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にゃんでも事件簿 ― 猫になった俺とまこちゃんの七日間 ―

猫になった主人公を題材に書いてもらいました。


並行世界の話。


一章 朝、毛むくじゃらに目覚める


 ――ぬくい。

 布団の中で丸まって、俺は幸せを噛みしめていた。

 朝日が差し込み、やわらかい毛布の感触。眠気の残る意識のまま、腕を伸ばそうとした瞬間――。


「……腕、短っ!? ってか、毛ぇ!?!?」


 目を覚ました俺の視界に飛び込んできたのは、灰色の前足。

 人間の手じゃない。ふわふわの、もふもふの――猫の足だ。


 慌てて跳ね起きようとして、ベッドから転がり落ちた。

 どさっ、と落ちた先の床はやけに高く感じる。

 いや、高くなったんじゃない、俺が小さくなったんだ!


「……う、そだろ。まさか、猫になった!?」


 にゃあ、と声が出た。

 情けないことに、言葉じゃなく鳴き声だ。


 その瞬間、部屋のドアが開き、あの声が聞こえた。


「しゅー? 起きたの? もう、朝ごはん冷めちゃ――」


 皆川真。俺の幼馴染で、同棲中の恋人。

 彼女はドアの向こうで足を止め、目を見開いた。


「……え、猫? え、可愛い……って、どこから入ったの? 野良ちゃん?」


 俺は慌てて彼女に駆け寄り、足元で訴えるように鳴いた。


「にゃ! (俺だよ、峻だよ!!)」


「ふふ、なに? お腹空いたの?」


 俺の必死の鳴き声も虚しく、真は俺をそっと抱き上げた。

 彼女の腕の中――ふわっと、シャンプーの匂い。

 ああ、いつもと同じ香りなのに、何倍も近い。


 だが状況は洒落にならない。

 俺は猫になっている。しかも、どうやら人間の言葉が通じない。


 ……まさか、昨日のルベスの悪戯か?



---


二章 猫と恋人と探偵ごっこ


 その日から、俺と真の奇妙な生活が始まった。


「よし、シロちゃんって呼ぼうか!」


「にゃ!? (やめて! 峻って呼べ!!)」


 俺の抗議もむなしく、真は俺を「シロ」と名づけた。

 名前の由来は、毛並みが灰色なのに“ちょっと白っぽいから”という安易さだ。


 朝は、彼女の膝でブラッシング。

 昼は、PC作業中の真の足元で丸まり、

 夜は、ベッドで一緒に寝る。


 ――猫としては天国。男としては地獄。


 けれど、そんな生活の中でも、俺には一つの使命があった。

 なぜ俺が猫になったのかを突き止めること。



---


 真は俺の世話をしながら、スマホを片手に呟く。


「……最近、この町で“動物化現象”って噂があるんだって。人が突然、動物になっちゃうとか。ネットじゃ“変身病”って呼ばれてる」


「にゃっ(やっぱりそれだ!)」


「でもね……原因が“恋の呪い”って説もあるんだよ」


「にゃぁ?(恋の、呪い?)」


 画面には怪しげな都市伝説サイト。

 “強い未練や嫉妬を抱いた人間が、愛する人を動物に変える”――

 という眉唾ものの記事が載っていた。


 真は苦笑して、俺の頭を撫でた。


「……もし、しゅーが本当に猫になったら、私、泣いちゃうかも」


 その言葉に胸が痛んだ。

 言えないけど、もうなってるんだよ、俺……。



---


三章 犯人は誰だ?


 数日後、部屋に奇妙な封筒が届いた。

 差出人不明。中には一枚のメモだけ。


 > “お楽しみいただけてますか? 元の姿に戻りたければ、月が満ちる夜、鏡の前で“真実”を告げなさい。”


 ――ルベスの仕業だ。間違いない。


 俺は尻尾を膨らませて鳴いた。


「にゃにゃにゃ!(これ絶対あいつだ!)」


 真は首を傾げながらも、鏡の前に座り、俺を抱き上げた。

 窓の外、満月が淡く輝く。


「“真実を告げる”って……何のこと?」


 真は俺の瞳を見つめた。

 その視線に、心が震える。

 言葉にできないもどかしさが込み上げる。


 ――俺が、真を好きだってこと。

 ずっと伝えきれなかった、照れくさくて逃げてた言葉。


 それを今、猫の姿でやっとわかった。


 俺は胸を張り、全力で鳴いた。


「にゃおぉぉぉん!(まこちゃん、大好きだぁぁぁ!!)」


 すると、部屋中が淡い光に包まれた。

 真が驚いて目を細めた次の瞬間――俺の視界が伸びた。

 手足が、元に戻っていく。



---


四章 元の姿に戻った朝


「……しゅー?」


 目を開けると、真の顔があった。

 泣き笑いのような顔で、俺を見つめていた。


「やっと……戻ったの?」


「ああ。悪かったな、心配かけて」


 俺が答えると、真は涙をこらえきれず、抱きついてきた。

 体温が直に伝わる。猫の毛の代わりに、彼女の腕のぬくもりが。


「ほんと、もう……あんなに可愛がったのに、今度はちゃんと“人間のしゅー”を可愛がるから」


「……猫の時より大事にしてくれるなら、それでいいよ」


 二人の笑い声が、月明かりの残る朝に溶けていった。


 テーブルの上には、例のメモの裏に書かれた小さな文字。


 > “にゃはははは! 愛の真実、解決おめでとうございます。”

 ――ルベス



---


にゃんでも事件簿外伝:ドタバタ猫生活篇



---


朝 ――目覚めたらお腹の上


 ふかふかの布団。朝の光。

 人の寝息とシャンプーの匂い。


 俺はゆっくりと目を開けた。


 ――目の前、まこちゃんの顔。


 彼女はすやすや寝ている。柔らかな黒髪が頬にかかって、唇が少し開いてる。

 そのすぐ下、俺は……彼女のお腹の上にいた。


 ふかっ。ふわっ。沈む。

 ――なんだこの極上クッションは!?


「……ん、シロ? 重いよぉ……」


 寝ぼけた声とともに、まこちゃんが寝返りを打つ。

 そして俺は――


 ごろり。ドサッ。


 床に落下。


「にゃああ!(ぎゃああ!)」


 その叫びで目を覚ます彼女。

 寝ぼけまなこのまま、布団の上から俺を見下ろす。


「……あ、ごめんシロ。落としちゃった」


「にゃ(いや、落とされたんですけど!?)」


 それでも彼女は俺を拾い上げ、胸元で抱きしめた。

 朝からやたらと近い。心臓の音、ぬくもり、柔らかさ。


 ……うん、悪くない。いや、最高かもしれない。



---


午前 ――ブラッシング地獄


「さーて、シロちゃん。今日もブラッシングしようね」


「にゃああ(またか!)」


 俺は抵抗した。だが、真の手には既に“凶器”――ブラシが握られている。

 逃げようとした瞬間、彼女の手がするりと伸び、首根っこを優しく掴まれた。


「はいはい、じっとしてね」


「にゃっ、にゃあっ(やめ、背中そこ、変なとこまで!)」


 シャッ、シャッ。

 背中から腰、尻尾の付け根まで、完璧なスイング。

 俺は目を細め、無意識に喉を鳴らしていた。


「……ふふ。気持ちいいんでしょ?」


 ああ、くそ……屈辱的なのに……気持ちいい……。


 最後に彼女はブラシの先で俺の頭を軽く撫でる。

 優しい指先、温もり。


「よし、今日もツヤツヤだね」


「にゃ(……ありがとな)」


 気づけば、俺の心は猫に侵食されつつあった。



---


昼 ――カップ麺と尻尾の悲劇


 昼。

 真はPCの前で仕事中。

 俺はその足元で丸まっていた。


「お腹すいたな……カップ麺でいいか」


 ケトルを手に、彼女が立ち上がる。

 俺も続いて台所へ。だって匂いがするんだもん。


「シロ? だめだよ、足元うろうろしたら――」


 ガシャン!


 ――派手に湯気が舞った。


 彼女が驚いてしゃがむ。

 幸い、麺は床に落ちただけで、熱湯はかからなかった。

 けど俺は、尻尾の先がちょっと濡れた。


「シロ! 大丈夫!? ああもう、危ないって言ったのに!」


「にゃぅ……(ごめん……)」


 タオルで拭かれ、ドライヤーで乾かされる俺。

 ぬるい風と、近づく顔。

 心配そうな瞳がやけに真っすぐで、ドキリとする。


「……ほんと、心配なんだから」


 その声が少し震えていた。


 ――俺は猫のまま、思わず顔を擦り寄せた。


「にゃ(泣くなよ、まこちゃん)」


「……ふふ、慰めてくれるの?」


 ドライヤーの風の中、彼女の笑顔がふっと戻った。



---


夜 ――猫VS風呂


「さ、シロちゃん。今日はお風呂入ろっか」


「にゃあ!?(聞いてない!!)」


 抵抗した。

 全力で暴れた。

 だが――まこちゃんは手慣れていた。


「はいはい、こっちおいで〜。怖くないよ〜」


「にゃああ!(信じない!)」


 湯気立ちこめるバスルーム。

 俺はすでに洗面器の中。お湯がじわりと近づく。


「ほら、気持ちいいでしょ?」


「にゃおおぉぉぉ!(ぬるい! けど! 屈辱!!)」


 けど、やがて――湯の温かさに体がとろける。

 指先が頭を撫でるたび、力が抜けていく。


「ねぇ、シロ。もしも君が“しゅー”だったら……どんな顔するんだろ」


 その言葉に、胸が痛くなった。

 湯の中で、俺はただ目を細めて鳴いた。


「……にゃ(もうすぐ戻るよ)」



---


夜更け ――猫は枕を奪う


 夜。

 まこちゃんがベッドに潜り、俺はその横に丸くなる。


「おやすみ、シロ」


 彼女の手が髪を撫でてくる。

 その手の温もりが心地よくて、俺は枕元に移動し――彼女の枕を占領した。


「ちょ、シロ!? そこ私の枕!」


「にゃ(譲らん)」


 軽く叩かれても動かない。

 すると彼女は溜息をつき、俺の隣に頭を置いた。


「……ずるいよ、そうやって可愛い顔して」


 彼女の息が近い。髪が触れる。

 胸の奥がチクリと疼いた。


「……おやすみ、まこちゃん」


 思わず口に出した瞬間、言葉じゃなく鳴き声になった。


「にゃ……」


 彼女が笑って、俺の頭を撫でる。


「うん。おやすみ、シロ」


 その声を聞きながら、俺は小さく喉を鳴らした。

 ――猫の姿でも、悪くない夜だった。



---


終



猫になって彼女とお風呂とか良いな……。

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