# 第一話 ## 「六十歳の新入生」
# 無限成長学園
## ~何歳からでも夢は叶う~
# 第一話
## 「六十歳の新入生」
春。
王都に大きな鐘の音が響いていた。
---
ゴーン。
---
ゴーン。
---
ゴーン。
---
その音を聞きながら、坂本修司は校門の前に立っていた。
---
六十歳。
---
異世界を救った英雄。
---
元・黒塔討伐隊隊長。
---
そして今は――
---
無限成長学園学園長。
---
「ついに開校か」
---
大きな校舎を見上げる。
---
白い石造りの建物。
---
広い運動場。
---
図書館。
---
訓練場。
---
王国中の職人たちが協力して建てた。
---
修司の夢。
---
何歳からでも学べる学校。
---
それが今日から始まる。
---
「緊張してる?」
---
隣にエルナが現れる。
---
二十八歳。
---
今では王国最高の魔導師だ。
---
「少しな」
---
修司が笑う。
---
「世界を救うより緊張する」
---
「それは盛りすぎです」
---
「本当だぞ」
---
二人が笑う。
---
その時だった。
---
校門の前に一人の老人が現れた。
---
杖をついている。
---
白髪。
---
深い皺。
---
年齢は六十代後半だろう。
---
老人は何度も入学案内を見ている。
---
そして。
---
校門を見ては立ち止まる。
---
また見ては立ち止まる。
---
明らかに様子がおかしい。
---
修司は近づいた。
---
「どうしました?」
---
老人が驚く。
---
「あっ」
---
「いや、その……」
---
視線を逸らす。
---
「やっぱり帰ろうかと思ってな」
---
修司は首を傾げた。
---
「なぜです?」
---
老人は苦笑した。
---
「恥ずかしいんだよ」
---
「?」
---
「こんな歳で学校なんて」
---
風が吹く。
---
老人は校舎を見上げる。
---
「若い頃は貧しくてな」
---
「勉強なんてできなかった」
---
「字もろくに読めない」
---
「計算も苦手だ」
---
拳を握る。
---
「でも本当は学びたかった」
---
静かな声だった。
---
何十年も胸の奥にしまってきた夢。
---
「だけど今さらだ」
---
「六十八歳だぞ?」
---
笑う。
---
寂しそうに。
---
「学校なんて若い奴が行く場所だ」
---
修司は黙って聞いていた。
---
老人は続ける。
---
「だから帰る」
---
「夢を見るには遅すぎる」
---
その言葉を聞いた瞬間。
---
修司は笑った。
---
優しく。
---
昔と変わらない笑顔で。
---
「それは違う」
---
老人が顔を上げる。
---
修司は言った。
---
「何かを始めるのに遅すぎることはない」
---
老人の目が揺れる。
---
「……」
---
「俺は五十歳から人生をやり直した」
---
「え?」
---
「失敗もした」
---
「笑われもした」
---
「でもな」
---
修司は校舎を見る。
---
青空の下に建つ学園。
---
仲間たちと作った夢。
---
「挑戦したから今がある」
---
老人の目から涙がこぼれた。
---
「でも……」
---
「でもじゃない」
---
修司は手を差し出した。
---
「入学しよう」
---
「一緒に」
---
老人は震える手でその手を握る。
---
何十年も諦めていた夢。
---
その夢が今。
---
動き出した。
---
その時。
---
ミーナの声が響いた。
---
「学園長ーーー!!」
---
全力疾走。
---
そして。
---
案の定。
---
転ぶ。
---
ドシャァァァァン!!
---
「痛ぁぁぁぁぁ!!」
---
「初日から何してるんだ」
---
「これは様式美だ!」
---
「違う」
---
生徒たちが笑う。
---
老人も笑う。
---
自然に。
---
何十年ぶりか分からないくらい。
---
心から。
---
笑った。
---
そして。
---
開校式が始まる。
---
修司は演台へ立つ。
---
何百人もの生徒。
---
十代。
---
二十代。
---
三十代。
---
四十代。
---
そして。
---
六十代。
---
七十代までいる。
---
修司は全員を見渡した。
---
そして言った。
---
「ようこそ」
---
静まり返る会場。
---
「無限成長学園へ」
---
笑顔になる。
---
「ここには年齢なんて関係ない」
---
「才能も関係ない」
---
「過去も関係ない」
---
拳を握る。
---
力強く。
---
「大事なのは一つだけだ」
---
生徒たちが見つめる。
---
修司は宣言した。
---
「挑戦したい気持ちを諦めないこと」
---
大きな拍手が響く。
---
春の風が吹く。
---
こうして。
---
世界で一番不思議な学校。
---
無限成長学園の物語が始まった。
---
## 次回予告
### 第二話
**「七十二歳の落第生」**
何度試験を受けても合格できない老人。
諦めかけた夢。
そして修司が語る「失敗の価値」とは――。
「失敗してもいい。挑戦をやめなければな」
無限成長学園、開講!




