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*Ⅷ*

二人ともカバンから包丁を取り出した。その包丁の柄には滑り止めのタオルが巻かれていた。それによって、この自決の本気を二人は改めて理解した。2-Bの教室の後ろ、ウィルは廊下側、糸目は窓側の両端に立った。グズグズしてはならぬ、気後れしてはならぬ。二人は右の腰骨で包丁を構えると、えいやーっ! というかけ声でお互いに突進し、ぶつかった。ウィルの方が体格がよく糸目が一瞬浮くような感覚があったが、お互いの刃は腹部にざっくと刺さった。痛みと熱さと途方も無い違和感で気が狂れそうだった。刃を引き抜いて少し後退りすると糸目ががむしゃらに切りつけてきた。ウィルも負けじと糸目を切りつけた。昂奮状態で何が何だかわからず、その振り回した刃も当たっていたかどうかわからない。しかし、お互いが血塗れで腹膜が露出していることはわかった。それは赤く赤かった。しかしその乱闘は二分と持たなかった。怠さとか、眠たさとか、疲れとか、重さとか、痛みとか、熱っぽさなどで、二人は動きたくなくなり、肩を寄せ合って床にへたりこんだ。

"あのさ、お前さ。俺のこと好きだろ。"

 ウィルが言った。

"アホ。そんなわけないだろ。"

 糸目が言った。

 二人は頭をコツンとぶつけ合って笑った。


 それから少し経ってクラス担任が二人を見つけて悲鳴をあげた。二人の死因は失血死だった。




ー了ー

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