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【書籍化】わたしはたまごで異世界無双する!  作者: 葉月クロル
おまけ話『魔剣・紅蓮の神影』

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幕間・人騒がせな神のところでバイトしてた話

お久しぶりです。

閑話?

つなぎ?

そんな感じの話を投稿します。

「リカさん、あとここを縫えば大丈夫です」


「おっけー」


 わたしは両手に力を入れて『世界の隙間』をぐいっと引き寄せ、『カミィ』ことこの世界の神が縫い合わせやすいようにした。


 勤労女子高生であるわたしは、美味しい卵料理が売りのカフェでもバイトをしているし、結構楽しい職場なんだけど、たまに突発でこっちでも働いているんだ。


 ぶっちゃけ、カフェのウエイトレスは、ウルトラスーパー可愛いわたしでなくてもなんとかできるんだけどさ、こっちのバイトはものすごく特殊なため、できる人間が限られているんだよ。

 『世界の隙間』を掴むというのはものすごく強い精神力がないとできないらしいよ。

 今のところは、このわたしと、ビルテンという異世界の町で冒険者ギルドの職員をしているライルお兄ちゃんにしかできないんだって。世界に2人だけなんて、すごくない?

 なので、カミィに呼ばれて、こんな感じでちょいちょい手伝いに来ている。


(あ、ずっと『神』と呼んでいたんだけど、「なんだかよそよそしいからカミィと呼んでください! せっかく友達になったんだから!」と半泣きで言われたから、仕方がないのでカミィと呼んでいる。あと、いつから友達になったの? って聞くのも控えている)


(これは、あんまりカミィの気持ちを傷つけて地球規模の災害が起きたら困るので、という賢いライルお兄ちゃんのアドバイスなのだ。お兄ちゃんはフツメンだけど、強くて頭も良くて仕事もできるイケメンなんだよ。限りなくツンが多いツンデレなのが玉に瑕なんだけど、たまごへの愛の裏返しだから仕方がないよね)


「まいどー。これでしばらくはもつかな? カミィの縫い方も最初に比べてかなり上達したね。縫い目がしっかりしているよ、このままかばん屋さんになれるんじゃない?」


「ふふっ、そうですか? 帆布のかばんでも作って、他の神々に売ってみましょうか」


「それ、収納無限の加護を付けたら、異世界で人気が出るんじゃないの?」


「いいですね! なんか、アーティファクトっぽくてカッコいいですね」


「売れたらアイデア料も弾んでね」


 わたしはかなり厚みのあるお札を受け取りながら言った。

 これはそのまま貯金して、大学に進学する時に使うんだ。うちには弟もいるからさー、学費がけっこうかかると思うんだよ。自分のことはなるべく自分でやっておきたいからね。

 わたしって、マジ娘の鑑だね!


 いろいろ不手際があって、世界にたくさんの破れ目を作ってしまったカミィは、あちこちを一生懸命に縫って直してきたんだよ。面倒に思えるけど、これを元のように作り直すとなると、一旦世界を消滅させないといけないんだってさ。そんなことをされたら、こっちはたまったもんじゃないからね。


「そうですね、売れたら弾みますよ」


 お金なんて、神にはあってないようなものだけど、きちんとした対価なく渡すと人間として堕落するからダメなんだって。


「これで終わりですね。あとは、世界が自動修復してうまく破れ目がくっついていくでしょう」


 金髪で、髪の色以外(ライルお兄ちゃんは茶髪だからね)はライルお兄ちゃんにそっくりな姿になった神は「ふう」と言いながら額を拭った。

 汗をかかない存在なのに、ちょっと人間くさいアピールなんかしちゃってる。


 ちなみに、神の設定では、カミィは『ライルお兄ちゃんの双子の弟』という立ち位置らしい。

 でも、神がフツメンだけどイケメンのライルお兄ちゃんに変身しても、ふたりをよく知ってるわたしにはまったくの別人に感じるよ。


 元の地球に戻る時に落とさないように、お札をしっかりと握りしめたわたしは言った。


「そっか。じゃあ、わたしのバイトももうおしまいだね。稼がせてもらってよかったよ。ってことは、もうここにも来なくて……ちょっと! なにやってんのよ、神! カミィ!」


「ほら、まだここに裂け目が……残って……」


 うずくまった神がとんでもないことをしているのを見て、わたしは慌てた。


「残ってないよ、全部縫ったよ!」


 わたしは、せっかく縫った破れ目に指を引っ掛けて、直り始めた裂け目をまた破こうとしているアホ神の手を掴んでバンザイさせた。


「こら! めっ!」


 大丈夫、しっかりと縫われた裂け目は無事だったよ!


「だって、も、もう一度破らないと、リカさんもライルくんも、ここに来てくれなくなってしまうってことだから……」


 カミィこと神は、目をうるうるさせて俯いた。


「だからって破るのはやめなよ! あんたは『八百屋お七』かよ! 破れ目を直しに来なくても、うちらと全然普通に遊べばいいじゃん、ライルお兄ちゃんも、わたしも、弟のヒロだってカミィとなら一緒に遊ぶし! みんなカミィとは友達じゃんか! もう、神ってば……大きな力を持っているくせに、なんでそうおバカさんなことをするのかなあ……」


「力があっても……わたしは、孤独、なんです……う……」


 大人(?)がマジ泣きしちゃってる。


 ヤバいな。

 神々の間で友達の少ないらしいこの神は、寂しくてちょっと病んじゃってるのかもしれないや。

 まったくもう、手のかかる弟ができたような気分だよ。

 本当の弟のヒロはしっかり者でつまらないから、まあ、いいけどさ。


「そんなにブルーにならないでよ。わたしがたまごだったら、ここで『すごいプリンアラモード』でも出してやるんだけどさ。あれは、どんなに落ち込んだ気持ちでもすぐに落ち着かせてくれる、すごく効くたまごの薬だからね。でも、非力な美少女女子高生じゃ、あんたになんにもしてやれないよ」


「……ありがとうございます、リカさん。お気持ちは受け取っておきます」


 神がしょんぼりしているので、仕方なくわたしは頭を撫でて慰めてやった。


「よしよし、よーしよしよし……おっ⁉︎」


 神が段々小さくなり、最後は子犬くらいの大きさに縮んでしまったので、わたしはしゃがんで頭を撫でなければならなくなった。


 ってゆーか、全身が毛でモフモフした生き物になってるよ!

 そこまでかまって欲しいの?


 それとも、女子高生のお膝の上を狙っているの?


「カミィ、そんなに縮んだら毛がふさふさした……毛虫になっちゃうよ。え、やだな、触りたくないな」


「そこまでは縮みませんよ! いえね、なんだか心が寒くなってしまって……このままでは、世界を維持する自信がなくなりました」


「あんた、なんてことを言い出すの!」


「実際のところ、神って繊細な存在なんですよ……」


 今や白い狼の子にしか見えないカミィが、こてんと首を傾げた。

 あざといな!

 で、縮みすぎなくてよかったな!


「この前の『アイドル選手権』も、神としてのテンションを維持するための大切なイベントだったんです。ワクワクすることがないと、わたしたちは世界を支えることができなくなって……実は、結構な数の世界が消滅しているんですよ。消滅する方はなにも知らずに消えていくから、このことは神たちしか知らないんですけどね……はは……」


 わあ、物騒な秘密を聞かされちゃったよ!


「そんなの困るよ、どうすんの? テンションを上げるためにうちらとキャンプでもしてみる? しっかりしなよ、地球を消滅させないでよ、今までなんのために力を合わせて世界の破れ目を繕ってきたの!」


 わたしはカミィを叱咤した。しかし、子狼になりきったカミィは可愛らしくクーンと鳴いてから、わたしを上目遣いで見て言った。


「キャンプくらいでは、わたしの『ブリザードなう』な心は温まりません。これはもう、神獣カミィを連れた女子高生が異世界に転移して、波乱万丈な冒険を繰り広げるくらいの、インパクトのあるイベントを……あ……」


 カミィは、なにかに耳を傾けた。


「……どうしたの?」


「今、ナイスなタイミングで神への祈りが届きました。……ふっ、なかなかやってくれますね……」


 カミィの瞳から光線が出て(これ、なんかのレトロなアニメの真似っこじゃない?)空中にスクリーンが浮かび上がった。そこには、跪いて祈りのポーズになった人々と、あれ? あれれ?

 こっちに向かって、笑顔で手のひらをひらひらしているライルお兄ちゃんがいるんだけど。口は「久しぶりですねー、お元気ですかー」なんて形に動いてる。

 周りの人はみんな俯いてるから、お兄ちゃんの行動に気づいてないみたいなのが笑えるね。


「わーい、ライルお兄ちゃんだ! お兄ちゃん、久しぶりー! 可愛い妹分のリカだよー。って、ねえ、音声を繋げてよ」


「ふっ……ふふふ、アニキに頼まれちゃ、断るわけにはいきませんからね、HAHAHA」


「わっ、カミィがアメリカンな青年バージョンになってるよ!」


 子狼だったカミィは、いつの間にか人間の姿に戻っていた。

 どうやらテンションが上がったようだ。

 白いTシャツにジーパン姿だから、お気に入りの『アメリカから日本にやって来たライルの双子の弟カミィ』っていう設定だね。まったく、フリーダムな神なんだから。


「というわけで、リカさんには神の使徒として一仕事してもらいます」


「どういうわけだよ、ちょっと、勝手に決めないでよね」


「ワクワクしますね、テンションが上がって来ましたよ! あ、今回のバイト料と、このミッションの報酬は、リカさんの机の引き出しに転送しておきますからね」


「報酬くれるの?」


「もちろんです」


「よっしゃあ!」


 ここで儲けて、がっちり貯めとくよ!


「じゃあ、変身してください。スマホは持ってますよね」


「うん。……えっ、あれをやれっていうの?」


「ワクワクしますね、ジャパニーズ美少女変身アニメ、最高にワクワクしますね」


 そんなことでテンションが上がるのかよ!

 世界の存続は美少女アニメにかかってるのかよ!


「……仕方がないなあ、わかったよ、もう。世界を滅亡から救うためだからね」


 わたしはため息まじりにスマホをポケットから出すと、頭上に掲げて叫んだ。


「『愛のたまご戦士ーっ、ミラクルフォーーームアーーーップ!』あーもうっ、本当に超ダサい変身コールだよー」


「リカさん、素晴らしいです、HAHAHAHAHAHAーッ!」


 そしてわたしの身体は、卵色の光に包まれた。

続きを書く気はあります!

これを書いておけば、すぐに話がつながって再開できますからね。

でも、今ちょっと忙しいの。

気長にお待ちくださいませ。

忘れた頃にやって来るのがたまごですからね〜、てへ(*´ω`*)

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