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モブだって感情があるんだよ!喧嘩編

モブの活躍が面白かったのでバカップルの喧嘩に右往左往する姿を書いてもらいました。


並行世界の話。



 昼休み・教室


「……あれ、珍しく静かじゃない?」


 クラスの女子が首をかしげた。

 普段なら昼休みは、佐波峻と皆川真の周囲だけが“胃もたれゾーン”になっているはずだ。


 だが今日は違った。

 二人は机を向かい合わせにして座ってはいるが、頑なに目を合わせていない。

 空気がピリついている。


「ま、まさか……」


「喧嘩!?」


「バカップルに……危機!?」


 瞬く間にクラスがざわめきに包まれる。



---


 事情聴取


 勇気を出して近づいた男子が、こっそり事情を聞いてきた。

 戻ってきた彼の表情は深刻そのもの。


「おい、原因わかったぞ」


「なんだ!?」


「――昨日の購買で、峻が最後のメロンパンを買ったらしい」


 一瞬の沈黙。

 そして、教室に響き渡る盛大なズッコケ。


「それだけぇぇぇぇぇ!?」


「もっと重大なやつかと思ったのに!」


「いやでも……バカップル的には一大事なんだろう」



---


 過剰な心配



「どっちが折れるか見ものだな」


「いやいや、もしこのまま仲直りしなかったらどうするんだよ!」


「そしたら……このクラスの平和が終わる……」


 女子たちは顔を見合わせ、涙目になりかける。


「うちらの青春から、甘ったるいBGMが消えちゃうの……?」


「ダメ、想像しただけで教室が寒々しい!」


 男子たちも妙に真剣。


「よし、仲裁委員会を作るぞ!」


「お前ら暇か!」



---


 仲直り



 ちょうどそのとき、峻がぽつりと言った。


「……次はまこちゃんに譲るから」


 真も小声で返す。


「……最初からそうすればいいのよ」


 次の瞬間。

 二人はいつものように並んで席を立ち、購買へ走っていった。


 残されたクラス全員が、一斉にどっと床に崩れ落ちる。


「……解散! 本日の心配イベント終了!」


 こうして教室には再び、

「今日も平常運転だな……」という安堵と脱力が広がったのだった。



---




 昼下がりの数学の授業。

 静かな教室に、突然カチンとした空気が走った。


「――ちょっと! 勝手に使わないで!」


 皆川真が、佐波峻の手元をピシャリとはたいた。


 クラス全員の心臓が一瞬止まる。


「な、なんだ!? 今の声……」


「皆川が怒鳴った……? 佐波に?」


 二人の机の間には、たった一つの消しゴム。

 その小さな白い長方形をめぐって、戦場のような緊張が広がっていた。


「……まさか」


 最前列の男子がゴクリとつばを飲み込む。


「佐波が……皆川の消しゴムを無断で……?」


「そんなことで!?」


「いや、あの二人にとっては重大事件だぞ!」


 消しゴムを取り返した真は、ぷいっと顔を背けた。

 峻も不満げに鉛筆を回している。

 一見すればただの痴話げんかだが――クラスメイトたちの心には雷鳴が轟いていた。


「どうする? このまま冷戦突入か?」


「いやだ! バカップルが冷戦したら、教室の平均気温が5度下がるぞ!」


「誰か仲裁しろ!」


「無理無理! あれは下手に口出したら巻き込まれて爆死するやつ!」




 授業が終わるころ、峻がポツリとつぶやいた。


「……ごめん。今度、ちゃんと自分で消しゴム持ってくるから」


 その瞬間、真がほんの少しだけ笑った。


「……ならいいよ」


 次の瞬間にはもう二人並んで教科書を覗き込み、肩を寄せ合っていた。


 残されたクラス全員が机に突っ伏す。


「……解散。今日の騒ぎは“消しゴム事件”で確定だ」


「くだらなさすぎて涙出る」


「でも正直……ホッとした」


 そしてまた教室は、いつものバカップル仕様の空気に戻っていくのだった。



---


 放課後、校門前のコンビニ。

 クラスメイトたちがたむろするなか、峻と真は仲良くアイスを買って出てきた。


 ――はずだったのに。


「……ありえない!」


 真の声が響き渡る。


 一同が振り返ると、峻と真が袋を手に向かい合っていた。

 その場の空気が一瞬で凍る。


「え、また喧嘩!?」


「今度は何だ!?」


 事情を小耳にはさんだ生徒が顔を引きつらせながら報告する。


「……佐波が“バニラ最強”って言ったらしい」


「それに皆川が“チョコこそ王者”って言い返して」


「……で、決裂」


クラス全員:

「しょうもなっ!!!!」



---


「いや待て、これはアイス戦争だぞ……」


「どっちも譲らなかったら、不戦敗で二人とも終わりだ」


「俺たちの教室、明日から冷凍庫になるかもしれねぇ……」


 誰もが冗談半分、本気半分でざわつき始める。


 しばし沈黙したあと、峻が静かにアイスを差し出した。


「……じゃあ、一口ちょうだい」


 真はむっとした顔でチョコアイスをかじり、わざとらしく差し出した。


「……そっちも」


 二人は黙って互いのアイスを交換し、一口。


 次の瞬間――


「……チョコもうまいな」


「……バニラも悪くないね」


 顔を見合わせて、ふっと笑う。


 残されたクラス全員が、地面に崩れ落ちる。


「……はい解散。“アイスの味事件”終了」


「くだらなすぎて心配した自分がバカみたいだ」


「でも……ちょっと感動したのは内緒だ」


 こうしてまた、二人の喧嘩(?)は丸く収まったのだった。



---



 放課後の教室。

 提出物を集めていた学級委員が、眉をひそめて言った。


「……あれ? 佐波の連絡ノートがない」


 途端に、後ろの席でバンッと音がした。

 皆川真が立ち上がり、峻を睨んでいる。


「……ねぇ、いい加減にしてよ! 毎回毎回、私に出させるつもり!?」


 峻は鉛筆をいじりながら小声で反論する。


「だって……まこちゃんの字の方がきれいだし……」


 教室の空気が凍りついた。


「おい……聞いたか?」


「うん……“連絡ノートの提出係”をめぐって、ついに揉めたらしい」


「しょうもなさすぎる!」


 だが、生徒たちの表情は真剣そのもの。


「でも、この喧嘩……今度こそ長引くかもな」


「だよな。ノートって毎日出すやつだし」


「もし二人が別れたら、誰が連絡ノートを提出するんだ……!?」


「いやそこかよ!!」


 真は腕を組んでプイッと顔をそむけた。

 峻は困ったように頭をかく。


「じゃあ……今度から交代で出す?」


「……最初からそうすればいいのよ!」


 数秒の沈黙のあと、二人は顔を見合わせて同時に笑った。

 

「じゃあ明日は俺が出す」


「忘れたら許さないから」


 そして二人は肩を並べて教室を出ていった。


 残されたクラス全員は机に突っ伏す。


「……本日の事件、“連絡ノート事件”終了」


「いやもう……家庭内の愚痴レベルだろこれ」


「でも仲直り早くてよかったな」


 誰もがそう口にしながら、心のどこかでホッとしていた。



---


 

 体育館。


 準備運動の号令がかかり、クラス全員がペアを作ってストレッチを始める。


「よーし、ペア組めー!」


 体育教師の声に合わせて生徒たちが散っていく。


 峻はいつものように真の方へ歩きかけ――

 その瞬間、後ろの男子に肩をポンと叩かれた。


「お、佐波、今日一緒にやろうぜ!」


「……あ、あぁ」


 と反射的に答えた峻。


 次の瞬間。

 真の目がキラリと光った。


「……なにそれ」


「え?」


「なんで、私じゃないの?」


 体育館が一瞬で静まり返る。


「お、おい……見たか?」


「佐波が……皆川以外と準備運動を……」


「死刑案件じゃん!」


 数人が青ざめて小声で囁く。


「体育館が戦場になるぞ……」


「バカップルの崩壊=学年行事の崩壊だろ……」


「先生! 仲裁を!!」


「……無理だ。下手に止めたら俺が巻き添え食らう」


 教師すら一歩引く事態に。


 峻は慌てて手を振った。


「ま、まこちゃん! 違うって! 今のは反射的に……!」


「ふーん、そう」


「いやいや! 俺のパートナーはまこちゃんだけだって!」


 一瞬の沈黙。

 真はそっぽを向いたまま、ポツリ。


「……じゃあ次から間違えないで」


「……ああ! 絶対!」


 その瞬間、周囲が一斉に安堵のため息を漏らす。


「……ふぅ、危なかった」


「体育で家庭崩壊を見るところだったな」


「いや家庭じゃないけどな!」


 教師も胸をなでおろし、号令をかけ直した。


「……よーし! 佐波と皆川はペア固定! 他の奴らは勝手に組め!」


 こうして「準備運動事件」は、クラス中に冷や汗をかかせたのちに幕を閉じたのだった。



---



 昼休みの教室。

 峻は黒板消しを手に取り、軽くパンパンと叩いていた。


「……なにやってんの?」


 真がじーっと睨む。


「え? いや、ちょっとチョークの粉が気になって……」


「ふーん」


 数秒の沈黙。


「……それ、私に投げようとしたでしょ」


「してねぇよ!?」





「おいおいおい、始まったぞ」


「え、黒板消しで!?」 


「またくだらない理由だ……」


 クラス全員が息をのむ。


 真は腕を組み、プイッと横を向いた。


「……しゅーは私を汚したいんだ」


「待て待て待て! 誤解がすぎる!」


「だってそうじゃない! 黒板消し構えてた!」


「ちがう! 黒板掃除してただけ!」


 その場の空気はピリピリ。

 教師が入ってきて黒板を見た瞬間、恐る恐るつぶやく。


「……あの、佐波。キレイになってるから……助かるぞ?」


「先生ナイスフォロー!」


「先生、命拾いしましたね……」


「バカップルの仲裁に入るのは命懸けだからな……」


 結局、峻は必死に「俺はまこちゃんを汚す気なんかない!」と力説。

真は最後には「……じゃあ許す。でも次はないからね」と微笑んだ。


 クラス全員(……はぁぁぁぁぁ~~……よかったぁ~~~……)


 こうして「黒板消し事件」は、またもや学級全体をヒヤヒヤさせて幕を閉じた。



---



放課後の教室。

峻が自分の筆箱を開けると、中のシャーペンが見当たらなかった。


「……あれ? 俺のシャーペンどこいった?」


すると真がサラッと答える。


「ん? 私が使ってる」


机の上には、真がカチカチとシャーペンを走らせている姿。


「お、おいまこちゃん! それ俺の!」


「え? いいじゃない、一本ぐらい」


「だって、それ誕生日に買ってもらった大事なやつで……」


真の手がピタリと止まる。


「……誰に?」


クラス全員(やべえええええ!!)


「いやいやいや! 姉さんだよ!? 姉さん!」


「……本当に?」


「ほんとほんとほんと! …………なんで黙って使ったんだ?」


「だって、しゅーが全然気づかないんだもん!」


「それは俺が筆箱の中身チェックしないだけだろ!?」


 言い合う二人。


 クラスの隅では、数人の生徒が小声で。


「……またくだらないことで揉めてる……」


「いやでも今回はちょっと重いぞ、“誰にもらったか”とか」


「確かに……バカップルの世界観、地味に修羅場だな」


 最終的に、峻が真の前に手を差し出し、


「……まこちゃんが使ってた方が、そのシャーペンも幸せだよ」


と、妙に甘いセリフを吐いた。


 真は耳まで真っ赤になり、シャーペンを机に置いて小声で。


「……そう言うなら、許してあげる」


 クラス全員(……解決の仕方が毎回甘すぎんだよ!!)


 こうして「シャーペン事件」は無事(?)に終わりを迎えた。



---



 昼休み。

 峻と真は、いつものように机をくっつけてお弁当を広げていた。

 ところが、その日の空気は一変する。


「……ねえ、しゅー」


「ん?」


「私の卵焼き……食べたでしょ」


 峻は固まった。箸を持つ手がカタカタと震える。


「あ、あれ……間違えて……」


「間違えて!? 私のお弁当から!?」


 その瞬間、教室は凍りついた。


「お、おい……真っ赤な顔で怒ってるぞ……」


「これ、今までで一番やばいやつじゃ……」


「卵焼きって、バカップルの中では愛の象徴だろ!?」


 真は箸を置き、真剣な顔で言い放つ。


「……別れる?」


 ガタァァァァンッ!!!!

 クラス全員が椅子から転げ落ちる音が響いた。


「うそだろおおおおお!!!」


「俺たちの心の支えが!!!」


「生きる希望が消えるっ……!」


 数人は机に突っ伏し、数人は本気で涙を流し、保健委員は「AED持ってこい!」と叫んでいた。


 峻は真っ青な顔で、机をバンッと叩いた。


「別れない!!! 絶対に別れない!!! 卵焼き百個で償うから!!!」


「……ほんと?」


「ほんとだ! 百でも千でも作る! 俺はまこちゃんと一緒じゃなきゃ生きていけない!!!」


 真はしばらくジッと見つめていたが、ぷいっと顔をそらし小声で。


「……じゃあ、許す」


 その瞬間。


「うおおおおおおお!!!」


「助かったぁぁぁぁぁ!!!」


「命拾いしたああああ!!!」


 クラス全員が涙と歓喜に包まれ、昼休みの教室はまるで戦場から帰還したかのような安堵の空気で満ちた。


 最後には、峻と真が寄り添いながら仲良くお弁当を食べる姿。


「……しゅー、やっぱり一緒がいいね」


「当たり前だろ、まこちゃん」


 教室の隅では、クラスメイト全員がハンカチで涙を拭いながら叫んだ。


「もう二度と心臓に悪い喧嘩すんなあああああ!!!」




なんだかんだでクラスメイトは二人とも大好きだな、恒例のイベントになっているのは面白い。

楽しむクラスメイトたちがいいね。

設定であんまり決めてないクラスメイト、今度自分の作品で細かい設定考えてあげよう。

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