚造

「はい」


「お久しぶりです」


バックナー

「お前は……」


尚造

「お盆ですから」


バックナー

「そういうものなのか?」


尚造

「沖縄では」


⸻


文は不思議そうに見る。


「将軍?」


「誰と話してるんですか?」


バックナー

「……」


尚造は横で手を振っていた。


バックナーは咳払いする。


「独り言だ」


挿絵(By みてみん)


文

「疲れてますね」


⸻


踊りは続く。


尚造も楽しそうに眺めている。


「そこ」


「もう少し腰ですよ」


村男Aも叫ぶ。


「将軍!」


「腰!」


バックナー

「両方から言われるんだが!」


挿絵(By みてみん)


村人たち、大笑い。


⸻


祭りは最高潮。


太鼓。

三線。

笑い声。


彩花が美咲の手を引く。


「踊ろ!」


二人も小さく真似する。


尚造は静かにその光景を見つめた。


「……良かった」


バックナー

「何がだ」


尚造

「村に笑顔が戻りました」


少し間。


「僕はそれが見たかった」


挿絵(By みてみん)


バックナーは黙って踊り続けた。


⸻


祭りが終わる。

人々は帰り始める。


提灯だけが揺れていた。


尚造は静かに歩く。

バックナーも隣へ並んだ。


「ありがとう」


尚造が言った。


バックナー

「私に礼を言うのか」


尚造

「家族を」


「守ってくれて」


「笑わせてくれて」


「本当にありがとうございます」


バックナーは少し照れくさそうに笑う。


「……俺は」


「途中から参加しただけだ」


尚造は首を横に振った。


「家族って」


「血だけじゃないですよ」


挿絵(By みてみん)


「一緒に笑ってくれる人です」


風が吹いた。


⸻


遠くでは。


文が彩花と美咲の手を引いて歩いている。


尚綾が笑う。

隆造も楽しそうだった。


尚造はその背中を見つめる。


「安心しました」


バックナー

「……ああ」


尚造の姿が少しずつ薄くなる。


「将軍」


「来年も」


「踊ってくださいね」


バックナーは小さく笑った。


「努力する」


尚造

「腰ですよ」


バックナー

「最後までそれか」


二人は笑った。


尚造は静かに夜空へ溶けていく。


バックナーは帽子を取り、

誰にも気付かれないよう、

静かに一礼した。


⸻


夜空には満月。


太鼓の余韻だけが、

静かに村へ残っていた。


戦争の音は、

もうどこにもなかった。


⸻


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。