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忘却

それから凜が退院するのを待ってから凜と静香が正式に天輪学園に転入した。

そしてその日の最後の授業の後で、

「ええ、では転入生を紹介する。浅上凛さんと佐々木静香さんだ。」

教師の紹介に合わせて2人は軽く会釈をした。

すると講堂が拍手に包まれた。

「では…壬礼航の隣に席が空いているからそこに座ってくれ。

講堂を見渡して席を指定した。

「これからもよろしくお願いしますね、航さん。」

静香が笑顔で挨拶をする。

「うん、よろしくね佐々木さん。」

航も笑顔で挨拶を返した。

2人の自然なやり取り、その中でも静香が航を名前で呼んだ事に講堂中の生徒がどよめいた。

航の近くに座っていた高神涼たかがみりょうが航の肩に腕を回して話しかけてきた。

「おい航、どーゆー事だ?なぜお前があんな美人の転入生と知り合いなんだ?」

全生徒の視線が航に集中する。

「ええと、2人がこの島に来た時にね千尋ちゃ…鳴神学園長からこの島の案内を押し付け…お願いされてね。そこで親しくなったんだ。」その言葉にさらに生徒がどよめいた。

「え、え…な、なに?」

航がそんな講堂の雰囲気に困惑していると、

「航が…あの人畜無害を絵に描いたような壬礼航が…ナンパに成功した…」

「ち、違う!」

「「違います!」」

航と凛と静香の声が重なった。

講堂は笑いに包まれた。「では気をつけてかえれよ。号令!」

「起立、気をつけ、礼。」

『ありがとうこざいましたー』

号令が終わると共に皆が新しいクラスメイトの情報収集を始めた。

もちろん標的となったのは凛や静香だけでなく航もだった。

「ねえねえ、浅上さんはどこから来たの?」

「好きな食べ物は何?メルアド交換しようよ。」

「綺麗な髪だね。シャンプー何使ってるの?」

「霊は何と契約してるんだ?霊装は?」

「おい航、お前本当に彼女たちとはなんともないんだろうなぁ。」

「彼女たちの情報を持っている分全てはけ!」

凛や静香は主に女子に、航は主に男子に包囲されている。

「りょ…涼、助けてくれ…」

「嫌だね。めんどい。」

航は彼に嫉妬の眼差しを向ける男子の隙間から涼に助けを求めた。

「今度飯を奢るから~」

「本当だな。」

「本当だよ~」

「では仕方がない。『ルシファー』!」

涼が自らの霊の真名を告げた。

その瞬間彼から爆発的な魔力が放たれた。

その魔力はクラスメイトの意識を一瞬刈り取った。

「すまない!」

その隙に航は急に固まったクラスメイトに驚いている凛と静香の手を取って講堂を後にした。「……あれ?オイ!航がいねぇぞ!!」

「浅上さん?どこ~!」

「佐々木さんはどこに行った!」

硬直が解けたクラスメイトが3人を探して同じく講堂を後にした。



「ハアハア…ここまで来れば大丈夫だろ。お二人さん大丈夫かい?」

「ええ…まあ…」

「た、多分 」

4人が居るのは講堂から少し離れたベンチである。ここは丁度建物の影になっていて見つかりにくいそうだ。

涼はポケットから財布を取り出し、その中から1000円札を抜き取った。

「喉が乾いただろ。お二人さん、そこの購買で好きな飲み物でも買ってきてくれ。コイツと俺の分も頼む。」

涼が差し出した札を受け取り、凛と静香は購買に向かって走り出した。

それを確認してから涼は航に話しかけた。

「オイ航、あの2人はなんだ?」

涼がこのような質問をしたのは講堂での事に違和感を覚えたからだ。

そしてそれは航も分かっていた。

「なんで涼の魔力をぶつけられても意識が硬直しなっかた…かい?」

「ああ」

涼が放った魔力はクラスメイト全員の意識を一時的に刈り取るレベルのものだった。

それは防御系統の力を持った霊と契約した帯刀者、さらには講師も対象とするぐらいのものだった。

「航、もしかしたらあの2人お前と同じなんじゃ…」

涼は航の秘密を知る数少ない人間の一人だ。だが、

「いや、それはない。僕も千尋ちゃんに同じ事を言ったけど否定された」

2人共霊と契約している。故に航と同じでは無い。それが千尋の見解だった。

「そうか…まあ学園長が言うんならそうなんだろうな」

涼も納得したようにベンチに座った。

するとペットボトルを2本ずつ持った凛と静香が購買から戻って来た。

「何の話をしてたんですか?」

凜がお茶を渡しながら涼に尋ねた。

「ん~、2人共可愛いな~てゆー話」

涼が笑顔で返す。

「そんな…可愛いなんて…えへへ」

凜が照れたようにリアクションをとった。静香も俯いているが顔が赤くなっている。

そう、こんな人が僕と同じ訳が無い。

航は強く自分に言い聞かせた。

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