25 二つの雷
「ムスキル!!」
ゼノとアウレは倒れているムスキルに駆け寄る。
夜遅くになっても帰ってこないムスキルを心配し、魔力感知をして事態を把握したのだ。
ゼノが背負って、病院に急いで運んだ。
◇◇◇◇
日が明けた。
ムスキルは医者の魔法で一命を取り留めた。
しかし、まだ目は覚まさなかった。
「くそっ、油断していた。まさかムスキルが……」
ゼノは病院のベッドで眠っているムスキルを見つめながら、悔しそうに言った。
「誰がこんなことを……」
アウレも悲しい面持ちでムスキルを見つめる。
「分からない。だが調べる方法はある」
「どうやって?」
「駆けつけた時ムスキルの体に他人の魔力が残っていた」
「じゃあ――」
「うん。魔力感知で見つけられる」
「その必要はない」
ゼノとアウレ以外の声がした。
二人は入口の方へ振り向く。
そこには昨日ムスキルを倒した紫髪の女の子がいた。
「雷帝ゼノーリオ、死んでもらいます」
女の子の体から紫電が走る。
次の瞬間、病院の壁が壊れる。
飛び散る瓦礫から、紫電を纏った彼女と赤く染まる魔力を纏ったゼノが宙に飛び出てくる。
「ここじゃ周りに被害が出る」
「関係ない」
女の子は紫電の拳を振りかぶる。
ゼノは構わず彼女の体に手を触れた。
その瞬間二人の姿が消えた。
女の子は拳を振り抜いた。
しかしゼノはそこにいなかった。
彼女はゼノの瞬間移動で町の外の荒野に一人で飛ばされていた。
「どこ?」
彼女はゼノを探して周りを見渡す。
「ここだよ」
ゼノは彼女の後ろにいた。
「時間がないからね。手荒くいくよ」
ゼノの体を赤い雷が覆う。
「負けない。絶対倒す」
女の子とゼノ。
紫と赤の雷がぶつかり合う。
俺を倒すと言うだけあるな、と殴り合うなかでゼノは感心した。
彼女が雷纏の魔法を使いこなしていたからだ。
雷纏は文字通り雷を体に纏う魔法だ。
昔のゼノがよく使っていた魔法で、雷を纏うことにより、雷のように速く動くことができる。
しかし利点は速さだけではない。
雷纏は魔力で身体強化した筋肉によって動くわけではなく、雷の力で動く。
だから空中でも自由に動けるし、雷のように直角に曲がることもできる。
それを彼女も使いこなしていた。
さらに彼女は怪力だった。
黒い角は魔物のようで、全身に流れる魔力も魔物の気配を漂わせていて、魔物の力が彼女の力を強化していた。
違法改造されているなとゼノは推測する。
まさしくその通りで、彼女は改造手術と人体実験で魔物の力を手に入れていた。
その怪力と雷纏が合わさり、彼女は恐ろしく強かった。
だが長時間戦えるような代物じゃないな、とゼノは見抜く。
そして彼女のためにも早く決めないとな、と思ったゼノは攻撃の激しさを増す。
たしかに彼女は強いが、ゼノとは経験値が違う。
ゼノは雷纏を何年も使ってきたし、相手の攻撃を受け流す術も持っている。
だからゼノは彼女の攻撃をことごとく受け流し、次々と攻撃を加えた。
その結果女の子は吹っ飛び、地面に膝を着く。
「君の魔力を絶った。大人しく降伏してくれ」
ゼノは言う。
「まだ……負けてない」
女の子はフラフラと立ち上がる。
そして無理矢理魔力を引き出そうとする。
「やめた方がいい。体が壊れる」
「関係ない……私は、負けるわけには……いかない」
女の子は構わずに魔力を引き出そうとする。
「私は……お前を……勇者を……倒さないといけないんだ……!!」
女の子は必死に泣きそうな顔で言う。
なんだ!?様子がおかしい!?
ゼノは困惑する。
「アアアアアアッッ!!!」
女の子が叫ぶ。
無理矢理魔力を引き出そうとする反動で、体から血が吹き出す。
まずい!!
ゼノは雷速で動いて彼女の裏に回り、首を叩いて気絶させた。
子供が人体改造を自分でやるはずがない。
それに様子がおかしかった。
洗脳されているのかもしれない。
そう思ったゼノは倒れている女の子の頭に手をかざした。
そして魔法で彼女の記憶を覗いた。




