*Ⅰ*
中学生のウィルは反戦デモに参加していた、しかし偉い政治家先生はそれをごっこ遊びだと言ったそうである。だがそれが反戦だろうが軍拡だろうがこの国の政治というものがごっこ遊び以上の瞬間だったことなど、どれくらいあるというのか彼は疑っていた。政治家先生一人一人はとても立派な人であろうはずなのに、どうしてみんなで集まると衆愚ともいえる状態になってしまうのか。要するにデモでも政治でも、その内部に確固たる実体、というものをウィルは感じることができなかったのだ。それなら、自分のクラスで行われる学級活動の話し合いの方が彼にとってははるかに実体の伴ったものだった。無論、これはまだ彼が世間知らずであり、成熟した見識を持っていないための生意気と言えたかもしれないが、SNSに代表される言論の空間というもので、大人の未熟な、あまりに未熟な振る舞いというもの、そしてそれを制御できず野放しにしている大人というものに、失望というか、あきれ、のようなものをティーンエイジャーが感じずにいられる方が難しいだろう。その、大人の未熟なSNSに、一緒になって踊るか、踊らないか。ウィルは後者になった。そんな彼の厳しい目には、反戦デモも大人の未熟なごっこ遊びだし、偉い政治も未熟なごっこ遊びだし、軍拡も未熟なごっこ遊びだし、SNSも未熟なごっこ遊びであった。ウィルは叫んだ。では実体はどこにある! 揺らぐことのない、真に最善たる実体はどこにある! しかし彼はそれを感じ取れる程、成熟しているかどうかも怪しい。彼はまだ中学生だった。




