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リヴェイル  作者: Siki_2645
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第四話 ~窓の外の景色~

馬車が揺れる。


規則正しい振動に身を任せながら、

リアは窓の外を見つめていた。


流れていく景色。


広い草原。


森。


小川。


どこまでも続く青空。


本で見たことはあった。


けれど。


実際に見るのは初めてだった。


「……」


じっと外を見る。


すると向かいに座るアルセリオが口を開いた。


「リア」


「何でしょう」


「さっきからずっと外見てますよね」


「見ていません」


即答だった。


「見てます」


「見ていません」


「いや絶対見てます」


リアは数秒黙る。


そして視線を逸らした。


「……少しだけです」


「ほら」


アルセリオは思わず笑う。


リアはじとりと彼を見る。


もっとも。


表情はほとんど変わらない。


「笑いましたね」


「気のせいです」


「今、確実に」


「気のせいです」


「そういうことにしておきます」


リアは再び窓の外へ目を向けた。


その時。


遠くに小さな村が見えた。


木造の家々。


石畳の道。


煙突から上る白い煙。


「……あれが」


「ええ」


アルセリオが頷く。


「リヴェイルです」


リアは小さく息を呑んだ。


本の中でしか知らなかった世界。


その場所が。


今、目の前にある。


◇◇◇


馬車が村へ入る。


その瞬間。


「エドだー!」


子供たちが駆け出してきた。


「おかえりー!」


「今回は何持ってきた!?」


「まだ降りてもないんだけど!?」


アルセリオが苦笑する。


子供たちは容赦なく馬車を囲んだ。


リアは目を瞬かせた。


勇者である彼に。


こんな風に接する人間を初めて見た。


誰も跪かない。


誰も怯えない。


誰も敬語を使わない。


ただ当たり前のように笑っている。


「……すごいですね」


「何がです?」


「懐かれています」


「いや、あいつら荷物目当てですよ」


「そうなんですか」


「そうなんです」


真顔で納得するリア。


アルセリオは肩を震わせた。


その後も。


村を歩けば誰かが声を掛けてくる。


「エド、久しぶり!」


「薬持ってきたかー?」


「今度またチェスしような!」


王都ではありえない光景だった。


リアは静かに周囲を見る。


みんな笑っている。


自然に。


当たり前のように。


「……楽しそうですね」


ぽつりと呟く。


アルセリオは少しだけ目を細めた。


「そうですね」


◇◇◇


昼頃。


二人はパン屋の前にいた。


焼き立ての香りが漂う。


リアは足を止めた。


「どうしました?」


「……いい匂いです」


「パン屋ですからね」


「本当にこんな匂いがするんですね」


真剣だった。


アルセリオは思わず笑う。


店主のおばちゃんも笑った。


「可愛い子だねぇ」


リアが固まる。


たぶん。


生まれて初めて。


王女としてではなく。


ただの女の子として言われた。


「焼き立てだから食べてきな!」


「え」


パンが渡される。


リアは戸惑った。


「お代は」


「サービスだよ!」


意味が分からない。


王城では何かを貰う時には必ず理由があった。


見返りがあった。


けれど。


目の前のおばちゃんは。


ただ笑っているだけだった。


「……ありがとうございます」


小さく頭を下げる。


その仕草が綺麗すぎて。


アルセリオは慌てて目を逸らした。


◇◇◇


夕方。


村の広場。


リアはベンチに座りながら、

パンを食べていた。


少しだけ冷めている。


けれど。


とても美味しかった。


「どうですか」


隣に座ったアルセリオが聞く。


リアは少し考えた。


それから。


「好きです」


短く答える。


「パンが?」


「村が」


アルセリオは一瞬目を見開いた。


リアは夕暮れに染まる村を見つめる。


笑い声。


夕飯の支度の匂い。


走り回る子供たち。


どれも初めて見るものだった。


「……また来たいです」


その言葉は。


リア自身も驚くほど自然に口から出ていた。


その時だった。


「おーい」


聞き覚えのある気だるげな声がした。


アルセリオが振り返る。


そこには。


黒髪の青年が立っていた。


眠そうな赤い目。


やる気のなさそうな表情。


「ルカ」


「また来たのか」


青年は欠伸をする。


そして。


隣に座るリアへ視線を向けた。


「誰?」

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