冥府の女王
昨日更新出来なくてすみません。
その代わり少し長くなってます。
「っっ」
暗闇の中にわずかな光を感じ目を開けると、いつの間にか俺は神殿の様な、不思議な空気が漂う場所に立っていた。
「…ここどこ?」
シンと静まりかえっている空間におれの声が響く。
数秒呆けてから先程起こった事故を思い出し、あわてて自分の体を確認する。
「…傷が消えてる」
Yシャツやズボンにベッタリついていた筈の自分の血が一滴残らず消えていて、どこも痛い処がなかった。
その事に戸惑っているといきなり壁や床が光だし、その眩しさに思わず目を瞑る。
「…っっ!?」
光が収まり恐る恐る目を開けると、また場所がかわっていた。
白い。…そうとしか表現出来ない場所だった。
上下左右、全て真っ白で、自分が今どこを向いているのかすらわからなかった。
《こんにちは。愛しき人の子よ》
後ろからいきなり声がして、おれはあわてて振り返り息を呑んだ。
そこに長くて美しい髪をなびかせた美女が立っていたからだ。
「!?…えっと、こんにちは」
おれが恐る恐るそう返すと、美女はその顔に笑みを浮かべた。
《フフフ。そんなに緊張しなくても良いですよ?人の子よ》
「はぁ…あの、貴女はいったい?」
《あぁ、ごめんなさい。挨拶がまだだったわね。…私は プロセルピナ 。
貴女達からすると ペルセフォネ と言った方がわかるかしら》
「 ペルセフォネって、 冥府の女王と言われるあの!?」
《そうですよ。あぁそれとここは冥府にある私の部屋なんですよ》
「えぇっ!?…あの、何でそんなところにお…私なんかが居るんですか」
ずっと気になっていたことを聞くと、彼女は笑みを深めた。
《それはね。実はわたくし、貴女の勇姿に感動したんですの》
「勇姿ですか」
《そう。女性をかばって自らが犠牲になるその凛々しさ。素晴らしかったわ!》
「えっと、当たり前のことをしたまでかと」
《それを普通の人は出来ないのよ 。でもそんな風に思っているところも素敵ね!!》
「はぁ」
プロセルピナ様(以下゛女神様゛と呼ばせて貰おう)の勢いに飲まれ気の抜けた返事をしていると、女神様は何度も頷いてから悲しそうな顔をした。
《本当はここで貴女の話を色々聞きたい処なんだけど、夫がうるさくってねぇ》
「夫ってハデス様ですか?」
《そうそう。あの人嫉妬深くってもうっ》
「ハハハ」
そんな風に言えるのはきっと貴女だけですよ…
思わず苦笑していると、
女神様は急に真面目な顔をした。
《私はね、ただ貴女に幸せになって欲いの。でもわたくしに出来ることは貴女を゛転生゛させることだけ》
「転生ですか…?」
もみじが読んでいた小説によく出てきた言葉だな
と、おれはまるで他人のことの様に思った。
《そう。地球とは全く違った世界に、だけどね》
「え?地球に転生させてくれないんですか」
《えぇ、ごめんなさい。前世と同じ世界に転生させることはタブーなの》
「そうなんですか…あの、女神様」
《やめてよ!゛女神様゛なんて距離のある呼び方しないで?》
この人(正しくは神)面倒くさいな
と思ってしまったことは彼女には内緒だ。
「…ではなんとお呼びすれば?」
《そうねぇ。わたくし冥界に来る前はコレーと呼ばれていたから、コレーと呼んで下さらない?》
「わかりました。…で、本題なんですが。記憶を…゛海゛の記憶を残したまま転生させて欲しいんです」
《なぜですか?》
「地球に残してきた家族や友人のことを、このまま忘れてしまってはいけない気がして…」
《フフフ、良いでしょう。その願い、叶えましょう》
「あっありがとうございます!!」
《あぁそうそう。貴女にプレゼントがあるからこちらに》
「?」
女神様改めコレー様に言われた通り近づくと、両手を差し出すように言われた。
《『冥府の女王プロセルピナの名の元に、この者に加護を与える』》
その言葉と共にコレー様はまずおれの額に一回、続けて差し出していた両手の甲に、それぞれ一回づつキスをした。
「あっ!?」
するとキスされた所が淡く光り、それぞれ違う紋様が浮かび上がった。
「これは?」
おれは自分の両手を見つめながらコレー様に聞いた。
《それは私とのパスを繋ぐ加護です。私に会いたくなったら両手を合わせて私の名を呼んでください。そうすれば貴女の魂はまたここに来ることが出来るでしょう。…ただしここに来ている間、貴女の体は仮死状態となるので来るときは一人の時にして下さいね?》
おれは、顔を上げてコレー様の目を見つめながら深く頷いた。
《よろしい。では、幸せな人生を》
コレー様がそう言った途端視界が段々暗くなっていき、コレー様の姿が見えなくなった。
だがその時、一瞬目の端に白い火の玉の様な物が見えた気がしたが、すぐに完全に真っ暗になってしまったため、それが何かはわからなかった。
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海の姿が完全に消えたあと、わたくしは一つ重大なことを彼女に伝え忘れていたことに気づいた。
《あらやだ。わたくしとしたことが、゛男の子゛に転生させたことを伝え忘れていたわね》
次話から本編に入ります。




