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The Third Eyes  作者: WAIESU
37/40

夢幻戦夜(E)



      □


「もう始まっていたか」


 古びた屋根の上、二つの人影が眼下の光景を見ている。

「だが、少し様子がおかしいな。最後の一人になったところを襲うか? フォード」

 声をかけられても、秀麗な顔は彫刻のように微動だにせず、フォードは事務的な口調で答えた。

「このまま俺一人で片付ける」

「……本気か? 一応相手はハンターだぞ? 弱いやつばかりとは限らない」

 忠告を投げてくる男――――イヴァンを無視して、フォードは屋根から飛び降りた。

 首から提げた銀の十字架が、夜に映えている。



 真円の月を背後に、『深海の水龍』が舞い降りる。



 フォードは右手に持つ剣に力を込めた。


 着地地点は金髪で槍を持った男のすぐ背後。


 相手は眼前のハンター達に気を取られているようで、上空のこちらには気付いていないようだった。

(……まず一人)

 狙いを定め、落下の勢いを利用して剣を振り下ろす―――――


 刃が、標的の肩から腰までを一直線に深く切り裂く……はずだった。


「――――!!!」

 が、寸前で相手は背中を見せたまま右に倒れ転んだ。

(避けただと……?)

 こちらの気配を感じ取ったのだろうか。まさかこの完全な不意打ちが、かすりもせず避けられるとは思っていなかった。

 しかもよく見ると、当の相手は……自分と同じ位の少年だった。


「誰、だ……!?」


 少年が警戒しながらすっと立ち上がり、槍の穂先を向ける。

「よく避けたな。だが次は無い」

 フォードは冷酷な声音で言い放った。少年はというとフォードの持つ剣を凝視している。

「その剣……魔剣か」

 おそらく誰もが、始めてその剣を見れば視線を奪われるだろう。

 フォードの持つ剣はバスタードソードという種類に入る。

 片手でも両手でも使えるという適度な重量に、切りと突きどちらもバランスの取れた威力を発揮する長めの刀身。欠点を挙げるならば中途半端な性能というところだが、使用者によってはそんな欠点などいくらでも補える。


 そして何より、彼の剣は普通の剣ではなかった。

 刀身が青白く発光しているのだ。



『アイスコフィン』。



 溶けることのない氷河の結晶が、永い時を経て剣の形になったと伝わる――――魔剣。


 名称や能力までは知らないだろうが、間近で剣を見た周囲のハンター達の顔つきがすぐに変化する。


 ――――あの剣は、とんでもない大金になる。


「あはははは! いきなり割り込むなんて、ずるがしこいねえ!」

 と、いつの間にかフォードの後ろに回りこんだ女が腕を彼の前に回し、首に短剣を突きつけた。

「あんた、まだ若いけどいい男じゃない。傷つけるのは勿体ないわね。……そうねえ良い男に免じて……その剣をくれれば見逃してあげるわ……。あっ、でも、ここで組むのもありねぇ……」

 フフ、と笑いながら首筋に息を吹き付ける。



「…………」

 フォードは黙っていた。当然、怯えたからではない。


 次の瞬間。




 ――――短剣を突きつけていた女の手首が消えた。




「へ――――!?」



 紅い雫がぽたりと垂れ、女が間抜けな声をあげる。

 手首は地面に落ちていた。


「愚かだな」


 淡々と呟いて、

 フォードは、放心状態の女を振り向きざまに剣で一閃した。



 悲鳴も上がらずに、ぼとりと、女の首が落ちる。


 ――――そしてそのまま、


 瞬速といえる斬撃で他のハンター達を切り伏せ始めた。


 

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