迫り来るモノ
周囲に鳥達の鳴き声が響き渡る頃。太陽が目覚め、空が青く染まる。
「あれ、何か二人とも目赤くない?」
テントから出てきた僕達を見て、ニーヤが言った。
「テントで寝るの初めてだったからあんまり寝れなくて」
「ああ、そういうのあるよね。でも何でモミまで寝不足なのよ」
「わ、私も最近宿屋ばかりでしたし」
不思議そうな顔をするニーヤに、適当な言い訳をして。僕達は顔を合わせ苦笑いをした。
「モミさん、モミさん」
テントを片付けてる最中。モミさんを呼び止める。
「どうしました?」
「鎧解除してもらえませんか? トイレ行きたくて」
「分かりました。じゃあ先に行って待ってて下さい」
トイレに行く、と他の二人に告げ、茂みの奥に入った。
しばらく待つと、モミさんが駆け足でやって来る。
「わざわざすいません」
「いいんですよ。じゃあいきますね」
彼女の温かく、優しい手触りが僕を刺激する。大自然の中、なんともすがすがしい気分。
「……相変わらず、元気ですね」
そう呟くとモミさんは走り出した。
相変わらずって言う事は……やっぱりいつも見られてたのか……。
彼女の後ろ姿を眺めながら、固まったセクシーソードを携え。
あまりの恥ずかしさに、身体もしばし固まっていた。
「今日は何処まで行くんですか?」
地図を広げ、行き先を確認する。
「多分今はこの辺りだと思いますね。次の町まではまだ結構ありますから、シキラバの森を抜けて、この途中の小さな村に寄って見ましょうか。宿があるか定かではありませんが」
「随分小さそうな村ね。ルカラ村、聞いたことないわ」
地図に描かれているその村は他の町と違い、建物の絵が小さく描かれている。
「私もこの村は良く分かりませんが、とりあえず寄るだけ寄ってみましょう」
「そうね。まぁ、小さなお店くらいはあるでしょ」
地図を畳み、ルカラ村を目指して、僕達は歩き出した。
――シキラバの森――
しばらく歩くと、先程までとは明らかに違う、背の高い木が鬱蒼と生い茂る森の中に入った。
「すごい大きな木ですね」
「これがシキラバの木ですよ」
天まで届くように伸びたシキラバの木。
それは日光を遮り、朝だと言うのに辺りは薄暗く、湿った空気が漂っている。
「シキラバの森には妖精が住むと言われているんですよ」
「へー。そうなんですか。確かに、何かいそうな雰囲気ではありますね」
所々に差し込む木漏れ日が、朝露をキラキラと輝かせ、神秘的な雰囲気をかもし出す。
本当に妖精が居てもおかしくない感じだ。
しばらく進むと、目の前に一際大きなシキラバの木が現れた。
他の木の三倍、いや五倍程の太さはあるだろうか。くりぬいて部屋でも作れそうな大きさだ。
「これはすごい。まるで神木だよ」
「ケンセイさんの世界にも神木はあるんですか?」
「うんうん。って事はワーワルツにもあるの?」
「ええ、『神島』という場所にあります。その神木はとても大きく、周囲を周るのに一時間もかかるとか」
「一時間もですか!?」
「そんなのあるわけないじゃない。誰かがちょっと大げさに言っただけでしょ」
「まぁ、そうでしょうね。そのうち確かめに行きましょうか」
一周するのに一時間か。荒唐無稽な話だけど、とんでもなく大きいのは間違いなさそうだ。
「そのまま周囲を気にせずに進んで、尾行されてる」
突然、険しい顔で放ったニーヤの一言に、背筋に緊張が走る。
つけられてる? 一体誰に?
「何人いますか?」
「三人ってとこかしら。今のところ襲ってくる気配はないけど、すぐ動けるようにしといた方いいわ」
ニーヤが腰の短剣に手を掛ける。静かな森の中とは裏腹に、僕の心臓は激しく鳴り響く。
いつ教われるか分からない不安。彼女達と一緒じゃなければ走り出してしまうだろう。
後ろを振り向きたい衝動を抑えつつ、僕達はそのまま歩き続けた。
「気配が消えたわね」
どれだけ歩いただろう。気を張りながら歩く時間はとても長く感じた。
ニーヤの一言に、ホッと胸を撫で下ろす。
「一体何だったんでしょうね」
「さぁね。もしかしたら昨日の盗賊の残党かな。あれだけやられてもう一度来るならたいしたものよね」
――どうか盗賊さん、命が大事なら逃げてください。
ニーヤの危ない笑みを見て、僕は盗賊の身を案じた。




