【禁断】2030年 ホワイトハウス会議
※本作は、ここから第四部に入ります。
2030年。
ワシントンD.C.
楕円形のテーブルに、
資料は置かれていなかった。
「――対象の管理者が死亡しました」
無機質な声が告げる。
「仲村隆司」
「享年100」
「80年間、現地で封印を維持」
別の人物が言う。
「想定より長かったな」
「小林誠一も死亡しています」
「次の管理フェーズに移行しますか?」
沈黙。
やがて、低い声。
「いや」
「返却準備を始めろ」
その決定は、
初めてではなかった。
⸻
――1962年。
同じ部屋。
まだ新しい机。
同じ形の椅子。
そして、今よりも若い声。
「……返却を検討すべきです」
「不可能だ」
即座に否定される。
「これは、国家の根幹に関わる情報だ」
「だが、このままでは――」
言葉が途切れる。
空気が、重い。
やがて、一人が口を開いた。
「……現地の管理者は?」
「比嘉隆司。接触可能です」
数日後。
沖縄。
海風の中、男は立っていた。
「――返却したい」
その言葉に、
隆司は一瞬も迷わなかった。
「あれは、お前らが持ってろ」
静かな声だった。
だが、誰も反論できなかった。
「……理由を聞いても?」
隆司は、わずかに目を細める。
「分からんのなら、触らん方がいい」
それだけだった。
交渉は、終わった。
そして――
“封印”が決まった。
⸻
――2030年。
現在。
「……100年だ」
先ほどの男が言う。
「人類は、見る覚悟を持った」
誰も反論しなかった。
それは、
かつて拒まれた決断。
そして、
今、ようやく許された決断だった。
窓の外では、
穏やかな空が広がっていた。
⸻
(つづく)




