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にわにはにわにわとりが  作者: 高光晶
第四章 強いチームには大抵の場合補欠という切り札がいる

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92/197

第88羽

 フォルス達のチームに敗れてから二日が経った。


 結局あの後、決勝に進んだフォルス達『異邦人チーム』は危なげない試合展開で相手チームを圧倒し、見事優勝を果たす。


 さすがに決勝まで進んでくるだけあって相手チームも相当の手練(てだ)れがそろっていたようだが、人間かどうかも怪しいアヤというチートプレイヤーがいる以上、勝ちは揺るがなかったようだ。


 ふたをあけてみれば、大会前評判の高かった優勝ド本命チーム相手に試合時間二十分で殲滅(せんめつ)勝ちをしたアヤたち『異邦人チーム』の戦力を見せつけられただけ。その強さを評することすら馬鹿馬鹿しいほどであった。


 もちろん相手チームだって、実力のあるメンバーたちがそろっているのは(はた)から見てもよくわかった。観客席から見た感じ『明らかに世界の違いを感じる』ハイレベルな試合だったと言っておこう。


 いろんな偶然と運で準決勝まで勝ち進んだ俺たちとは、なんというか……、立っている場所が違うと言えば良いのだろうか。逆立ちしても勝てる気がしない。そんな試合だった。



 で、決勝の翌日である今日。上位入賞チームへの表彰式を兼ねた閉会セレモニーに出席した俺たちは、そのままチームメンバー全員で慰労会(いろうかい)という名の打ち上げパーティをするべく、近所の酒場へと繰り出してきたのだ。


 ちなみにこの世界では十五歳から飲酒が認められている。

 だが面白いのは一律飲酒が許可されるというのでは無く、酒の種類によって年齢制限があるという点だ。

 アルコール度や体に与える影響が魔法で分析され、十五歳で飲めるのはこの種類、十八歳で飲めるのはこの種類という風にランク付けされている。


 その昔、日本人っぽい名前の官僚が『飲酒は一律二十歳から』という提案をしたところ、「アホか」の一言で一蹴されたそうだ。

 やはりアルコールに弱い体質の日本人を基準に考えてはいけないんだろうな。


 ましてや解毒魔法でアルコールを抜くことが可能なこの世界では、急性アルコール中毒で死ぬ人間はほとんどいない。アルコール摂取に対して寛容(かんよう)になるのも自然なことなのだろう。


 幸いなことに俺はほどほど飲める体質だ。ビールなら中ジョッキ五杯、日本酒なら熱燗(あつかん)で三(ごう)程度は平気だし、多分最終的にその倍はいけると思う。


 もちろんお酒自体も好きだ。だが、それ以上にみんなで和気あいあいと飲むのが好きでもある。


 酒の場というのは面白い。大人しくて口下手な人間が妙に饒舌(じょうぜつ)となったり、普段は言わないような本音を口にしたり、陽気な人間がさらに輪をかけて笑いを振りまいたりと、予想がつかない。


 だから大人数で馬鹿騒ぎするのが嫌いというわけじゃあ無い。むしろ好ましいくらいだ。


 だが、何事にも程度というか、限度ってものがあるだろう?



 正直に言おう。


 もはや俺の手には負えない。


 俺は手に持ったおちょこを傾け、チビチビとなめるように熱燗を口に含みながらあたりを見回してため息をつく。


「どう収拾つけるんだよ、これ……」

「いやあ、すごい光景だね」


 俺の正面に座ったイケメンチートが他人事のように言い放つ。


「誰のせいだと思ってんだ?」

「え? 誰のせいって……、お酒は飲むのも()まれるのも自己責任じゃないか」


 整った形の口から、正論が放たれる。


「確かにそうだけど、もとはと言えばお前が解毒魔法使えるなんて言い出すから……」


 最初はみんな大人しく飲んでいたのだ。もちろんニナやエンジのように騒がしいメンバーもいるし、そもそも場所が場所だ。大人しくといっても『酒場で飲むにしては大人しく』という程度である。


 それが一変したのは、俺の前でニコニコしながらジョッキでビールを飲んでいるリアルチート男――その名もフォルス――が現れてからである。


 フォルスは異邦人チームのメンバーを引き連れて店に入ってくると、偶然その場で打ち上げをしていた俺たち向けて「せっかくだから一緒に飲まないか?」と切り出した。


 最初は自分達が負けた相手ということで微妙な雰囲気が流れたが、もともと店を借り切っているわけでも無い。そのため断る権利があるわけでもないし、何よりその後にフォルスが提案した内容がメンバーたちの心をわしづかみにした。


 フォルス達は優勝賞金がかなりもらえたからと、この場の飲食代を全て自分達が持つと口にしたのだ。


 まず俺たち以外の一般客が歓声を上げ、大歓迎の意を表明する。

 さらにはフォルス自身が解毒魔法を使えることを明かし、いざとなれば無償で解毒処置を行うと宣言したのが決定打となった。


 我がチームにも少数存在するお調子者を中心にして、賛同の声があがりはじめる。そうなると残りのメンバーだってヘソを曲げるわけにもいかず、仕方なく合流を承諾せざるを得ない。


 こうして酒代、食事代、そして二日酔いや急性アルコール中毒の恐れから解放された酔っぱらいは非常に厄介だという見本市が、歓楽街のとある酒場にて繰り広げられることとなった。


 店中の酒という酒がふるまわれ、食料庫の在庫を空にする勢いで料理が運び込まれる。

 またたくまに店内は三百六十度ぐるりとカオスな世界に包まれ、今に至るというわけだ。



「おーい! こっちビール追加ねー!」

「あっ! しまった!」

「にっししし! そうかそうか、そんなにニナのヌルリと脱いだところが見たいと申すのか!」

美味(うま)っ! このソース、神っす!」

「おーい、嬢ちゃんにはまだ酒は早いだろ」

「はい、よろこんでー!」

「何やってんだよ! あーあ! びしょ濡れじゃ無いか!」

「うめえな! これ!」

「このフライ、全然美味いっす!」

「失礼な! 私はもう大人です!」

「飲み過ぎですよ!?」

「誰もそんな事言ってないでしょ!?」

「あ、やっぱもう一杯追加してー!」

「すみませーん! おてふきくださーい!」

「料理の追加まだー!?」

「だがしかし! 何かを得ようとするなら、そのぶん何かを手放さなければならないのだよ! パーッとね! パーッと! もしくはガバーッっと! わかりるぅ!?」

「神酒っすね!」

「今お持ちしますので、少々お待ちを!」

「酔ってまひぇん! 酔ってなんてなひんでひゅからぁ!」

「全然わかりませんし、わかりたくもありません!」

「こっちは神肉っす!」

「子供はみーんなそう言うんだよ」

「遅いよ! もう食い物が全然無いんだから急いで!」

「人の手は……、たったふたつの物しかつかめない……なんて悲しいことでしょう……、にっしっし」

「あ! お前それ俺のワインだぞ!」

「なんという神皿!?」

「ちょ! 俺のマントで拭くなよ!」

「誰が子供ですか!」

「あっちのテーブルから分けてもらったら?」

「ニナ先輩! それ、手をニギニギさせながら笑って言うセリフじゃありません!」

「本日三十五回目の……かんぱーい!」

「まあまあ。そうツンツンするなよ。ほら、プリン食うか?」

「ということは! ニナをスルリと脱がせたかったらまず君たちが率先してバーンと脱ぐべきなのだぁ!」

「いや、完全に酔ってますよね!?」

「こ、これは神コロッケ!」

「……いただきます」

「ケチくせえ事言うなよ! また注文すればいいだろ!」

「あいつらのテーブル、ポテトしか置いてねえんだよ」

「ケーキもあるぞ?」

「三十八回目だっての!」

「意味がわかりません! 脱がせたくも無いし、脱ぎたくも無いですから!」

「こっちのスープもマジで神っすよ!」

「……いただきますので、そこに置いといてください」

「南無三!」

「どこがどう酔ってるんでひゅか!?」

「ナムさんって誰ですか! いやあ! やめてください! 脱がさないでー!」

「ぷはー! やっぱ酔い覚ましに飲む水は神っすね!」

「良い食べっぷりだな、嬢ちゃん。ほれ、俺の分もやるよ」

「いいぞー! もっとやれー!」

「じゃあ、間をとって三十七回目のかんぱーい!」

「……ありがとうございます。遠慮なくいただきます」

「ちょ! こっちまで脱がさないくださいよ!」

「ろれつ回ってないじゃないですか」

「神唐揚げ追加してもいいっすか!?」

「なんか娘の小さい頃を思い出すなあ。あの頃は懐いてくれていたんだけどなあ」

「俺のコップ誰か知らないかあ!?」

「う……、気持ち悪い……、トイレどこ?」

「クレスさん助けてえええ! ニナ先輩が! ニナ先輩があああ!」

「そんなもんだよ、娘ってのは。まあ飲め飲め」

「ううう……、食い過ぎて腹痛が痛いっす」

「間になってねえよ!」

「おーい! こっちの嬢ちゃんにフルーツクレープ持ってきてくれやー!」

「ちょっと! 姉ちゃん何してんのっ!?」

「ざんねーん! ろれひゅがまわらにゃいのはー、いちゅものことでーふ!」

「え? だ、大丈夫か!? おい! ここで吐くなよ!」

「あと、おしるこもな!」

「んー? じゃあ三十六.五回目のかんぱーい?」

「いやーん、クレスがこわーい!」

「まだ食えるだろ? 嬢ちゃん」

「さっき片付けたよー」

「誰のせいだと思ってるのさ!?」

「……どんとこいです」

「洗面器! 洗面器をこちらの方にー!」

「いつも以上に回ってませんから!」

「小数点とかおかしいだろ! っていうかなぜ疑問形!?」

「おお! そうかそうか! おーい! どんどん持ってきてくれや!」



 エンジはここぞとばかり、片っ端から貪欲(どんよく)に飲み食いし、その都度歓喜の声をあげている。普段ろくな物食ってねえのか、あいつは? そのうち爪楊枝(つまようじ)にまで神とか付け出しそうだな。


 その横ではニナが後輩の男子生徒を脱がしにかかっていた。どうもあの妹は酒乱の気があるようで、酔うとなぜか人を脱がしたがるのだ。

 標的になるのが主に男なのでまだ良いが、女の子を脱がしにかかるようならさすがに止めないといけないだろう。その時は我が『愛のアイアンクロー』の出番である。


 ふと目を別の方向へ向ければ、ラーラがおっさん連中に囲まれてもくもくとスイーツを口にしている。差し出されるままに甘味を食べ続けるその様子は、まるで熊に養われているリスだ。

 いつものことだが、こういう場でラーラはおっさんに人気がある。(から)まれているんなら助け船を出すのもやぶさかではない。だが、どうみても周囲のおっさんたちが『(めい)っ子を可愛がるおじさんたち』にしか見えないので、おそらく危険はないだろう。


 ルイはとうの昔に満腹となって俺のとなりで寝こけている。幸せそうな寝顔しやがって、まったく。


 ティアは俺のとなりに座り、先ほどまで甲斐甲斐しくルイの世話をしていたが、ルイが眠りについた後はカクテルのグラスを静かに傾けていた。


 もともとこういった人が集まる騒がしい場の苦手なティアだ。そりゃあ、無理につきあう必要は無いのだが……。なんだかんだと言っても、「準決勝進出の功労者でもあるティアさんを抜きに騒ぐわけにもいかない」とニナやクレスに押し切られる形で参加している。

 まあ、こうやって喧騒(けんそう)から離れて飲み食いを楽しむ分には、それほど苦痛では無いのだろう。おいしい料理を楽しむ分には良いんじゃないだろうか。


「で? いつ町に戻ってきたんだ?」


 俺は気を取り直して、正面に座るイケメンチートへと訊ねる。


「大会の直前だよ。一時はどうなることかと思ったけど、なんとかエントリー締め切りギリギリで間に合って良かったよ」

「フィールズの大会へ出場するためにわざわざ帰ってきたってことか?」

「うん、そうだよ」

「アヤも?」

「もちろん。もともと大会に出ようって言い出したのはアヤさんだし」


 どういうこった?

 別に出るのは自由だけど、わざわざそのためだけに旅を中断してまで出場する価値がこの大会にあるのか?


 言っちゃ悪いが、今回の大会は全国規模の大きなイベントでも無ければ国別対抗の大会でも無い。そりゃこの町にとっては一大イベントだろうけど、これくらいの地方大会ならあちこちで開かれているはずだ。

 遠い場所から駆けつけてまで参加するほどのものだろうか?


 そう言うと、珍しくフォルスから歯切れの悪い言葉が返ってきた。


「ん? ああ、まあね。……そのへんの理由は僕の口からはちょっと、ね」

「アヤから口止めでもされているのか?」

「いや、アヤさんからは別にそういう指示は受けてないけど……」

「あら、何? 私の話?」


 煮え切らない態度のフォルスを不思議に思っていると、俺たちの会話に割って入る声があった。

 視線を向けた先に立っているのは、薄紅色のワンピースに身を包んだ黒髪の美人。


 まさに噂をすればなんとやら。

 日本で暮らしていた頃であれば、テレビ画面の向こう側でしかお目にかかれないような整った顔立ちを忘れるはずも無い。肩に掛かるか掛からないかという長さのつややかな髪は、新月の夜を思わせる神秘性があった。

 なるほど。自分が日本人の時には何とも思わなかったが、こうして第三者的視点で見てみると、欧米人が真っ黒な髪色にあこがれを抱くという話もわかる気がする。


「陰で女性の噂話するなんて、紳士のすることではないわよ?」

「いえいえ、魅力的な女性だからこそ、憩いの時間に男たちが届かぬ思いをため息と共にこぼすのですよ」


 冗談じみたアヤの言葉に、フォルスがすぐさま切り返す。


「まったく、そうやって何人の女の子を泣かせてきたのかしらね?」

「そんなに女ったらしに見えますか、僕?」

「無自覚だから(たち)が悪いんでしょうに。あなたもそう思うでしょ?」


 突然アヤが俺に話をふってきた。


「一応これでも友人なんでな。ノーコメント、ということにさせてくれ」

「『一応』はひどいよ、レビィ」

「そうだな。性格を見事に利用されて、手玉に取られるくらいには親しい友人だしな」


 俺のツッコミ(しょう)を逆手に取った見事な作戦だったよ、フォルス。


「う……、結構根に持つんだね、レビィ」

「それくらいにしてあげてよ。あれだって立派な作戦でしょう? 状況を冷静に把握していなかったのは他でも無いあなたなんだから」

「そりゃあ、わかってるよ……」


 アヤに指摘されるまでも無い。その点についてはもう反省済みだ。


 一瞬気まずい空気が流れたのを払拭(ふっしょく)しようと、フォルスが話題を変える。


「あ、そういえばアヤさん。ここに来たって事は、事務局での手続きは終わったんですか?」

「ええ、ようやくね。ホント、面倒だったわ」


 初めて聞く話に、つい疑問が口から出る。


「手続き? 何のだ?」

「賞品の受け取り手続きとか、大会記録に残すためのチームデータ提供とか、今後のメディア対応についての打ち合わせ日程とか、いろいろよ」


 うわぁ、優勝チームになるとそんなに色々手続きがあるのか。確かにメンドくせぇ。


 まあ、うちの場合はそういった雑事を一手に引き受けてくれる、生真面目な弟がいるからな。俺にはお(はち)も回ってこないだろう。

 というか優勝していない俺たちがそんな心配する必要はそもそも無い。


「優勝賞品って、……なんだっけ?」

「優勝賞金五百万円と優勝トロフィー、副賞として西側の山にある別荘と周辺一帯の所有権、というところね」


「別荘ねえ……。悪くは無いけど、世界中旅してまわるアヤには不要な代物じゃないのか?」

「そのへんは仲間に任せるつもりよ。確かに別荘自体は必要としていないもの。それより、ここ座って良いかしら? 私もうノドがカラカラなのよ」


「別にいちいち断らなくても良いだろ。好きなところに座れよ」

「じゃあ、失礼してっと。あ、おねえさん! 私、とりあえず生中!」


「はい、よろこんでー!」


 えーと……。

 いや、確かに好きなところに座れとは言ったけどさ。


「なんで俺のとなり?」


 他にも空いた席があるのに、よりによって俺のとなりに座る意味がよくわからん。

 フォルスのとなりとか、普通に空いているだろ?


「良いじゃない、別に。レバルト君とはもっと話がしてみたかったのよ」


 カラカラと笑いながらアヤが言う。


 あれ? 何か寒気がするぞ?


 体が冷えたかな?


 こういうときは熱燗で体を温め――って、冷たっ!

 なんだこれ!? 熱燗じゃなくて冷蔵庫でカッキンカキンに冷やした冷酒じゃねえのか!?

 さっきまで人肌くらいの温かさだったのに……。


「先生、その方とはお知り合いなんですか?」


 あ……、犯人()ーっけ。


 アヤと反対側に座っている銀髪少女が、体中から冷気をにじませながら問いかけてきたことで、ようやく原因が判明する。

 お前さあ、魔法も使わずに周辺温度を勝手に下げないでくれるか?


「あら、あなたは準決勝の時に……。ふーん、そうなの。あなたの言っていた『先生』って、レバルト君のことだったのね」

「だったらどうだというのですか?」

「ますます興味が湧いてきた、と言ったら?」


 寒っ! 冷気がさらに強くなってきた!

 そこのおねえさーん! 暖房つけてもらえませんかねえ!?

 もしくは防寒性の高い毛布を貸してくださーい!


「うふふっ、冗談よ。そういうのじゃないから安心して」


 あ、ちょっと冷気がおさまった。


「ただ何というか、懐かしい感じがするというか……、なんだかちょっと引っかかるのよね」


 そう言ってアヤは俺の顔をまじまじとのぞき込む。


「うーん……。やっぱりレバルト君、私とどこかで会ったこと無い?」

「いや、無いぞ。他人の空似(そらに)じゃないのか?」

「ううん。顔が、とかじゃ無いのよ。何て言ったら良いのか……、気配……、雰囲気……、魔力の波形……、そういうのじゃなくて……。あえて言うなら、そうね……、魂の色とでも言ったら良いのかしら?」


 全くわけがわからん。


「自分でも変な事言っているって自覚はあるんだけど。うまく説明できないのよねえ」


 ウェイトレスのお姉さんから受け取った生ビールを飲み干し、お代わりを注文した後でアヤが苦笑しながら言う。

 アヤ自身にわけがわからないことを、俺が理解できるわけも無い。


「まあ、この話はもうやめておくわ。思い出そうとして思い出せるものでもないでしょうし。何よりそこの可愛い女の子に、これ以上怖い目で睨まれたくないもの」


 そう言ってアヤはケラケラと笑った。


 だが俺を挟んで反対側にいるはずの人物が一体どんな表情をしているのか、振り向く勇気の無い俺は臆病者デス心ノ底カラゴメンナサイ。


 その後、俺はティアから放たれるプレッシャーをひしひしと後頭部に感じながら、精神的なダメージをガリガリと受けつつも、何とか宴を乗り切ることに成功した。


 おかしい。

 本当なら、美味いタダ飯と美味いタダ酒で存分に楽しむはずだったんだがなあ。

 どうして俺は宴会でダメージ食らって、こうまでヘロヘロになっているんだろうか?


 心底()せぬ。







◇◇◇(終)第四章 強いチームには大抵の場合補欠という切り札がいる ―――― 第五章へ続く




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