↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/144

魔女との再会。突然の別れ

――神秘の森――


 魔物の襲撃に警戒しながらも、僕達は地図を頼りにひたすら進む。

 すると突然、パッと目の前が明るくなった。

「ど、どうなってるのこれ?」

 つい何秒前とはまるで別世界。

 鳥がさえずり、木々は青々と生い茂る、温かい陽の差しこむ森に出た。 


「ここが神秘の森ですか。まさに名前の通りですね」

 間違いない、ここだ。この雰囲気を覚えている。

「ここであってるの?」

「うんうん。ここだよ! 間違いないよ!」

 彼女がいる。このどこかに。


「あっ、待ちなさいよ」

 たまらず走り出した。

 居ないかもしれないなんて頭になかった。

 彼女に会える――そう思うと、もう居ても立ってもいられない。

 ダメな僕を殺して、生まれ変わらせてくれた。

 僕に生きる勇気と、ニーヤ達に出会うきっかけをくれた。

 このワーワルツで、全ての始まりとなった彼女にやっと出逢えるんだ。


 森の中を走り回り、見覚えのある場所に出る。

 さらさらと流れる小川。

 そして、真っ黒に焼け焦げた木。

 間違いない。この場所だ、この場所で僕は彼女に――。


 その時だった。

 懐かしい匂いが、風に運ばれて僕の鼻をくすぐる。

 白銀の髪をたなびかせ、真っ黒なドレスを身に纏う。

 振り向いた僕が目にしたのは、あの日と同じ姿で佇む彼女の姿。

 彼女は僕に気付くと、少し驚いた顔をして。

「また会ったな。ケンセイ」

 そう言って、優しく微笑んだ。


 胸から熱い想いがこみ上げてくる。

 彼女が僕の名前を呼んだ。

 忘れていなかった。覚えててくれた。

 それがたまらなく嬉しくて、涙が頬を伝う。

 彼女の胸に、僕は思い切り飛び込んだ。


「おお、元気だな。何だ、泣いておるのか」

「会いたかった。ずっと会いたかった。貴女にお礼を言いたかったんだ」

「そうか、余に会いに来てくれたのか。偉いやつだな」

 そう言って、彼女は僕の頭を撫でた。

 あの日と同じ様に、その細い指で優しく。


「後ろの女はお前の仲間か?」

 彼女の言葉に振り向くと、そこにはニーヤ達が立っていた。

 当の僕はと言うと、ボロボロと涙を流し、彼女に抱きついている。

 一気に恥ずかしくなった。何で僕は抱きついたりしたんだろう。


「そうですよ。僕がここまで来れたのも彼女達のお陰なんです」

「ほう、面白い仲間を連れているな。男になったのか?」

 ニーヤ達をチラリと見て、妖しく言う。

「ざ、残念ながらそこまでは……」

「そうだろうな」

 彼女は、ふっと鼻で笑った。



 それから彼女に話をした。

 ニーヤ達と出逢って、今までずっと旅をして来た事。

 サキュバスに襲われた事や、ドラゴンの背中に乗った事も。

「そうか。それで、お前達はこれから何処へ行くのだ? 余に会いに来ただけではなかろう」

「うん。これから魔王を倒しに行こうと思うんだ」


「ほう、魔王を倒すとな」

「あ、アンタそれ――」 

 ニーヤの言葉でハッとした。

 いくら彼女でも、これは言ってはいけなかった。

 彼女は魔界の住人。

 もしかしたら魔王とも繋がっているかもしれない。


「あ、これは内緒で、とか出来ますか……?」

 周囲に緊張が走る。

 もしかしたら今この瞬間から敵になるかもしれない。

 そんな事はないと思いたいが、そうなってもおかしくはない状況だった。

 だけど、そんな心配はすぐになくなった。


「はは。よかろう、誰にも言わんよ。余も魔王が倒されるところを見てみたいものだ」

 彼女の微笑みに、張り詰めた緊張の糸がほぐれる。

 僕達は顔を見合わせて、胸を撫で下ろした。

 

「名前、教えてくれますか?」

 僕の言葉に、彼女は優しい笑みを浮かべて。

「余の名前はアミルだ」

 それだけ言うと、僕達に背を向けて歩き出した。

 僕には、それが別れの挨拶だと分かった。


「全部終わったら、もう一度ここに来ます!」

 彼女は立ち止まり振り返る。

「ああ、待っているよ」

 心臓が止まるかと思うほど、魅力的に笑い。

 そして森の奥へと消えていった。



「すごい綺麗な人でしたね。絶世の美女とはああ言う人の事を差すんでしょうね」

「本当ね。それにしてもアンタ、魔王を倒しに行くって言ったらダメじゃない」

「ごめん、つい。でも言わないって言ってたし、大丈夫だよ」

「そんなの分からないじゃない。今頃魔物が総動員でこっちに向かってるかもよ。ペロ、あの人嘘ついてなかった?」

 ペロ様が黙ってコクンと頷く。

「それじゃあ大丈夫ね、さぁ行きましょう」

 目的を果たした。後は魔王を倒すだけ。

 今までにない、軽い足取りで歩き始めた。


「ペロ様? どうしました?」

 モミさんの声に振り向くと、ペロ様が立ち止まっていた。

 駆け寄ると、ペロ様は深く俯いたまま。

「ペロどうしたの? 具合でも悪いの?」

 ニーヤの問いに、首を横に振る。

「大丈夫? もし良かったら僕がおぶって――」

 ゆっくりと僕を指差した、彼女が放った一言に皆が驚いた。


「一緒に、行かない」

 一緒に行かない? 僕と?

「な、何言ってるの? コイツはアタシ達と一緒に行くんだよ」

「そうですよペロ様、さっき決めたじゃないですか」

 俯いたまま黙り込む。

 

「ここで、別れる」

 何でそんな事を言うのか、僕には理解出来なかった。

 僕だけじゃない、他の二人もそれは同じだった。

「何言ってるんですかペロ様。一体どうしたんですか?」

「そうよ。何があったのよ」

 二人の言葉を遮るように、ペロ様が両手を前に突き出す。


 僕の身体が光に包まれ、ゆっくりと足が地面から離れた。

「ペロ様! 何をするんです!?」

 これは前にも見たことがある。

 初めてワーワルツに来た時、アミルにかけられたのと同じ魔法。

「ちょっと! ペロなにしてるのよ!」

 段々と身体が上がっていく。

 次の瞬間、僕が見たもの。

 それは顔を上げたペロ様の、涙でくしゃくしゃになった顔。

 そして、彼女は初めて僕の名前を呼ぶ。

「さよなら、ケンセイ」

 あっという間に、彼女の姿は見えなくなった。


 何でだよ。一緒に行くって約束したじゃないか。

 僕の頭を撫でてくれたじゃないか。

 どうして突然僕を仲間外れにするんだよ。

 何であんなに辛そうに泣いていたんだよ。

 分かんないよ、教えてくれよ。


「何でなんだよおおおおおおおおおおおお!」

 力の限り叫んだ。

 やり場のない悔しさと、怒り。そして悲しみ。

 どうにも出来ないもどかしさ。その全てを叫びに変えて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。