唐揚げを題材に主人公とヒロインの話を好きに書いて ✕3
唐揚げを題材に主人公とヒロインの話を好きに書いて
この設定を3回目同じ指示をしたら作る話の違いがどうなるのか、気になったので指示しました。久し振りに実験ぽい感じです。
並行世界の話。
『からあげ、それは愛の味』バージョン1
「……おい、まこちゃん、ちょっと待て。それ、全部俺の弁当だろ」
「うん、そうだよ」
「うん、じゃねぇ! なんで勝手に食べてんの!?」
昼休みの教室に響く、峻の悲痛な叫び。
机の上には、彼が朝早く起きて作った自作弁当。その中身のメイン、黄金色に輝く唐揚げが――すでに、半分以上消えていた。
「だって、峻の唐揚げ、美味しいんだもん」
「いや、だからって……! 俺、今日の楽しみそれしかなかったのに!」
「んふふ、じゃあほら、感想言うね? 外はカリッとしてて、中はジューシー。噛むとじゅわってお肉の旨味が溢れるの。お弁当の唐揚げでここまで出来る人、なかなかいないよ」
「褒めても返さねぇぞ」
「え~、返そうにももうお腹の中にあるし」
無邪気に笑う真。
その笑顔を見た瞬間、峻は「怒る気力」がどこかに吹き飛んでいくのを感じた。
「……まったく。お前ってさ、ずるいよな」
「なにが?」
「そうやって、笑ってればなんでも許されると思ってるだろ」
「うん、思ってる」
「即答かよ……」
そう言いながらも、峻は苦笑いを浮かべて、箸で残りの唐揚げをつまむ。
もうひとつしかない、それを口に放り込む。
――冷めてるのに、うまい。
けど、なんか物足りない。
そう思っていると、真がそっと彼の方へ身を寄せた。
「……じゃあさ、今度、私が作るね」
「え?」
「峻に負けないくらい美味しい唐揚げ。絶対驚かせるから」
「まこちゃんが料理? ……火事起きなきゃいいけど」
「起きないよ! ……多分!」
「多分って言うな!」
二人の声が重なって笑いに変わる。
その日の放課後――真はスーパーの精肉コーナーで、真剣な表情で鶏もも肉を吟味していた。
(峻に食べさせるなら……やっぱり、あの味を超えたい)
そんなことを思いながら、彼女の頬はほんのりと赤くなっていた。
彼の唐揚げは、油と衣と愛情で出来ている。
なら、自分の唐揚げには――「好き」の気持ちを、もう少し多めに入れよう。
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数日後。
「……おい、これ、うまいな」
「ほんと!? やったぁ!」
「衣が軽くて、噛むとじゅわっと……お前、練習したな?」
「うん。峻の唐揚げに勝ちたくて」
「ははっ……負けたかもな」
「じゃあ、今度は一緒に作ろ?」
「おう。……ただし、今度はお前、味見役じゃなくて、ちゃんと“共犯者”な」
「ふふっ、“からあげ共犯者”ね。いい響き」
油のはぜる音が、静かに、優しく二人の距離を詰めていく。
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「君と唐揚げ」バージョン2
「しゅー、今日の昼、唐揚げ弁当にしよっか」
昼休みのチャイムが鳴ると同時に、まこちゃんが俺の机の上に自分の弁当をぽん、と置いた。蓋のすき間から香ばしい匂いがふわりと立ちのぼる。
「まこちゃん、また唐揚げ?」
「“また”とは何よ、“また”とは!」
「いや、三日連続だろ?」
「それはつまり、美味しいってことじゃない!」
彼女は得意げに胸を張る。確かに、まこちゃんの唐揚げはうまい。外はカリッと、中はじゅわっと。油の香りに、にんにくと生姜の下味がほどよく混じってて――一口で幸せになる味だ。
「はい、これ、特製レモン付き」
「レモンは敵だろ」
「なにそれ。あんたまた“かける派とかけない派”の論争始める気?」
笑いながら、彼女は箸を差し出してきた。
「いいから、食べて。今日のは“しゅー仕様”だから」
“しゅー仕様”――そう言うときは、俺の好みがちゃんと反映されている。つまり、ちょっと濃いめで、衣に隠し味のマヨネーズが練り込まれているやつだ。
ひとつ口に入れた瞬間、カリッという音と同時に肉汁が広がった。
「……うま」
「でしょ?」
まこちゃんはどこか誇らしげだ。
「これ、昨日の夜に試作してたの。お父さんが“唐揚げ専門店開けるんじゃないか”って言ってた」
「いやもう開けばいいんじゃないか」
「開いたら、店長はあんたね」
「なんで俺!?」
「だって、味見係でしょ?」
笑いながら頬を膨らませる彼女を見ていると、なんだか心がじんわり温かくなった。唐揚げって、こんなに人を幸せにする食べ物だったか?
「……なあ、まこちゃん」
「なに?」
「もしさ、俺が疲れて帰ってきた日に、この唐揚げが食卓にあったら……それだけで救われる気がする」
「……え、それ、告白?」
彼女の箸がピタッと止まった。
「いや、まあ……」
「まあ、ってなに!」
まこちゃんの頬がほんのり赤くなって、次の瞬間、彼女は一口唐揚げを掴んで俺の口に突っ込んだ。
「だったら、毎日食べさせてあげる!」
「ぐっ……むぐ……あつっ……!」
「ほら、熱いうちが美味しいんだから!」
笑いながら頬を膨らませて怒る彼女を見て、俺もつい吹き出した。
――そうか、これが“まこちゃんの唐揚げの魔法”かもしれない。
食べるたびに、心がやけに優しくなる。
今日も、俺はその味にやられている。
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『からあげと恋心』 バージョン3
昼休みの教室。
弁当箱を開けた瞬間、俺――佐波峻は小さくガッツポーズをした。
「よっしゃ、今日も母さんの唐揚げだ!」
黄金色に揚がった衣、ほんのり漂うニンニクと醤油の香り。
この一瞬のために朝の授業を耐えてきたと言っても過言じゃない。
「……ねぇ、しゅー」
隣の席の皆川真が、少し恨めしそうに俺の弁当を覗き込む。
「なに、まこちゃん」
「その唐揚げ、めっちゃおいしそう……」
「だろ? 母さんの自信作だからな」
「一個だけ……もらっちゃダメ?」
その上目遣いは反則だ。
唐揚げ一個と引き換えに理性を差し出す羽目になりそうだ。
「……一個だけだぞ」
「やった!」
彼女は箸で一つ摘まみ、ぱくりと口に入れた。
その瞬間――頬がふわっと緩み、目がとろける。
「……おいしい。幸せ……」
その言葉を聞いた俺の方が、なぜか胸の奥があたたかくなる。
からあげ一個でこんな顔をするなんて、ずるい。
「お礼に、私の卵焼きあげる」
「まこちゃんの卵焼きって、甘いやつ?」
「うん。文句言ったらあげないからね?」
差し出された黄色い一切れを口に入れる。
――ふわりと広がる甘さ。
なんだこれ、唐揚げの塩気と完璧に釣り合ってるじゃないか。
「うま……」
「でしょ? じゃあ交換成立ね」
その日以来、俺たちは毎日おかずを一品交換するようになった。
唐揚げと卵焼き、時にはコロッケやミートボール。
お互いの弁当が少しずつ似ていって、気づけばそれが当たり前になっていた。
そしてある日。
俺は唐揚げを一個、真の弁当にそっと忍ばせた。
楊枝に差したハート型のピック付きで。
「なにこれ……」
「……試作品。愛情入り」
言った瞬間、顔が真っ赤になる。
真も一拍遅れて、頬を染めた。
「……それ、からあげに言い訳してるだけじゃない?」
「うるさい」
二人で笑いながら食べたその日の弁当の味は、
唐揚げの香ばしさと、心の甘さが混ざり合って――
今でも忘れられない。
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バージョン2ではバージョン1を引っ張ってるな、バージョン3は新規に考えてるみたいです。
連続で指示するとこうなるみたいですね。




