第三十八話 兄弟戦争
祟よりもさらに上の階級の霊、「呪」。
呪は特殊な方法でないと祓うことができない。その方法は、呪によって違う。
呪が祓われる条件というのは、自分で設定するのではなく、生前の怒り、または怨霊としての今の怒りがとてつもなく大きいと、それに関連した条件が付く。そして霊力も爆増する。
雷風は、自らその条件を吐き出した。
「俺はな、兄ちゃんじゃなきゃ祓えねぇんだよ。」
雷風を祓う条件、それは、無神無人により祓われることだった。
「………は…?並大抵とか言ってたけどそんな問題じゃないじゃねぇかよ!」
上上が叫ぶ
「黙れよそう設定されて生まれたんだ俺は。…わかったらもう死ね。」
「死なねぇわクソ!」
「今の俺の力を知ってて言ってんのか?」
「……あ…?」
「俺の霊力量、わかってんのかって言ってんだ」
学校では習わない単語…霊力量、通称ASP(Amount of Spiritual Power)。
「呪」にのみ使う霊力量の単位。
霊力量とは、その名の通りその霊が霊力をどれほど含んでいるかどうか。その霊その物の強さを表す単位でもある。呪の力を細分化するために与えられる数値。
測られることはないが、参考程度に祟は400ほど、雷風団四天王でも600ほどだろう
呪は、もちろん個体にもよるが軽く5000を超す個体が多い。
そしてこの雷風のASP、それは……
「「「12000だ。」」」
一万………二千………、、??
このなかで唯一、ASPの意味を知っている八重桜先生だけが絶望する
「わかったらとっとと失せろ。」
「………失せるかよ…!!」
「ダメよ上上ちゃん、!私たちには勝てない!増援を待って!」」
「誰が待つか!こいつをちょっとでも止めなきゃなんねぇってのに!」
「はぁ……もういい。物分かりが悪すぎる。」
「上上ちゃん!!!行かないで!!お願い!!!」
「うるせぇよ八重桜ァ!私は私なりの方法で………っ………」
上上が技を繰り出そうとした瞬間、1本の雷が落ちる。その雷は、人間がまともに食らえば死んでしまうほどの電力だ。
………だがその相手が霊となると話は違う。
「無神無人先生…!!!?」
「すまなかった。到着が遅れた。」
「ようやく来たかよ兄貴!!!ずっとやりたかったんだz……」
「「監獄 暗」」
「は?」
辺り一帯が真っ暗になる。
「いい兄貴開始早々姿くらましか?はよ出てこいや!」
「黙れ。お前はもう生かしてはおけない。」
「ははっ、よく言うぜ!」
真っ暗のなか、ゴロゴロと雷がなる音がする。
「大、風、展開…「暴風」」
「「暴電風雷」!!!」
風と雷がごちゃ混ぜに………もうどうなってやがるんだ…私になにか…できること……
「上上!お前らは下がれ!」
「っは…?なんで!?」
「聞いていなかったのか、?こいつは私にしかやれない…弟は、兄である私にしかやれないのだ…!」
「へっ、強がりめ。まぁある意味そうだけど」
「大、風、雨、展開…「大嵐(メガストーム」、!」
ゴゴゴゴゴゴ…………
かつては仲が良かった。私も、弟も。
両親に育てられていた年齢の時期、能力など何もなかった。名前すらなかった。
能力や名前は、私たちには無いものだと思っていた。
冥界大戦が訪れるまでは。
あの戦争が起こると、大量の霊が勢力を上げ、それぞれで対立し、冥界を混沌へと突き落とした。
冥界大戦が起こると、私と弟は両親にこう言われた。
「私たちの能力を与えるのは、どちらか一歩のみ。雷と風を扱うのは、2人では駄目なの。」
てっきり、親の代を私たちで継ぐものだと思っていた。雷と風、これら二つは一人が使わなければならない能力だ。風神雷神、2人だったが、それは彼らが神ゆえにできたことなのだろう。
………私は落ちこぼれだったようだ。
戦争に怖気づき、霊なりの「自殺」を試みた。それが、「人間化」だ。
少し前に、川原先生が対峙した人間化する霊とはまた、話が違う。奴はそれが能力なのだ。
……上手く行かなかった。人間となり、現世に落ちることで、戦争には参加しなくてもよいと勝手に思っていた。人間と霊が半々に混ざり、生きているのか死んでいるのかも分からない状態になった。
そんな私を、両親は皮肉混じりで、「神でも人間でも無い、「無神無人」だ」と名付けた。
雷風は、風神雷神から能力を与えられ、強大な力を得た。私を冥界に連れ戻すために。
「兄貴よぉ!なんで人間界に降りてんだぁ!?」
「私が人間だからだ。これ以上の理由があるのか?」
お互い本気でぶつかり合っている…
駄目、無神無人先生、無神無人先生、!!
赤城玲が加蔵にテレパシーを使う。
「加蔵くん起きて!!!無神無人先生が!!!」
(加蔵、起きろ。戦え。)
…なんだ………童子の声………
(起きろ。起きろ!)
……、…
っ!???なんだ、俺、寝てた、?のか?
「うぉっ…加蔵なんだお前、急に飛び上がんなよ…」
「つつつつ、躑躅森先輩…!???」
「っせぇよわめくな。なんだ、なんかわかったんか?」
「あっ……いや、それがなんにも……」
「………多分、半霊半人がアブねぇんだろ、行くぞ。」
「えっ、」
半霊半人……無神無人先生のことか…?
「俺に掴まれ。爆速で行くぞ。」
「えぇ、?」
すると、一気に猛スピードで突き進む。加速はない。
………躑躅森先輩は能力を使っていない、素でこの速度!?
「あ、あの、50メートル走って何秒…」
「あ???今それ気になっか!?」
「あっ…ごめんなさい……」
「……2秒。オラ行くぞ!」
2…?ん?え?
「先輩人間っすよね、?」
「うるっせぇ人間だ!!!」
「は…はい………」
「……祓えんのか?お前にあいつは」
「いや、わからないです…でも…無神無人先生が、俺と二人でじゃないと祓えないって…」
「なら気絶してる場合じゃねぇな。」
猛ダッシュで駆け抜ける。
ゴゴゴゴゴゴ…………
「………おい聞こえるか、やべぇ音してっぞ」
「………」
「ほらいけ、おれが行ったら多分足手まといだ。」
「はいっ、!!」
そして、躑躅森先輩に投げ飛ばされる。
飛んだ先にあったものは、でかい真っ黒な塊。
………多分、多分だけど、無神無人先生の監獄。このなかでやりあってる…!
監獄は外側から入れるのか…?……ええいものは試し!やってみるしかねぇ!
「はぁっ!!!」
パリィイン………
「っと………はいれたっぽい…?」
「加蔵…!?」
「おっ!兄貴の生徒か?」
「だったらなんだ?」
無神無人先生が言う
「殺すに決まってんだろ。カスみてぇな人質連れてきやがってよぉ」
「加蔵、お前を私の闇で隠す。その間逃げ回っていてくれ。」
「逃げ、わかりました…!」
いきなり命令された。何が起こっているかは全く分からないが、今はとりあえず従順に動くしかない。
「雷風、お前に通用する攻撃は私の攻撃のみと言うことはもう既に知っている。なら、私が叩きのめせばよいな?」
「何馬鹿なこと言ってんだ、そうだよ当たり前じゃねぇか。それが、簡単にできんのかって話な??」
「あぁ。受けて立とう。」
「ちっ…そういうとこが腹立つんだよ!」
「「闇、展開」」
闇が俺に覆いかぶさる。
闇の質感は、見た目は布のようなもの、触り心地は………無…。何もない。触れる感触は感じられないのに、手が押し返される。何も見えない………
いや、まて、雷風の位置だけ見えるぞ!?
あいつ、無神無人先生の監獄に適応するために無駄に光ってやがんのか……!闇越しでも見えるくらいに光ってやがんのか…
「おいどうした、かかってこいよ兄貴!!」




