２５ 終局（守景）
２５ 終局（守景）
砦に立てこもる西軍諸将は次第に追い詰められていた。兵力も二万程しかなく、
満身創痍。士気も低い。更に東軍が忍び込ませた斥候により、兵糧庫に火を付けられた。
砦の周囲を味方の裏切りにより、十万にも膨れ上がった東軍が完全包囲していた。
守景は西軍の敗北を悟り、愕然と項垂れながらも新たな作戦を立案した。
「三成殿……申し訳ございません。砦に立てこもれば再起を図れるなどと。
我ながら甘い見通しでした。こうなれば打つ手は一つ。
私が一万の兵力を率い、捨て石となります。その隙に残りの一万の兵を諸将に割いて、
大阪城を目指してください。大阪城には総大将、毛利輝元様の軍勢が居ります。
そこで再起を図ってください。その為ならば、この命は惜しくはございません」
守景は涙を流して三成に作戦の全容を話した。守景は自分の命は惜しくはなかった。
三成や秀家に後を託して捨て石となるのに何の抵抗があろうか。
「守景、お主の心意気には感銘したが、その必要はない。
既に家康から書状が来た。降伏すれば、守景……お主の命は保証すると。
儂にとって、お主がどれだけ大切かを家康は知っておるな。それ以外の意図もあるが。
それは言うまい……お主が自分の秘密を知れば、衝撃を受けるであろう。
何れ、お主の秘密は暴かれることになる。その時にお主は豊臣と徳川……どちらに転ぶか」
三成は意味深な言葉を吐いて、守景を制し、諸将に降伏することを持ち掛け、
満身創痍の諸将はそれぞれ悔しさを押し殺して、降伏。秀家も顔を歪めて悔しさを滲ませている。
守景と諸将は降伏し、砦を東軍に明け渡した。西軍諸将は全員捕縛されたが、
守景だけは何故か丁重に扱われ、家康本人から手厚い歓迎を受けて守景は複雑であった
家康と三成、そして黒田官兵衛……様々な思惑が交差した一大決戦は幕を閉じた。
