第10話ponziさん
国民的ドラマのヒロインとして、一躍大物女優の仲間入りを果たしたゆずき。その活躍は目覚ましく、連日テレビや雑誌に引っ張りだこだった。しかし、どんなに忙しくなっても、ゆずきが忘れなかった人たちがいた。それは、まだ何者でもなかった頃の彼女を、ひたむきに応援してくれた初期のファンたちだ。中でも、ひときわ印象に残っていたのは、自らを「作家、研究者、ミュージシャン」と名乗り、独特の絵文字「(´・ω・`)」を付けてコメントをくれるponziさんだった。
アイドル活動を始めたばかりの頃、ゆずきのライブ配信には、まだ多くのリスナーがいるわけではなかった。そんな中で、いつも決まった時間に現れ、温かいコメントをくれるponziさんの存在は、ゆずきにとって大きな支えだった。
「作家、研究者、ミュージシャンのponziです(´・ω・`)」
決まってそう挨拶してくるponziさんは、彼女の頑張りを労うだけでなく、時には芸能界の厳しさや、ファンとの向き合い方について、まるで経験豊富なプロのようにアドバイスをくれた。
「わたしの経験上、ファンレターやプレゼントが頻繁に届くタレントは事務所に大事にされる。それだけ固定ファンがついてると思われるんじゃろうの(´・ω・`)」
ponziさんの言葉は、時に飄々としていながらも、的を射ていた。ゆずきは、ファンレターやプレゼントの一つ一つを大切にし、ライブで直接会えるファンには、感謝の気持ちを伝えることを忘れないようにした。その積み重ねが、今の自分を支えているのだと、ゆずきは感じていた。
朝ドラの撮影がひと段落し、少し時間ができたある日、エイジアプロモーションのマネージャーから一本の電話があった。
「ゆずきさん、実は、ある方から楽曲提供の依頼が来ていまして…」
そう切り出された時、ゆずきは頭の片隅で、なんとなく嫌な予感がしていた。もしかして、あの曲だろうか。マネージャーから送られてきたデモ音源を再生すると、予想は的中した。流れてきたのは、以前ミニアルバムに収録された「キミにマジリプ」だった。そして、そのメールの末尾には、見慣れた文字が添えられていた。
「キミにマジリプ。作詞作曲ponziです。これをゆずきちゃんに楽曲提供したい。」
まさか、あのponziさんが、自分の楽曲を手掛けていたとは。ゆずきは驚きを隠せないまま、歌詞に目を通した。
「キミにマジリプ、キミにガチ恋
キミはクソリプ、いつもエンジェル」
SNS時代の恋を、ストレートかつコミカルに表現した歌詞に、ゆずきは思わず笑みがこぼれた。
「いつも気になってた気の利いたポスト
アイコンから伝わるヒューマニティー」
「いいねするだけで精一杯のわたし
GIFをageるたびに鳴る着信音」
まるで、SNSで推しを応援するファンの気持ちを代弁しているかのようだった。そして、自身のアイドル活動と重なる部分も多く、ゆずきは親近感を覚えた。
「キミに縦リプ、キミのガチファン
推しはキミだけ、恋は盲目」
「スマホから伝わる本物の恋
SNS時代のフィロソフィー」
確かに、SNSを通じて広がる新しい形の「恋」や「推し」の文化を的確に捉えている。アイドルとして、たくさんのファンに支えられてきたゆずきだからこそ、この歌詞に込められた想いが痛いほど理解できた。
「引用リポストされるだけでもう
リア友相手にイキってしまうわ」
この一節には、思わず吹き出してしまった。身近な共感を誘う、人間味あふれる表現。これは、まさにゆずきがファンと築き上げてきた関係性を象徴するような楽曲だった。
ゆずきはすぐにマネージャーに連絡を取り、ponziさんからの楽曲提供を快諾した。そして、この曲を自身の新たなシングルとしてリリースすることを決めた。
新曲「キミにマジリプ」のレコーディングは、和やかな雰囲気の中で行われた。歌詞に込められたponziさんの想いを歌に乗せるように、ゆずきは感情を込めて歌い上げた。完成した楽曲は、ゆずきのキュートな魅力と、SNS時代を生きるティーンの等身大の感情が見事に融合した、彼女の代表曲の一つとなった。
「キミにマジリプ」のリリースは、大きな話題を呼んだ。特に、楽曲の提供者が「自称、作家、研究者、ミュージシャンのponziさん」であることも注目され、謎のベールに包まれたponziさんの存在にも光が当たることになった。ゆずきとponziさん、この二人の特別な縁は、彼女のキャリアをさらに輝かせるものとなったのだ。
「
キミにマジリプ、キミにガチ恋
キミはクソリプ、いつもエンジェル
いつも気になってた気の利いたポスト
アイコンから伝わるヒューマニティー
いいねするだけで精一杯のわたし
GIFをageるたびに鳴る着信音
キミに縦リプ、キミのガチファン
推しはキミだけ、恋は盲目
スマホから伝わる本物の恋
SNS時代のフィロソフィー
引用リポストされるだけでもう
リア友相手にイキってしまうわ
キミにマジリプ、キミにガチ恋
キミはクソリプ、いつもエンジェル
キミに縦リプ、キミのガチファン
推しはキミだけ、恋は盲目
」




