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何もしてないのに

何やっても凄いと思われる設定で書いてとお願いしました。


並行世界の話。



 佐波峻はただ、日常を淡々と過ごしていた。

 朝の通学路で見かけた猫を助け、特に深く考えずに友人の悩みを聞き流す。

 だがその結果、周囲の評価はまるで違った。


「峻くんって、本当に人の心が読めるんだね……」


「さっきの行動、普通の人にはできないよ」


 本人は首を傾げるばかり。


「え、いや……ただ猫がいたから助けただけなんだけど」


 数学の授業でも同じだった。

 先生が難解な問題を黒板に書き出すと、自然と峻は答えを出してしまう。


「峻くん、君は本当に天才だね」


「いや、偶然だって……」


 友人たちは感嘆し、尊敬の眼差しを向ける。

 峻自身はただ、笑って「そんなつもりはないんだけど」と言うしかなかった。


 ある日、文化祭の準備中、彼は特に計画を立てたわけでもなく手を動かしていただけなのに、全体の作業が効率よく回り出す。

 皆が「峻くん、あなたがいると全然違う」と感謝する。

 本人はまた、ただ笑うしかない。


「いや、俺、ただ手を動かしただけで……」


 けれど周囲から見れば、それは天才の所作だった。

 峻は今日も、本人の意図とは無関係に、すべてを完璧にこなしてしまう。





---


 教室の片隅、佐波峻はノートに落書きをしていた。

 特に意味はない、ただのラクガキだ。


 しかし友人の真がそれを見て、目を丸くする。


「峻くん! なんでこんなに美しい図形が描けるの……? 数学の才能……?」


「え、ただのラクガキだけど……」


 次の日、廊下でジャンケンに勝っただけなのに「やっぱり峻くんは運まで支配してる…!」と、なぜか超能力者扱いされる。


 昼休み、食堂でパンを落としただけで、誰かがすぐに拾って渡す。


「さすが峻くん……人を惹きつける力が違う!」


 本人は混乱しながらも、照れ笑い。


「いや、ただパン落としただけだって!」


 体育の授業では、ボールを投げたら奇跡的に友人の頭上でパスが成功。


「峻くん……天才! いや神の領域!」


 峻はついにため息をつき、呟く。


「俺、ただ投げただけなのに……」


 放課後、文化祭の準備で机を運んでいたら、偶然ながら全体の配置が完璧に収まる。


「峻くん、さすが指揮官! 全体が見えてる!」


「いや、偶然だよ!」


 そんな日々を送りながら、峻は今日も、

 本人の意思とは関係なく、みんなのヒーローになってしまうのだった。



---


 放課後の教室、佐波峻はにやりと笑った。


「ふふ、今日は机の引き出しにチョコを隠して…ちょっとだけ驚かせてやろう」


 しかし、クラスメイトの反応は予想外だった。


「さすが峻くん、ただのいたずらでこんなにクラスが盛り上がるなんて!」


「え、ただのチョコ隠しだけど…」


 昼休み、峻はこっそり水筒の中身をジュースに入れ替えた。


「ひひ、明日の体育で驚くだろうな」


 ところが翌日、体育の時間。

 水筒を持ってきた友人たちは、偶然にも全員同じタイミングで「のど渇いたー!」と一斉に飲む。

 結果、クラス全体が元気いっぱいになっただけだった。


 先生も感心する。


「峻くん、さすがだね。みんなを活気づける方法をよく知ってる」


「いや、ただ悪戯しただけで……」


 帰り道、峻はカバンを忘れた友人に「じゃあ俺のカバンもってて」と手を差し出す。

 悪意はなく、ちょっと意地悪で面倒を押し付けただけ。


 しかし周囲は感嘆する。


「さすが峻くん、こういう時の立ち回りが完璧だ!」


 峻は頭を掻きながら、小さくため息。


「悪いことしてるだけなのに、なぜ褒められるんだ…」


 結局、峻は意図せず「悪いことをしても天才的に見える悪役」として、クラスで伝説になっていくのだった。



---


 ある日、放課後の街中。

 佐波峻はただのんびりと本屋を覗いていただけだった。


 しかしその直後、近くの銀行で強盗事件が発生。

 峻は偶然、銀行前を通りかかる。


「え? 何だあれ……」


 強盗は慌てて逃げ出すが、通りすがりの峻の影に気づいて驚き転倒、警察に捕まる。

 通行人たちは口々に叫ぶ。


「峻くん! さすが! 見事な対処!」


 峻は首を傾げる。


「いや、俺、ただ通りかかっただけで…」


 翌日、学校のニュースで報道される。


「昨日の銀行強盗、通りすがりの少年の勇敢な行動で逮捕されました!」


 クラス中から拍手喝采。

 友人の真も目を輝かせる。


「峻くん、やっぱり天才!」


 峻は照れ笑いを浮かべながらも、心の中で呟く。


「俺、本当に何もしてないんだけど…」


 その後も、近所で迷子の子猫が出て騒ぎになった時も、峻が通りかかっただけで猫が戻ってきて「峻くん、すごい!猫まで手懐けるのか!」と騒がれる始末。


 結局、峻は何もしていないのに、「事件解決者・天才少年・猫の使い手」という、完全に実力以上の称号を持つことになる。

 本人はただ、頭を掻きながら溜息をつく。


「俺、今日も何もしてないんだけどな…」



---


 ある日、佐波峻は決意した。


「よし、今日はみんなを驚かせるようなことをやって、尊敬されよう…!」


 まずは放課後、廊下に落ちていた机を軽々と持ち上げてみる。

 友人たちは一瞬息を呑む。


「おおっ、峻くん……!」


 しかしすぐに真がツッコミを入れる。


「それ……別に尊敬されるようなことじゃなくて、ただ重い机を持っただけじゃん!」


 峻は眉をひそめる。


「え、だって前に何も考えずに持ち上げた時はみんな『さすが!』って言ってくれたのに…」


 次に、彼は意気込んで学校の掃除を完璧にこなす。


「今日こそ感謝されるはず!」


 しかし掃除が終わった途端、友人の一人が笑いながら言った。


「峻くん、これって普通に掃除してるだけだよね? 意図的だと逆に違う気がする」


 峻はため息をつき、頭を掻く。


「なんで……俺、前は何も考えずにやっただけで尊敬されたのに」


 結局、峻は悟る。


「なるほど……俺は、何も考えずに行動してこそ、奇跡的に『凄い』と思われる存在なんだな……」


 そうして峻は今日も、無意識に行動しては周囲に「さすが」と言われる天然天才ライフを送るのだった。



面白かったのだけど、なぜその行動がある凄いのか説明を入れてくれるともっとよくなったかも。

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