妖狐の幻惑《ようこのげんわく》
両者に対して権威をもつ存在が突然霧の中から現れた。雷蔵と雷神にとって、それが偽物であると分かっていても、やはり、攻撃するには恐れ多い見た目ではある。雷神はただでさえ大きな眼をさらに大きく見開き、こめかみにあったのと同じような青筋が額と頭頂部付近にまで浮かび上がるほどに怒気をまき散らし、怒り心頭に達していた。一方、雷蔵は自分の目の前にいる人物が誰だかわからなかった。非常によく見知った人物であるような気がするのだが、さりとてそれが誰なのかはさっぱり思い出せないのだ。片や怒り心頭、片や困惑と言った状態で棒立ちになっている二人に幻の風神と幻の武将がそれぞれの武器を振りかざし滑るように近づいてくるのだった。
「侮りおって!!」と言う怒号を上げながら雷神は雷撃を乱れ撃ちにし始めた、だが、冷静さを失った彼の攻撃は命中精度があまりにも低すぎて、白狐たちはあざ笑うかのようにそれをふわりふわりと躱していくのだった。一方、雷蔵はいまだに戸惑っていた。知っているはずなのに誰なのかわからない、その考えがまとまらないうちに、その人物の像が振り下ろす太刀筋と同じ場所から敵の殺気が飛んでくるので、その殺気に応じて自分の太刀を合わせて敵の攻撃を相殺するだけの防戦一方になっていた。5~6合ほど打ち合ってから、思い悩んでも詮無きことと気を取り直して迎撃に専念し始めるのだった。
|しかし、かれこれ長い時間切り結んでいるのに一向に勝負はつかなかった。その武将の姿は幻術によるものだと頭ではわかっていても、視界の縁に少しでも見えてしまうと、体が否応なく反応してしまうのだ。そのすきに、あらぬ方向から突然半尺ほどの長さの鋼鉄をも引き裂くであろうと思わせるような凶悪な爪がシュっと空を切り、油断も隙もなかった。白狐たちの幻術は、囮となる幻の何かの像を見せつつ、自分たち本体を認識できなくさせるものだった。つまり、只人であれば何もないところから突然白狐の前足が出てきて斬りつけてくるという極めて不利な戦況なのだ。ところが、片や神で片や半人半神の者なのだ、雷神には白狐たちの姿がおぼろげに見えていたし、雷蔵に白狐たちの全身は認識できなかったが、なんとなくそこにいるという強い感覚と確信があった。だからこそ、雷蔵は白狐たちの攻撃をただひたすら受け流していたし、冷静さを失った雷神は白狐たちに雷撃を乱発してばかりいた。
しかし、いくら神格を持つ者同士とて、現世に顕現している以上肉体があり、肉体がある以上生命力と精力という力の限界もある。白狐たちも疲れ始めていたが、雷蔵と雷神も疲れ始めていた。雷蔵も雷神も肩で息をするようになった頃、突如として幻像が消えた。それと同時に、白狐たちは6間ほど離れた場所まで飛び退いてから幻術を完全解除してその姿を現した。その直後、不意に雷神が後ろに振り返った。彼が何かに気付いたかのように振り向いた刹那、白狐たちも雷神が振り向いた先に注目し始めたのだった。この光景を不思議に思った雷蔵も両者につられて振り返ると、そこには、茂みの中からまるまるとした体をはみ出しておきながら隠れたつもりでいる様子の琵琶姫が見えた。そして、雷蔵は彼女と目が合ってしまった。
本文を確認しました。校正で数点、誤字と思われる箇所、および時代考証のご確認をお願いしたい箇所がございます。
## 校正確認事項
**①「雷撃を乱れ内にし始めた」**
→ 文脈上、「乱れ撃ち」の誤字・脱字と思われます。
- A. 「乱れ撃ちにし始めた」に修正する
- B. 「乱れ内」のまま残す(意図的な表現として)
**②「そのさっきに応じて」**
→ 直前に「敵の殺気が飛んでくる」とあるため、「その殺気に応じて」の誤字と思われます。
- A. 「その殺気に応じて」に修正する
- B. 「そのさっき」のまま残す
**③「5~6号ほど打ち合ってから」**
→ 剣術用語「合」の既存ルール(1合目、3合ほど切り結び)、および全角数字統一ルールに基づくと、「5~6合ほど」になると思われます。
- A. 「5~6合ほど」に修正する(全角数字+「合」に統一)
- B. 半角のまま「5~6号」を維持する
## 時代考証に関するご確認(新規追加ルールに基づく)
**④「くよくよ考えても仕方がないと、気を取り直して迎撃に専念し始めるのだった」**
→ 雷蔵の内心の感想部分ですが、「くよくよ」という表現がやや口語的・現代的に感じられます。室町前期の武士の内面描写として、以下のいずれかをお選びください。
- A. 時代背景になじむ表現に変更する(例:「思い悩んでも詮無きこと」等)
- B. 「くよくよ」のまま残す
ご指示いただき次第、ルビ振り済みの本文を出力いたします。
1.A,2.A,3.A,4.A
ご指示ありがとうございます。以下の内容で確定し、処理いたしました。
**確定した修正内容**
1. 「雷撃を乱れ内にし始めた」→「雷撃を乱れ撃ちにし始めた」
2. 「そのさっきに応じて」→「その殺気に応じて」
3. 「5~6号ほど打ち合ってから」→「5~6合ほど打ち合ってから」
4. 「くよくよ考えても仕方がないと」→「思い悩んでも詮無きことと」(時代考証・室町前期の武士の内面描写として)
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**ルビ振り済み本文**
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大変申し訳ございません、④の修正が本文の反映漏れとなっておりました。訂正版を改めてお送りいたします。
**訂正箇所(本文中)**
「5~6合ほど打ち合ってから**思い悩んでも詮無きことと**、気を取り直して迎撃に専念し始めるのだった。」
上記の一文で差し替えをお願いいたします。大変失礼いたしました。
訂正箇所を差し替え済みのもので再表示してください
**ルビ振り済み本文(訂正版)**
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ご確認をお願いいたします。他に修正箇所がございましたらお知らせください。
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本文を確認しました。ルビ振りの前に、1点誤字の可能性についてご確認をお願いいたします。
## 校正確認事項
**「雷蔵に白狐たちの前身は認識できなかったが」**
→ 文脈上(直前で「姿がおぼろげに見えていた」という記述との対比)、「前身」(前世・以前の姿の意)ではなく、「姿」または「正体」の誤字ではないかと思われます。
- A. 「姿」に修正する(雷蔵に白狐たちの姿は認識できなかったが)
- B. 「正体」に修正する(雷蔵に白狐たちの正体は認識できなかったが)
- C. 「前身」のまま残す(意図的な表現として)
なお、「6間ほど離れた場所」の部分は、既存ルール(数字+単位でまとめてルビ)に基づき「6間」として処理予定です。
ご指示いただき次第、ルビ振り済みの本文を出力いたします。
「前身」ではなく「全身」でした。誤変換に気付きませんでした。6間は「ろっけん」で間違いありません。
ご確認ありがとうございます。承知しました。
**確定した修正内容**
「雷蔵に白狐たちの前身は認識できなかったが」→「雷蔵に白狐たちの**全身**は認識できなかったが」(誤変換の修正)
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**ルビ振り済み本文**
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冒頭部分にルビ振り漏れがございました。訂正版を再表示いたします。
|しかし、かれこれ長い時間切り結んでいるのに一向に勝負はつかなかった。
上記の一文で先頭部分を差し替えてください。大変失礼いたしました。




