第百四十四章 佐藤刑事、大学病院を訪ねる
次の日、佐藤刑事は飛び降り自殺に見せ掛けた殺人事件の再確認と、陽子が本当に医学部の助教授なのか、死後硬直の件もあり半信半疑で、検死官も二人の事は知っているとはいっても面識はなく確認する為に、大学病院を訪ねました。
非番なので昼食を陽子と一緒に食べようと思って大学病院に来ていた修とバッタリ会いました。
佐藤刑事が、「病気か怪我でもなさそうだし、梅沢、なんでお前がここにいるのだ?ここはそもそも管轄外だろう!」と不機嫌そうに尋ねました。
陽子は、「刑事さんの仕事は管轄とかあって、色々と難しいのですね。でも大学病院に来るほど大きい怪我でしたら解るかもしれませんが、病気かどうかは外見では解りませんよ。自分が病気かどうか解らずに、手遅れで亡くなる人もいますのでね。」と修が責められていたので間に割って入りました。
佐藤刑事は、「えっ?梅沢、お前病気なのか?それも大学病院に来るほどの悪い病気なのか?お前とは、短い付き合いだったな。迷わず成仏しろよ。」と冗談で修を拝んでいました。
修は、「俺は健康だ!心配しなくても、お前とは、長い付き合いになるよ。人が今にも死にそうな言い方をしなくても良いだろうが。」と不満そうでした。
佐藤刑事は、「それは、梅沢が・・・」と反論しようとしていると陽子が、「私と食事をしに来たのが問題ですか?」と修を助けました。
佐藤刑事は出鼻を挫かれ、「えっ!なんで?」と陽子の予想外の説明に驚いていました。
修が、「紹介するよ。俺の女房だ。今日は非番なので一緒に食事しようと思って来ました。医者と刑事なので、休みも合わず、夜勤などもある為に、こうでもしないと会えないのでね。陽子は外科医なので、二度と、その減らず口を叩けないように、陽子に頼んで、舌を切除して貰おうか?」とリベンジしました。
佐藤刑事は、「梅沢!お前はいつから地獄の閻魔様になったのだ?」と不満そうでした。
修は、「警察学校で、お前と同期になってからだ。何でこんな話になるのだ。だいたい、陽子が健康な俺に変な事をいうからだぞ。」と怒りました。
陽子は、「私はただ、一般論を言ったまでよ。病気かどうか直ぐに解るのでしたら、手遅れで亡くなる人はいなくなるわよ。解らないからでしょう。例えば、修ちゃんが、今ここで急に倒れる可能性もあるのよ。」と返答しました。
佐藤刑事は、「修ちゃん、倒れないように気をつけまちょうね。」と大笑いしていました。
修は、「五月蝿いな。陽子、人前で、その修ちゃんというのは辞めろよ。以前も言った事があるだろうが。」と不満そうでした。
陽子は、「病院で警備会議の時の事ね。あの時は、仕事中は辞めろと言っていたじゃないの。今日は非番で、仕事中ではないでしょう。」と反論しました。
修は、「解ったよ。ところで陽子、管轄がどうだとか言っていたが、お前だって、外科と内科のごたごたに、何度も巻き込まれているじゃないか。同じ事だよ。今度は外科と内科のごたごたではなく、何か事件に巻き込まれたのか?お前はどこにでも顔を出すな。」と笑っていました。
陽子は、「そんな言い方をすれば、私はお節介なデシャバリ女みたいに聞こえるじゃないの!でも確かに事件に捲込まれたみたい。で、どうですか?これから三人で一緒に食事に行きませんか?刑事さんも食事はまだなのでしょう?ゆっくりと食事しながら、話をしませんか。」と提案しました。
レストランに行って、三人で食事をしながら修は、「所で、お前は地獄の閻魔さまの捜査に来たのか?」と何の捜査なのか話を切り出しました。
佐藤刑事は、「そんな訳ないだろうが、ある殺人事件の第一発見者である奥さんに、もう少し詳しい話を聞きたくて来たんだ。」と陽子に会いに来た理由を説明しました。
修は、「陽子、お前殺人事件の第一発見者なのか?何故言ってくれなかったんだ?いつも死体を見ているから、死体を見ても何も感じなかったのか?」と事件の事を相談してくれなかった事に不満そうでした。
陽子は、「そんな事はないわよ。そんな言い方をすれば刑事さんに、私が冷酷人間だと思われるじゃないの。」と不満そうでした。
佐藤刑事は、「決してそんな事はありませんよ。先日は、現場に奥さんがいなければ自殺だと判断して殺人事件だとは気付きませんでした。感謝しています。」と陽子に感謝していました。
修は、「お前は自殺か他殺なのかも解らないのかよ。情けない刑事だな。」ともっと確りするように忠告しました。
陽子は、「まあまあ、そう言わずに」と修を宥めて昨日のデパートでの出来事を説明しました。
修は、「そうか、そうだったのか。でも一言僕に話をしてくれても良かったのじゃないか?しかし、陽子は外科医としては超一流なので、陽子の証言は、まず間違いないと思うよ。何かのトリックを使った筈だ。」と佐藤刑事に助言しました。
佐藤刑事は、「そうらしいな。エスベック病患者を助けた凄い外科医らしいな。梅沢、お前寝ている間に寝ぼけている奥さんに解剖されないように気を付けろよ。矢張り、お前とは短い付き合いになりそうだな。所で奥さん、飛び降りたのは、人形などではなかったですか?」と確認しました。
陽子は、「自分で動いて飛び降りたので、少なくとも人形ではなかったです。顔は長髪で隠れて見えなかったのですが、自然な動きでしたので、電動式ロボットでもなかったです。最近の科学は進歩していて、二足歩行のロボットもある為に、自然な動きをするロボットがあれば話は別ですけれどもね。」とその時の様子を思い出していました。
修は、「長髪?男のくせに、長い髪をしていたのかよ。」と男のくせにちゃらちゃらしやがってと不満そうでした。
陽子は、「修ちゃん、外見で人を判断するのは良くないわよ。例えば、昔は、茶髪は不良のイメージでしたが、最近は、そうでもないわよ。先日、駅のエレベーターに乗った時、ネクタイにスーツで髪も七三に分けたサラリーマン風の男の人が操作盤の前に立ち、Gパン姿で髪を金色に染めた男の人が身障者用の操作盤の前に立っていて、そこへ中年のおばさんがエレベーターに乗ろうとした時に、ドアが閉まりかけて、おばさんが挟まれ困っていました。サラリーマン風の人がドアを開くボタンを押すと思っていると、何もしなかった為に、金髪の男の人が、慌てて、身障者用のスイッチでドアを開けたのよ。身だしなみが良くても人間として最低ね。金髪の男性の方が、よっぽど人間として真面よ。」と修の考え方は偏見だと忠告しました。
修は、「お前は、その様子を見ているだけで何もしなかったのか?お前も似たようなものじゃないのか?」と口先だけで陽子は何もしなかったのか不審に感じました。
陽子は、「私は操作盤から離れていました。私もサラリーマン風の男性がドアを開けると思っていたので驚いて、一言文句を言おうとしたら、金髪の男性がドアを開けたので何も言わなかったのよ。」と返答しました。
修は、「解ったよ。所で、刑事は現場百回だろ、こんな所で無駄話せずに、早くトリックを解きに行けよ。ひょっとすれば、現場にロボットの破片が落ちているかもしれないぞ。」と仕事中にいつまでのんびりしているのかと不満そうでした。
佐藤刑事は、「はいはい、解りました。どうせ俺は、お邪魔虫ですよね。現場をもう一度調べて見るよ。」と仕事に戻ろうとしていました。
佐藤刑事が帰ろうとしていると陽子の携帯に菊枝から着信がありました。
陽子が携帯に出ると、菊枝は、「昨日の事件の事で確認したい事があります。飛び降りる所は見たけれども、地面に落ちる所は見えた?あそこからでは見えなかったのじゃない?下にマットじゃ無理か。でも何かクッションを置いていたのじゃないかしら?」と事件の事を陽子に相談しました。
陽子は確かに言われてみれば、そうだと思い、少しでも早く、飛び降りた人の所へ行こうと思い、その後の様子を、透視力で確認していなかった事を後悔しました。
陽子は、菊枝から聞いた話を佐藤刑事に説明すると佐藤刑事は、「今から確認して来ます。刑事は現場百回だからな。」とレストランを出て行きました。
陽子は、“何とか星人の科学力で何か解らないかしら?”と思い、陽子の警備をしているコスモスは、近くにいる筈だから、意思波で聞く事にしました。
陽子は、「コスモスさん、近くにいるのでしょう?今の話を聞いたと思うけれども、事件の真相を、あなた方の科学力で調べる事はできないかしら?」と期待しました。
コスモスは、「そんなの簡単よ。タイムマシンで調べれば直ぐに解るわよ。」と返答しました。
陽子は、「それじゃ、コスモスさん、今度の週末、修は勤務だから、その時に調べに行きましょうか?」と提案しました。
コスモスは、「どこへ行くの?そんな事は、自宅で簡単に調べられるわよ。」と返答しました。
陽子は、「マンションの部屋の中でどうやって、調べるの?」と不思議そうでした。
コスモスは、「それは、その時に教えるよ。」と返答しました。
事件現場に到着した佐藤刑事が、実際にエレベーターに乗り確認すると、確かにエレベーターの中からは、地面は確認できませんでした。
佐藤刑事は、“しかし飛び降りたビルは七階建てビルの屋上でしたので、例えばトラックの荷台にクッションを積んでビルの下に停めておくと、確かに直ぐに移動できるが小さい。もし落ちる場所が少しずれると、確実に死ぬな。もっと大きくて、簡単に移動可能な物といえばなんだろう。それが解らないと、このトリックは成立しないな。”と考えていました。
犯人捜しも同時に進められました。もし、これがトリックでしたら、陽子達が飛び降りる様子を見た時間に確実なアリバイがあり、その数時間前にアリバイのない人物が犯人だという事になります。捜査の結果、エレベーターに乗り合わせた客の中で、被害者と利害関係のあった人物が一人いました。その人物は、エレベーターの中で叫んだ女性で、被害者に脅迫されていた為に、まず間違いないと思いましたが、トリックが解けませんでした。今、話を聞いても、惚けられた上、高飛びされる可能性がある為に、暫く泳がしておく事にしました。
次回投稿予定日は、11月17日です。




