序章 のんびりしたいんじゃが
平和な前世で技術者としての生を全うした75歳のジジイ。
あとは、天国でのんびり過ごすハズ・・・・。
とは問屋が卸してはくれなかった。
創造神の持つ力をもらい受けて、いざ!異世界へ。
魔法の世界で、前世の様な生活水準を築き上げられるのか?
見かけは可愛い男の子、中身はアレな75歳。次の人生で何しようーかのぉ・・・。
ワシは神野 隆、享年75歳。典型的な後期高齢者じゃった。75年っちゅー長い年月、色んな経験をしてきた。そして上手くはないが経験を伝えてきたつもりじゃったよ。
嫁さんに先立たれてからの、最後の3年くらいは寂しかったのぉ。一気に老け込んでしもうて、今から思っても情けない姿じゃったわい。気力、体力、精力も尽き果てて、最期は子供や孫達に見守られて、現世から旅立った。そこでワシの人生は完結。
しとった筈なんじゃが・・・?
〜ー天国の玄関先ー〜
白く輝く大きな門には「天国」と記されていた。
そこをくぐる人達は赤ん坊も居れば年寄りも居る。
みんな白い装束に身を包み、静々と門をくぐって行く。
私も長い事生きてきて、ようやくここまで辿り着いた。75年も生きてきた、色んな事があったが、もうどうでも良くなっている。まずはのんびり出来ると良いんだが・・・。
「お待ち下さい!」
門をくぐろうとして、ワシは呼び止められた。
声の主は、ほら、何じゃったか。あ、そうそう、ギリシャ神話だったかの?そこに出てくる神様みたいな感じだ。
「私の願いを叶えて下さいませんか」
はて?普通は凡人が神様に願いを叶えてくれ。っちゅー流れじゃないのかい?何を血迷ってこんな爺に神様みたいなのが声を掛けるんじゃ。
「私の導いている世界が危ないんです。どうか手助けを」
ほぉー、世界が危ない。か、そんなモン年寄りじゃのぉて、若者の方がええんじゃないか。ほら、あのー、そうそう!『勇者様』とか言うやつ。
「勇者みたいな、あんな脳筋じゃダメなんです」
あら、あんた。結構酷い事言うねぇ。勇者様だってあれあれ、魔王とかと戦っとるんじゃろ。そんな犠牲の塊みたいな人を捕まえて『脳筋』とはなぁ。そんなんじゃ誰も話に耳を貸さんぞ。
「お願いします、何でもしますから」
ん?今、なんつった。
何でもしますから?ほほぉ、こりゃ良い言質を頂きましたな。ああ、そうとなりゃまあ、話は聞かないこともない。ちょっと奥へ行こうじゃないか。
天国の門の行列から離れたワシは、神様(なのかどうかは判らんが)を引き連れ、行列からかなり離れたところへと向かう。ここまで来れば、他の誰にも聞かれまい。
神様にそこら辺に座るよう促し、ワシも座る事にする。ああ、一応、身体は無いんじゃが、気分的に立ちっぱなしは疲れるでのぉ。
「ありがとうございます。今まで百人近くの方に声を掛けましたが、皆、剣もほろろでして。あ、わたくし、皆様とは違う世界で創造神を務めております、ガイアと申します。以後、お見知りおきを」
可哀想だからと話を聞いてやろうと思ったら、まさかの創造神様たぁ、ワシもびっくりじゃ。本当なら高貴な神様なんじゃろうが、今まで断られ続けておったせいか、だいぶ見窄らしくなっておるの。下手すりゃワシの方が神様に見られるぞい。
「じつはですね、私の司る世界なんですが、いまいち発展性に欠けておりまして、今までも『天啓』みたいなかたちで指示を出してはいたんですが、誰も言う事聞いてくれなくて・・・。そんな時にですね、貴方様の話を聞きまして是非とも私の世界を助けて頂こうかと参った次第なんです」
その後も色々話をしてみたんじゃが、どうもその世界は魔法で何でもやっちゃって、肝心の技術が育って行かないのだとか。まあなぁ、何でも魔法の詠唱一つで片付くなら、だーれも技術なんて磨かないわい。天啓や神託で何とかしようにも言うこと聞かない。じゃあ「物理的」にやったろーじゃん!と思った様で。
アンタも十分、脳筋じゃぞ。
それでだ、今のワシのままで転生させてもすぐに死ぬ(当たり前じゃ、ワシゃ75歳の後期高齢者だぞい)ので、ある程度地位と力を持つ家庭の子供として転生する事になるようだ。
まあ、訳の判らん不審者状態よりは、いいトコの家庭の一員の方が遣りやすいだろうて。しかしまた赤ん坊からやり直すんかぁ。先は長そうじゃ。
まあある程度は納得したが、ワシにどこまで出来るんじゃろ?あ、悪い事思いついたぞい。さっきガイアは「何でもしますから」って言っておったの。それな、ワシの居た世界じゃ「フラグが立つ」っつーんじゃ。なら今から回収させて貰おうかの。
「話は分かった。ワシの75年の知識がどこまで通用するか。久々に難しい仕事じゃ」
「受けて下さるのですね、有り難き幸せ・・・」
ワシが話を受けて喜んでるトコを悪いが、さっきのフラグでも回収させて貰わんとな。
「さっき、こんな事を言っておったな。『何でもしますから』と」
「はい、それは勿論で御座います。我が創造神からの天啓や神託を理解してない輩の世界を弄って頂く訳ですから」
「じゃあ、創造神が出来る事全てが出来るように、ってのはどうじゃ?」
「私の能力、全部ですか?」
ワシにそう振られたガイア。一瞬『マジか?』って表情をしたのぉ。まあ、ちょっと無理かもしれんがの。交渉事するに当たっては最初にとんでもない要求をして、その後、現実的なレベルまで引き下げる。要求する側はここまで下げたんだぞ、と言う優位を。要求された側はここまで譲歩しましたと言う誠意を見せる。
生きてた頃もそう言う交渉ばっかりじゃったわ。無理な部品の納期を示されても、何とか交渉して自分たちの方も損をしない。相手も何とか間に合う。と言う安堵感。
ま、最後の方はそう言う交渉の仕方を知らん若造がのさばったせいか、交渉にすらならん事も多々あったがの。
さて、ガイアはどう出るかな?
「全部と言うのは無理な話です。私の能力には『生命を生み出す』と言うものもありますので。ですが、それさえご勘弁頂ければ、かなりの能力を貴方に付与致す事はやぶさかではございません」
やっぱり、命を作るっちゅーもんは簡単にやって貰っては困るんじゃろうな。ま、ワシもそんなご無体な事はしとぉーないわい。やっぱり命を作るなら、良い女子とウハウハする方が・・・。あ、いかんいかん。死んでもリビドーとやらは残っておるのか?
「いきなり渡せる能力全てを付与するのは、混乱するかと思います。ある程度を小出しにすると言うので構いませんでしょうか?」
まあ仕方ないだろう。いきなり赤ん坊が細かい金属加工とか、火魔法のドデカい奴ぶっ放せる方が恐ろしいでの。
「お主の気持ちは理解した。付与する能力じゃが、話しあいながら少しずつ頂くっちゅーので良いかの?」
「受けて下さるのですね!ああ、やっとこれで私も肩の荷が下りる・・・」
ガイアの表情が悲壮から安堵に変わってきた。その瞳には『ああ、神様・・・(つってもガイアの方が神様なんじゃが)』と言う風にうるうるしとる。辞めんかい、そんな風に見つめられると言質を取ったワシの方が居心地が悪い。
その後、ガイアと色々と話を煮詰めた結果、世界の知識(前世で言うWikipediaか、はたまたGoogleの検索エンジン)みたいなもんを使えるのと、四大魔法(火、水、土、風)と光、闇、無。これから派生するもの全ての魔法を使えるようになった。魔法ばかり使って技術を育てない世界をリノベーションするのになぜ魔法かって?
あのな、ワシが技術的に世界をリノベーションするのに、いちいち1からやっとったら、それこそ時間が幾らあっても足りんわ。加工技術でさえ危なっかしいらしいでの。そこは魔法でインチキさせて貰うんじゃよ。使えるもんは使った方が楽じゃ。
それとガイアとの繋がりじゃが、脳内に直接語りかけてくる事も出来るようになっとるそうじゃ。いつでもガイアと喋れるのなら少しは安心じゃわい。
ガイアとの話が終わった。お互いに立ち上がって身なりを整えるとガイアは改めて、
「私の願いをお聞き入れ頂き誠に有り難い。赤子からの人生やり直しですので多少の不便はあるかと思いますが、その辺はご容赦下さい」
と言って深々と頭を下げる。
神様に頭を下げられるなんて、むず痒いわ。
「じゃあ、ワシと言う混乱因子をその世界とやらに降ろしてくれるか?」
ガイアは『混乱因子』と言う単語に反応して苦笑いしとる。
「貴方が混乱因子であれは、私は神ではなく混沌の源になってしまいます」
そう言ってワシに向かって両手をかざす。白い光が発したかと思うと、ワシの意識はあっという間に光の中に飲み込まれていった・・・。
(ちなみに『混乱因子』と言う大きなフラグが立った事に、誰も気が付いていなかった)
とうとう、定番の転生もんに手ぇ出してしまいました。
とりあえずは、主人公が死ぬまで書いていければなぁ・・・。




