プロローグ
全15話です。
今回は私の妄想&夏を題材にしています。
お付き合いいただけますと幸いです。
今日も、あいつは立っている。
他のやつらは、もう退屈そうにしているというのに。
『まだ起きないのか』
『もう千年以上経ったぞ』
『本当に真面目だなぁ』
そんな他愛もないおしゃべりを、私はどこか微笑ましく聞いていた。
長い、長い時間だった。
季節は幾度となく巡り、
木々は育ち、朽ち、新たな命が芽吹く。
雨が降り、風が吹き、雪が積もる。
けれど、この場所だけは変わらない。
──いや、もう一つだけ、変わらないものがあった。
今日も、あいつは私の眠る場所を見守っている。
微動だにせず。
誰よりも真っ直ぐに。
誰よりも真面目に。
……律儀なやつだ。
お前は知らないんだな。
私はもう、とっくに死んでいる。
だから、目を覚ますことはない。
お前がどれだけ待っても。どれだけ長い時を過ごしても。
私は、お前の前に立つことはできない。
お前は私の家臣でもない。
友でもない。
ただ、儀礼としてここへ置かれただけの置物だ。
それなのに、お前は役目を疑うことなく果たし続けた。
千五百年もの間、ずっと。
私を守るためだけに。
……ありがとう。
お前たちがいてくれたから、私は孤独ではなかった。
死とは、もっと寂しいものだと思っていた。
けれど、違った。
誰かがそばにいてくれる、それだけで、人は安らかに眠れるものらしい。
もう、十分だ。
本当なら、お前も自由になっていい。
けれど、お前はきっと今日も待ち続けるのだろう。
私が目を覚ます、その日を信じて。
……本当に、不器用なやつだ。
だからこそ。
あいつのために、何かしてやりたい……。
そう思った、その時だった。
遠くで、土を掘る音がした。
──コン、と。
静寂を破る、小さな音。
それは千五百年ぶりに、この世界が動き始める音だった。




