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18 ヴァンヘンの戦い

 ヴァンヘンが向かうと、すでに何体か魔物が町まで出てきていた。

 まだ兵士や冒険者の手で倒せているが、市民に被害が出るのも時間の問題だった。


「キルシュが抑えていたんじゃないのか!?」


「キルシュは死にました」


 近くにいた冒険者の男が言った。

 傷だらけで回復魔法を掛けてもらっているところだった。

 その冒険者にヴァンヘンは見覚えがあった。

 記憶ではA級冒険者だったはずだ。


 S級やA級が負けるほどの敵がいるのか……。


 ヴァンヘンは握る手に自然と力が入り、足早に前線に向かった。


 前線は凄惨な状況だった。

 兵士や冒険者は皆血だらけで、多くの者が倒れていた。

 魔物は通路の奥までいて、歩く隙間もないほどで、後ろから押されるように次から次へと襲ってくる。

 倒れた兵士や冒険者の屍は踏みつけにされて、バラバラになっていた。


 ヴァンヘンは雄叫びを上げて魔物に切りかかる。

 何体も倒していく。

 しかし魔物の体は全て鉱石でできている。

 岩の狼や猿や蛇。

 彼らの体は硬く、剣が効きにくい。

 普通の魔物よりも倒すのに手こずる。

 手こずれば次の魔物への対処に遅れる。

 怪我をする。

 怪我をすれば動きが鈍る。

 動きが鈍れば怪我をする。

 悪循環でどんどん傷が増えていく。


 今は石の魔物であることが忌まわしいな……。

 せめてキルシュが生きていれば……。


 ヴァンヘンは心の中で弱音を吐く。

 それでも、


「退くな! 踏み込め! 敵を倒せ!」


 ヴァンヘンは味方を鼓舞し、自分自身にも言い聞かす。


 キルシュが時間稼ぎをしてくれてなければ、今頃自分も死んでいただろう。

 キルシュが命をかけて多くの魔物を、強い魔物を倒してくれたから何とか耐えられているのだ。

 私も私の仕事を全うしろ! この国を!民を!守れ!


 ヴァンヘンは傷付いた体に鞭を打って剣を振るう。

 けれども魔物に打たれて噛みつかれて、傷は増え、刃はこぼれる。

 やがて剣は砕かれ、手から弾かれる。


 弟に渡すつもりだったんだがな。


 地に落ちる剣の残骸を見て思う。


 本来なら今頃、弟は騎士になっているはずだった。

 誕生日を祝っているはずだった。

 情けない兄ですまない。


 ヴァンヘンは謝る。


 私は弱い。

 お前が憧れるような素晴らしい騎士じゃない。

 それでもお前がまっすぐ憧れるから、その憧れを壊さないように、抜かされないように必死で鍛練してきた。


 ヴァンヘンは日々を思い出す。


 私は死ぬだろう。

 でも、せめて最後までお前が憧れた兄であろうと思う。

 私の命にかえて、この国は守る!

 お前が継ぐこの国を守ってみせる!


 雄叫びを上げ、ヴァンヘンは血だらけの拳で敵を殴る。

 満身創痍の体で敵を倒す。


 しかしいつかは限界がくる。

 拳は砕け、足は動かなくなる。

 そこに石の狼が飛びかかってきて押し倒される。

 今にも首を噛まれそうになる。

 絶体絶命のピンチ。

 その時だった。


 ドーン!!


 馬車が、いや人車?がヴァンヘンを飛び越して現れ、魔物を吹き飛ばした。

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