水を求めて②
何故かゴブリンとの戦闘。
デカいゴブリンは、余裕の顔つきで私を見ている・・・・・
さっき投げつけたゴブリンのダメージは無さそうだな。
槍のような木の棒を構えながら近寄ってきた兵士ゴブリンに手斧を叩きつけ一旦地面に手斧を落とす。
腰のナイフから刃厚が太い丈夫そうなナイフを取り出す。
手斧じゃ、重すぎて早く触れない。リーチが短くなるが、ナイフで手数を増やして、傷を増やしていくしかなさそうだな。
試しとばかりにデカいゴブリンに走り寄り、切りつけ通り過ぎる。観察してみると、傷は浅いが血が出ておりすぐに治るとかなさそうだ。
そんな事を考えていたら、デカいゴブリンが手に持った杖のようなもので殴りかかってきた。杖とは思ったが、細い丸太のようなものだが、殴られれば、数回で死にそうになるほど固い木だ。かろうじて躱して、さっきよりも深めの傷を作って離れる。
動きも速さも何とか躱せるし、反撃も出来る・・・後は、アイツがどれだけ失血と体力があるかか。心は、凪の様に静かになりながら冷静に分析し、一撃離脱を繰り返しながら、次はどこに切りつけるか思考していく。
少しイラつくのかさっきまでの余裕そうな顔つきが、段々変わってきた。人に近い形状のため、弱点は同じだろうし・・・・片手での切りつけばかりだったので、次は突き刺すこともしよう。
足を中心に攻め立てよう。雑兵ゴブリンや兵士ゴブリンが数匹近寄って来るのを両手のナイフで切りつけ、蹴りを放ち距離を取りながら、デカいゴブリンの動きも観察する。デカいゴブリンは、仲間のゴブリンごと私にも攻撃をしてくるので、注意しながら周りのゴブリンも傷つけていく。深めの傷を負ったものは、まだ生きているが、少しづつ死に向かっていく・・・・
漫画やテレビの様に行儀よく1体づつ襲ってくれる訳ではない。周りをすべて倒すか、自分が倒されて殺されるか、生か死かの2択しかこの場にない。周りのゴブリンは、自分たちの付き従うデカいゴブリンが勝つのが当然かのように、逃走するものはまだない。無論私にももう逃げ道はほぼ無い。
デカいだけあって、威力は大きいが、早さは無い・・・・もっと機動力を潰さないと・・・軸足になる左足に切り傷と刺突を繰り返し傷を増やしていく。
「はぁ~致命傷にほど遠いな。」
皮膚も筋肉も雑兵や兵士ゴブリンよりも強く固いため深手にならない。呼吸を整えながら、膝裏にナイフを突き立てるため、間合いを図る。左手のナイフを逆手持ちに変え、覚悟を決め、幾度目になるのか突撃をする。
目の前の丸太を躱し、ヤツの懐に潜り込み右のナイフで表側の太ももに深めの切り傷を作り、左のナイフを膝裏に突き立てる。左手で私を捕まえようとしてきたため、ナイフから手を放し、走り抜ける。腰のベルトから攻撃力の高いフルタングのナイフを抜く。攻撃的に使えるナイフは、後、一本ぐらいか・・・・
さすがに膝裏への刺突は、効果があったようで、動きにぎこちなさが現れてくる。膝下に力が入りづらいため、立ち上がる動きが各段に遅くなった。丸太の攻撃を避けながら、左手の内側、手首、肘、わきの下に刺突を行い、握力や左手自体を弱めていく。ヤツは、左側のバランスが崩れ、攻撃力自体も若干だが、下がっている。今度は、右側の手と足を同時に攻めていった・・・・
単発的に兵士や雑兵のゴブリンも襲ってくるが、大分、デカいゴブリンも弱ってきている。そろそろ、仕留めきれる。ヤツは、もう立ち上がることは出来ず、膝をついたまま、丸太を振り回す。右手の甲にナイフを突き立て、とうとう丸太も握れなくなり、手からすっぽ抜けていく。丸太はそのまま、配下のゴブリンを数体巻き添えにして、遠く離れた。
ヤツの背後に立ち、右目と左の首にナイフを突き立てる。頸動脈が切れたのか、大量の血が噴き出してくる。右目に突き立てたナイフも眼球から脳に達したのか、ヤツから生命力が抜け落ちていく。ナイフを引き抜いたとき、ヤツの右目も一緒について来た。すぐに抜き去って、周りのゴブリンがいないか確かめていく。遠くで動いているゴブリンらしき影は見えるが、近くのものは、動かない。
「勝てたか。」
そう呟いて、ヤツの左膝裏に突き刺したナイフも引き抜く。途中落とした手斧も回収し、気絶した少女のもとに向かうと、かろうじて息はしていたが、意識はまだ戻っていない。
『レベルアップしました』
そんなアナウンスが聞こえてきた・・・・
地面が振動してる。こんなときに地震か・・・・そう思っていると、突如足元の地面がひび割れて、裂け目が広がっていく・・・・少女を抱え、母親と思しき女性の元へ駆け込む。走った揺れで少女の意識が戻っていた。
少女を下ろしたが、フラつくのか、母親の前で座り込む。少女が母親に抱き着くが、母親は、いつの間にか、背後から木で出来た槍で突き刺されて絶命していた・・・・
少女に声をかけようとしたが、彼女は、真っ赤に染まった両手を見て絶叫し、すでに息をしていない母親にしがみつく。地面の裂け目はどんどんひどくなり、崩落していく。
このままだと危ないと思い、少女に声をかける。
「なぁ、このままだと君も危ないぞ。」
「・・・・・・もういい。」
微かにそう言い、少女は、そのまま母親と共に地面の裂け目に落ちていった・・・・・
やりきれない思いをしながら校門の出口へと走り抜ける・・・・
小学校があった区域は、崩落し、深さが数百メールもある巨大な窪地になっていた。底から水が湧きだしてきて、あっという間に池になっていった・・・・・
水はありがたいが、どうしようもないやるせない気持ちが残った。誰も救えず、一人生き残ってしまった。逃げ出した人たちも、ゴブリンに全員殺されて、ゴブリンごと地面の崩壊に巻き込まれて、死体一つ残っていない。せめてもの思いを込め、傍にある木を切り倒して、校門の前に大きな墓標を作る。
リュックから水を入れる折り畳みポリタンクと水筒を取り出し、水を汲む。
プラスチックの簡易コップにその水を注ぎ、紙皿に黄金林檎一つとおにぎりを一つお供えとして墓標の前に置く。簡易的な葬式を済ませ、家に帰る。
その日は、もう何もする気にはなれず、残っていたウィスキーを煽り、眠りに付く。
水を得られたが・・・・




