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第二章。アンダーミッション

「最近、たまに苦しそうにしている時があったんです。お医者さんに行こうって言っても、ナギさんは大丈夫だって」

 トリナが不安げに話す。

 彼女の異変は、今に始まった事じゃないらしい。

「まぁ。魔族が医者にかかるのもおかしい話だけどね。モミ、何か分かった?」

 ベッドに横たわるナギさんに、モミさんが手をかざしている。

「残念ながら、これと言った原因は分かりませんね。しいて言えば、魔力が乱れている気がします」

「魔力……ねぇ――」

 思案顔のニーヤと目が合った。逸らすわけでもなく、じーっと見ている。それでなくとも眼力のある彼女だ。こんなに見つめられると逆に怖い。

「――よし。トリナ達、ちょっと下に行こうか」

 そう言うと、姉妹を連れて部屋を出て行った。

 かと思うと、すぐさま戻ってきてこう言った。

「ほら。さっさと出しなさい」


「は?」

「は? じゃないわよ。分かるでしょ。魔力が乱れてるんだから、それなら魔力の『源』を与えれば治るんじゃない。サキュバスだし――」

 ニーヤの提案は筋が通っている気もした。

 短絡的ではあるが、それが解決策である可能性は高い。

 昨夜の会話から推測すると、ナギさんが最後に精を摂取したのは結構前だろう。少なくとも、姉妹と暮らすようになってからはしていないはずだ。

 ならば、試してみる価値はあるだろう。

 残念ながら(幸運にも?)この場で精を出せるのは僕しか居ない。

――しかし。

「え。今……ここで……?」

「ここじゃなきゃ何処で出すのよ」

 公開しちゃうの!? 

 女の子に見られながら、横たわる無抵抗の女の子に!?

 どんな羞恥プレイだよ! そんなメンタルがあったら我慢してないよ! とっくに出してるよ!

「いや、流石に股間を晒すのは……。皆いるし……」

「いつも出してるじゃない。見飽きたわよ」

「いや! 鎧を解除した時だけだし! 不可抗力だし!」

 露出狂のように言うのをやめてくれ。あらぬ誤解が生まれる。

 ってか見てたのかよ! 飽きるほど見てたのかよ! 

「アタシ達がいなかったら、アンタなにするかわかんないでしょ? アンタにその気がなくても、セクシーソードの呪いがあるんだから」

 う……。それを言われると返す言葉が無い。

 確かに、間違って襲ってしまう可能性も否めないのだ。 

「でも……やっぱ無理だって。……わかるでしょ?」

 そう。僕のメンタルはそんなに強くない。

 僕のセクシーソードも、この状況でフルパワーになれるほど暴君でもない。

 結構シャイなのだ。シャイボーイなのだ。

「アンタいつも無駄に……ってるじゃない! 何でこんな時に役に立たないのよ」

「だから鎧を解除する時だけだって! その時は……刺激されるんだからしょうがないの!」

 人を万年発情期みたいな言い方しやがって!

 無駄にとか言うな! 無駄だけど!


「だったら――」

 意を決したように、頬を赤らめたニーヤが口を開く。

「し、刺激されればいいわけでしょ?」

 室内を緊張が支配した。

「に、ニーヤ……貴女……」

 モミさんも驚いている。そりゃあそうだ。まさかニーヤの口からそんな積極的な言葉が出るなんて誰が思っただろう。

「べ、別に意味なんかないわよ!? コイツがそうしないとダメって言うんだから! しょ、しょうがなくするだけよ!? 本当は見たくもないんだから!」

「そ、それなら私が代わりますよ! ケンセイさんだって、嫌々ではあまり気分が乗らないと思いますし!」

「べ、別に嫌々ってわけじゃないわよ! 仕方なくと嫌々は違うわ!」

 一体彼女達は何を争っているんだろう。

 そんな中、ペロ様が何か言いたそうにこちらを見ていたが、首を振っておいた。流石にそれは色々と問題だ。


「に、ニーヤ忘れたんですか! ケンセイさんの股間を蹴り飛ばした事! また悲劇が起きますよ!」

 モミさんの言葉に、忘れかけていた記憶が甦り、股間を押さえる。

 あれはいつの話だっただろうか、鎧の解除をニーヤに頼んで悲劇が起こった事がある。僕のピンポン玉がソフトボール大にまでランクアップしたのだ。

 潰れなかったのが幸いである。 

「あ、あの時はビックリしただけよ! 今回はちゃんとするから大丈夫!」

 どうしても譲らないらしい。

 何が彼女をここまで駆り立てるのか。多分、昨夜の出来事が糸を引いているんだろう。

「ケンセイさん……」

『最終判断は任せる』とばかりにモミさんが僕を見る。

 もしかしたら『選択は間違えるなよ』と言いたいのかもしれない。

 彼女は覚悟を決めた。

 だとしたら、僕も逃げるわけにはいかないだろう。

「ニーヤに――お願いする」

 英断であった。


「じゃ、じゃあいくわよ……」

 僕の獲物《元栓》が眼前にスタンバイされるよう、ナギさんの枕元に立ち膝をついた僕に、背後から彼女は言った。まだズボンは履いている。

「ニーヤ……本当に大丈夫だよな……?」

 僕は念を押すように問いかける。

 これは決して楽なミッションではない。ただ出せばいいってもんじゃない。タイミングよく、薬液を対象の口内に注ぎ込まなくてはならない。

 二人の意思疎通が重要なのは言わずもがなだが、最重要なのは操縦者の微調整。それが全てだと言ってもいい。少しでもタイミングがずれれば、手元が狂えばたちまち大惨事だ。

 僕は僕で、操作レバーを壊される危険性もある。安全装置セーフティーはついてない。

 可動可能角度レッドゾーンを超えたら――さようなら《折れる》だ。

「大丈夫。アタシに任せて」

 そう言って微笑む彼女に、もう不安はなかった。

 任せよう。彼女ならきっと大丈夫。

 僕は黙って頷いた。


 腰に手が当てられ、一気に解除される。

 ズボン《第一ロック》と共にパンツ《第二ロック》まで解除したのは、彼女の闘志の表れだろう。

 対象に接近。その距離まさに、目と鼻の先。

 大丈夫。ニーヤなら大丈夫だ。

「モクヒョウヲセンターニイレテスイッチモクヒョウヲセンターニイレテスイッチ……」

 大丈夫……だよな? いや、もう退路は無い!

 ニーヤの手が伸びる。覚悟を決めた。

――その時。

 パチリ。とナギさんの瞳があいた。

「え……? 何してるんですか……?」

――任務失敗ミッション・フェイルド。総員直ちに帰還せよ。

 繰り返す。総員直ちに帰還せよ――。

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