# 第八話 ## 「未来から来た俺」
# 第八話
## 「未来から来た俺」
その夜。
停滞の王との戦いを終えた学園は静かだった。
生徒たちは眠りにつき、
校舎には月明かりだけが差し込んでいる。
修司は一人、屋上にいた。
風が心地いい。
だが心は落ち着かなかった。
自分のランク。
【A → S】
そして。
その先にある∞ランク。
考えれば考えるほど不安になる。
「本当にこれでいいのかな……」
その時だった。
カツ……
誰かの足音が聞こえた。
修司は振り返る。
そこにいたのは――
自分だった。
「え……?」
月明かりの中に立つ青年。
顔は修司そのもの。
だが少し大人びている。
鋭い瞳。
傷だらけの制服。
そして悲しそうな笑顔。
「久しぶりだな」
修司は固まった。
「誰……?」
青年は答える。
「未来のお前だ」
夜風が止まった。
修司の心臓が大きく鳴る。
「未来の……俺?」
青年は頷く。
「信じなくてもいい」
「……」
「でも時間がない」
その声には切迫感があった。
修司は直感する。
この人は嘘をついていない。
未来の修司は空を見上げた。
そして静かに言った。
「お前は∞ランクに到達する」
修司は息を呑む。
「本当に……?」
「間違いない」
未来の修司の目は暗かった。
全く嬉しそうではない。
むしろ。
後悔しているように見えた。
「でも」
「……」
「その先で全部失う」
修司の胸が締め付けられる。
「全部?」
未来の修司は拳を握る。
「結衣」
修司の顔色が変わる。
「結衣がどうなるんだ!」
未来の修司は目を閉じる。
「絵を描かなくなる」
「え……」
「世界一の画家になれる才能があった」
「……」
「でも夢を諦める」
修司は言葉を失う。
さらに。
「悠真」
「……」
「挑戦する心を失う」
「そんな……」
「源三さんは」
未来の修司の声が震えた。
「夢を叶える直前で倒れる」
修司の目が大きくなる。
「嘘だ……」
「俺もそう思った」
未来の修司は苦笑した。
「だから何度もやり直した」
「何度も?」
「未来を変えるためにな」
修司は理解できなかった。
だが。
未来の自分は本気だった。
何度も。
何度も。
仲間を救うために戦ってきたのだ。
それでも。
失敗した。
「なぜそんな未来になるんだ?」
修司は叫んだ。
未来の修司は答える。
「停滞の王じゃない」
「え?」
「本当の敵は別にいる」
修司の背筋が凍る。
停滞の王以上の敵。
そんな存在がいるのか。
未来の修司は低い声で言った。
「成長の神」
月明かりが揺れる。
その名を聞いた瞬間。
空気が変わった。
「神……?」
「∞ランクを作った存在だ」
未来の修司は続ける。
「人々に成長を与えた存在」
「……」
「だが同時に、人々から多くのものを奪った」
修司は黙る。
未来の修司の瞳には怒りがあった。
「失敗も」
「涙も」
「別れも」
「全部成長の糧にしてきた」
「……」
「つまり俺たちは試されているんだ」
修司は拳を握る。
そんな運命。
認めたくなかった。
その時だった。
未来の修司が一枚の写真を差し出した。
「これを見ろ」
修司は受け取る。
そこには――
たくさんの笑顔が写っていた。
結衣。
悠真。
源三。
学園長。
そして修司。
みんな笑っている。
幸せそうに。
だが。
写真の中央だけが破れていた。
「これ……」
未来の修司は苦しそうに笑う。
「俺だ」
修司は凍りつく。
「∞ランクに到達した後」
「……」
「みんなから忘れられた」
静寂。
修司は写真を握り締めた。
胸が痛い。
苦しい。
怖い。
未来の修司は近づく。
そして肩に手を置いた。
「修司」
「……」
「俺は失敗した」
「……」
「だからお前に託す」
修司は顔を上げる。
未来の自分の目は真っ直ぐだった。
「誰も忘れられない未来を作れ」
その瞬間。
未来の修司の体が光り始めた。
「待って!」
修司は叫ぶ。
「どうすればいい!?」
未来の修司は最後に笑った。
昔の修司と同じ笑顔で。
そして言った。
「答えはもう、お前の中にある」
光が弾ける。
未来の修司は消えた。
屋上には修司一人だけが残る。
しかし。
彼は知らなかった。
その会話を――
誰かが見ていたことを。
校舎の影。
そこに立つ黒い人影。
赤い瞳。
不気味な笑み。
「見つけたぞ」
闇の中で囁く。
「神に選ばれし挑戦者」
そして影は姿を消した。
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### 次回
# 第九話
## 「影の転校生」
無限成長学園に現れた謎の転校生。
優秀。
完璧。
誰からも好かれる少年。
しかし彼は修司にだけ告げる。
「お前はいずれ全てを失う」
その正体とは――。
そして始まる、
修司最大の試練。
無限成長学園、第九話!




