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盗賊襲来

 町の中央に行くと、三人の盗賊がいた。

 その内の一人が、嫌がる村の娘を捕まえ抱き寄せている。

 何て非道いやつだ、うらやまけしからん。

 剣を握った村長の息子が盗賊達の目の前に飛び出した。その背中は、恐怖に震えているのが分かる。


「クレド、言ったよなぁ。逃げたら村を襲うってよ」

「か、帰ってくれ! もう俺はお前らと関わるのを止めたんだ!」

「その剣は何だ? お前俺に剣を向けるって言うのか? ああん?」

「く、来るな! 俺は本気だぞ! これ以上村に迷惑をかけるなら、俺は刺し違えてもお前を殺す!」

「そうか、じゃあ死んでみるか?」

 盗賊が剣を握る。このままじゃ彼が危ない。

 その時、パチパチと手を叩く音がした。


「立派立派。いやー、いい心意気だよ。命を掛けて村を守る! 何ともカッコイイ話じゃない」

 ニーヤが手を叩きながら、盗賊達に近寄る。

「あ、あいつら! 親方! 仲間を殺したのはあいつらだぜ!」

 盗賊が僕達に指を指して言った。良く見ると、そいつは逃げたうちの一人。

「ほう、良い所で会ったな。仲間の仇、とらせてもらおうじゃねえか!」

 

 盗賊達が向かって来た。

 振り下ろされる剣を、セクシーソードで受け止めた瞬間、盗賊の腹に思いっきり蹴りを入れる。

 さっきやられたこのコンボ、中々使えるじゃないか。

 僕だってやられっぱなしじゃない。何となく戦い方のコツがつかめてきた。

 敵の動きを予想して、その先を考える。単純な話。シンプルで分かりやすい。

 蹴りを受けて、地面に転がった相手に詰め寄る。

――腕の一本は覚悟しやがれ。そう思った瞬間だった。


 顔面に砂が投げつけられ、視界が奪われる。

 目潰しかっ。くそっ、迂闊だった。まさかそんな行動にでるとは。

 痛みに耐え、目を開けると大きく振りかぶった盗賊の剣。

 ダメだ、剣じゃ受け切れない!

 とっさにかばった腕に剣がぶつかる。

 けたたましい金属音と共に感じる、激しい衝撃に膝が崩れ落ちた。

 骨が砕けるような痛みの中、飛び散る破片。砕けたのは盗賊の剣だった。

 呆気にとられた顔をする盗賊。体勢を立て直し、盗賊の右肩めがけて剣を突き立てる。

 筋肉の繊維が切れるような鈍い音と共に、盗賊の悲鳴が響き渡った。


「まだやるかい?」

 血が溢れ出す肩を押さえ、盗賊が大きく首を横に振る。

 辺りを見ると、他の二人も戦闘を終えていた。完全に活動を停止した、見るも無残な元盗賊が二体転がっている。

……ああ、やっぱり殺しちゃうんだ。うん、何となく分かってたけど。


「何、ソイツは殺さないの?」

「いや、いいんじゃないかな。許してやろうよ」

「アンタの獲物だから別にいいけど、そんな甘い考えじゃいつか痛い目見るよ」

 不満そうな顔をしてニーヤが言った。

「そうかもしれないけど、出来れば殺したくないんだ。生きれてばやり直すチャンスはあるんだから」

「ケンセイさんはお優しい方ですね」

 なるべくなら人を殺したくない、それは正直な気持ち。

 でも殺さなかったのは、聞きたい事があったからでもある。


「ちょっと聞きたいんだけど、ドラーシュの事は知ってるだろ? お前らも人を売ったりするのか?」

「あ、ああ。何度か売った事はある」

「誰に売って、売られた人達は何処に連れて行かれるんだ?」

「売るのは魔物だ。何処に行くのか、詳しい場所までは分からねぇ。『絶望岬』の何処かにあるってだけしか」

 絶望岬か、後でモミさんに聞いてみよう。


「あ、後もう一つ。シキラバの森で後をつけていたのはお前達か?」

「それは知らねぇ。俺達は今来たばっかりだ」

 盗賊じゃない? だったら一体誰だと言うんだ。

「そっか、分かった。もうこんな事止めて、これからは真面目に生きてくれよ。人に迷惑をかけて、挙句の果てには殺されちゃうなんて悲しすぎるだろ」

「わ、分かった。もう足を洗うよ」

「じゃあもう行っていいよ。頑張ってね」

 盗賊は肩を押さえながら歩き出すと、途中で振り返って言った。


「アンタ、名前は何て言うんだ?」

「僕? 僕は剣聖だよ」

「ケンセイか。アンタの事は一生忘れねぇ。もし次に会ったら、その時は必ず全うな人生を歩んでる姿を見せるぜ」 

 そう言った彼の顔は、もう悪人には見えなかった。 

 そう、誰だってやり直せるチャンスはある。

 僕がこの世界で頑張ってるように。




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