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負けヒロインは助けたい! ~勝ちヒロインの王女が婚約破棄の危機!? 私が『魔導具』を駆使して救ってみせます!~  作者: 暁明音


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38~39  不穏な空気


    38



 酒場から出たエリカは、変身のために人目に付かない場所へ移動しつつ、ライールなる人物について考えた。

 もしバーラントと親しいのなら、アルメリアが知っているはずだ。そうでなくても、本邸や別邸にいる使用人たちに()けば、何か分かるに違いない。


「やっと、あいつの秘密が暴けるのかしら……」


 そう、つぶやいたときだった。

 前に見えていた馬車が、唐突(とうとつ)に走り出した。

 エリカ目掛けて走ってくる。

 彼女は間一髪(かんいっぱつ)、横へ飛び込んで回避した。

 立ち上がると、道の脇から男が三人ほど出てくる。

 来た道からは、男が二人出てくる。


 ――(はさ)()ちだ。


 エリカは壁に背を預ける。

 男の一人が、(にじ)り寄りながらナイフを出した。

 大声を出そうとしていたエリカが、口を閉じた。


 ――気配から分かる。声を出した瞬間、駆け寄ってきて()られる。


 こうなったらギリギリまで引き付けて、何かに姿を変えるしか……


「うッ?!」


 男の悲鳴がした。

 ナイフが地面に落ちて、甲高い音を立てる。

 悲鳴をあげた男は、左手で右手首をかばうように持っている。よく見ると、小さなナイフが刺さっていた。


 暗闇から、見覚えのある男がヌッと現れる。

 ――昼間に命を救ってくれた、あの男性だ。


「全員、現行犯で逮捕する」

「クソッ……! 散開ッ!」


 怪我をした男が叫ぶと、周囲の男たちが散り散りに走った。

 男性はそのままエリカの(そば)に来て、


「大丈夫か?」


 と尋ねる。


「あ、うん……」

「じゃあ、悪いけど一緒に来てもらおうか」

「えっ?」

「君には色々と()きたいことがある」


 彼の目から、危険な雰囲気(ふんいき)を感じた。

 エリカは歩いてくる男性と距離を取るように、引き下がっていく。


「このまま逃げても、また襲われるだけだぞ?」

「あなたに襲われるのと、似たようなものよ……!」

「襲うつもりはない、話がしたいだけだ。いいから大人しく付いて来い」と言って、鋭い視線を送る。「今度は死ぬぞ?」


 エリカは反転し、走って逃げた。

 男性もすぐさま走って追い掛ける。

 追いつかれるとマズイから、エリカはすぐさま路地裏へと入る。

 男性も後に続く。


 ――エリカの姿は無かった。


 さすがの男性も驚いた顔で、周囲を注意深く見渡す。

 どこにも人の姿はおろか、その気配すらもない。


「どういうことだ……」


 男性は(きつね)につままれた顔で言ったのち、(ため)息をつく。


「こうなったら、外堀を埋めて行くか……」


 そう言うと、(きびす)を返して立ち去っていった。



    39



 エリカを助けた男性が、アル・ファーム大使館の前まで来ていた。

 門前に立つ衛兵の一人に話しかけ、手帳と証明書を見せてから、中へ通してもらう。

 案内していた人間を途中で下がらせ、薄暗い通路の先にある扉をノックした。


『――誰だ?』

「ライールです。緊急の用件で参りました」

『そうか…… 入れ』


 彼は入室した。


「夜分遅くに、失礼致します」


 右手を胸元に付けながら、頭を下げつつ言った。

 彼の視線の先には、アルメリアの父――アル・ファーム国王のアルバートがいた。彼は、窓際に立っていて、


「予定では明日の訪問では無かったか?」


 と言って、アルバートが振り返る。


「そのつもりでしたが、少々、面倒なことになりそうでしたので…… 先に外堀を埋めて行こうかと思いまして」

「どういう意味だ?」


 アルバートが鋭く言った。しかしライールは、全く動じずに、


「単刀直入にお()きします。アルメリア王女の元・侍女…… エリカという女性についてです」

「エリカ……?」

「実は、彼女がバーラント様の周辺について独自に調査をしているようでして……」

「なんだと?」


「それでお訊きしたいのです。以前のお話ではエリカという侍女について、バルバラント地方からやって来られたとおっしゃっておりましたよね?」


「そうだ」

「本当ですか?」

「…………」


「おそれながら申し上げさせて頂きます。嘘の証言は、それだけ事件解決までに時間を要することになります。

 今後は、正直にお答えいただきたい。これはベリンガールという国家からの、正式な要請だと思っていただいて結構です」


 アルバートが目を閉じ、「分かった」と答えた。


「エリカについて、二、三ほど質問をさせていただきます」

「なんでも答えよう…… と、言いたいところだが、私はそれほど詳しくは無い」

「そんなことはありません。――彼女を雇い入れたのは、アルメリア王女の一存だけでは無かったはずです」

「そうだが……」

「彼女の素性くらいは知っておられるのでは?」

「――彼女は異世界から来た」


 ライールの眉が、ピクリと動く。


「彼女は魔導具を使うことができた。だから……」

「なるほど、あの腕輪のどちらかが……」

「その口ぶりからすると、すでに会っているようだな?」

「ええ。何度かは……」

「話によると、アルメリアの侍女として復帰したとかなんとか……」


「それは存じあげておりませんでした」

「それで…… 彼女をどうするのだ?」

「実は、そのことで少しご相談があるのです」

「なんだね?」

「彼女が異世界者で、魔導具を持っていたとは誤算でした。詳細は無理解ですが、魔法のような不思議な力があるとか…… だからこそ、魔導具の効能を教えていただきたいのです」


「効能、か……」

「はい。――彼女を泳がせておくのは、そろそろ危険ですので」



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