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extra edition side 晶  作者: 宇部松清
12/20

♭12 章灯さんがおかしい (os-40~41)

 正月休みが終わり、章灯(しょうと)さんはまた夜中に家を出て行った。新年最初の『ホットニュース』はナントカという芸能人の入籍の話題だった。3度見てもその芸能人の名前は最後まで覚えられなかった。

 いつも通り、昼食の準備をしていると、マネージャーの白石(しろいし)さんから電話がかかってきた。

 どうやら、レコーディングの日程が早まったらしい。想定内だったので、特に驚きはしなかった。

 それよりも、今日出来たばかりの新曲が間に合うかどうかということを考えていた。まぁ、最悪、ミキシングとマスタリングの日を別に設けているから、その日に録ってもいい。

 

 早く渡したいなぁ。章灯さんはこれにどんな詞を書いてくれるだろうか。

 

 1時を少し過ぎた頃、ネットで注文していた『歌う! 応援団!』の全巻セットが届いた。

 漫画はあまり読まないが、記念すべき『ORANGE ROD』の初タイアップだ。長く続いているみたいだし、2期を見越して読んでみようと思う。

 たしか、章灯さんは、ヒロインの子が可愛いと言っていたっけ。

 ぱらりとページを開いてみる。随分と胸が大きい。何となく、自分の胸に触れてみる。自分とは雲泥の差だ。


 4時になり、今日は何を作ろうかと冷蔵庫を開け、食材をチェックする。

 豚肉とキャベツがある……。回鍋肉にしようか。それから、春雨サラダに、冷やしトマトと……。

 肉に下味をつけ、トマトを湯むきして冷蔵庫で冷やす。調味料を混ぜ、春雨を戻し……。

「ただいま」

 いつもより早い時間に章灯さんが帰ってきた。そう思ったので、その通り言うと、「今日は、じゃなくて、これからはずっと早ぇよ」という返事だ。

 何かおかしい。いつもの章灯さんじゃない。いつも「ただいま」の後は「夕飯、何?」とか「美味そうな匂いだなぁ」と言うので、まだ夕飯が出来ていないからかもしれない。

 

 6時過ぎ、いつものようにコガさんが夕飯を食べにやって来た。

 漫画を収納するための本棚を作り終えた後で、3人で食卓を囲んだ。年末は忙しくて章灯さんと夕飯を食べる機会が少なかったので、リビングのローテーブルには3人分は乗らないことをすっかり忘れていた。章灯さんが自分の部屋から折り畳みのテーブルを運んできて、やっと夕飯が始まる。


「必要なのは、炬燵じゃなくてもっと大きなテーブルかな……」


 章灯さんがぽつりとつぶやき、コガさんがそれに返す。今日は章灯さんが珍しく早くて3人分だからだろう、と。

 コガさんのその言葉で、章灯さんは箸を置き、部屋へ行ってしまった。

 何があったんだよ、と聞かれても自分にだってわからない。帰ってきた時はもっとやさぐれていたというか、荒れていたというか……。これからはずっと早いと言っていたと伝えると、コガさんは仕事を減らされたんじゃないか、と言ってきた。そして、章灯さんにおにぎりを握るよう指示すると、あっという間に自分の分を平らげ、帰ってしまった。


 指示通りにおにぎりを握り、温かいお茶も添えて章灯さんの部屋のドアをノックした。


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