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恋人未満、スキャンダル以上——これは恋じゃない。ホラーです。  作者: さくらしゅう
後日談

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第77話 恋が結ぶとき



 週末になり、ついに約束の日が訪れた。

 現在、小晴は拓也の自宅に来ていて、クッションの上に身を固まらせて座っている。石像のようにカチコチな小晴をみて、拓也はバレないように小さく笑った。


「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ」


 小晴の緊張を和らげてあげたくて、声を掛ける。しかし、そんな言葉で彼女の緊張が解れることはなさそうだと拓也は始めから分かっていた。たぶん小晴はこれからこの部屋で何をするのか考えすぎておかしくなっている。


 それもそれで愛おしいが、このままでは小晴が不憫だ。なぜなら彼女の挙動は、部屋に招き入れた時からではなく、待ち合わせの段階から明らかに変だったからだ。いや、今日だけではない。週末の約束を取り付けてからずっと、そわそわと落ち着きのない様子で変に意識しているんだと分かりやすかった。


「っ、し、して、してないよ」


 完全に吃っている小晴は、可愛いを通り越して可哀想に見えてくる。

 拓也はベッドに腰掛けて小晴に隣にくるように促した。ロボットかとツッコミたくなる動きで腰を下ろした小晴の髪をまずは優しく撫でた。軽くキスをすると一生懸命合わせようと、また体に力が入る。そのまま華奢な肩を抱き寄せて、ポンポンと子供をあやすように背中を軽く叩いた。


「ほんとに大丈夫だから。絶対痛くしないし、大事にするよ。俺に任せてくれない?」


 初めての不安を取り除けるように優しく言葉を紡ぐ。


「それに、今日最後までするわけじゃないからさ」


 たぶん、いや確実に最後まですると思っていそうな小晴に告げた。本音を言えば、事が上手くいけば最後までしてもいい、というかしたかったけれど、今の小晴を見たらそんな気は起きない。案の定、小晴はびっくりしていた。大人しく抱きしめられていた体を離して、零れ落ちそうなほど丸くした瞳で拓也の顔を覗く。


「し、しない、の?」


 その中に微かな安心と怯え、落胆など色んな感情がない交ぜになっている。


「うん。急には小晴も怖いでしょ?」

「で、でも」


 言い淀む小晴は、何かに怯えているように見えたが、何がそんなに心配なのか分からず拓也は頭を捻った。思いつかないので、とりあえず小晴が言葉を紡いでくれるのを待とうと視線を下げた小晴を目で追った。


 しばし無言の時間が流れる。その間に、小晴は話す覚悟を持ったらしい。子うさぎのような目で拓也を見上げ、唇を震わせながら口を開いた。


「わ、私が…その。お、女の人として、あんまり魅力的じゃ、ない?」


 これには拓也もびっくりした。なんでそうなったのか、皆目見当もつかない。


「そんなはずないじゃん。前も伝えたけど、小晴はすごく魅力的だよ」

「で、でも。お、男の人は、その…」


 言葉はよりしどろもどろになり、目が右へ左へ、左から右へ行ったり来たりと泳ぎまくっている。これは、もしかしなくても変な知識を入れてきたのだろうと予想付いた。そして、まず大前提の話を小晴にちゃんとしてあげないといけないと思った。不安そうな小晴に優しく笑いかける。


「あのね。俺、大事にしたいの。小晴の初めて」


 行為を匂わす言葉を伝えると、小晴が恥ずかしそうな顔をする。愛おしくて、拓也は自然と小晴の頬に触れていた。


「ね、だから急ぎたくないんだよ。それに…」


 言いかけて、急にこれから言う言葉が気恥ずかしいことみたい思えて躊躇してしまった。たぶん小晴の空気に当てられたせいだ。不思議そうに見つめられると、余計自分が卑しく思えて視線を逸らす。


「それに…、たぶん物理的に無理だと思うから…」


 気まずい気持ちのまま、かなり遠回しな言い方に変えて言った。


「無理って…?」


 また小晴の瞳が不安で揺れた。言い方に躊躇って分かりづらくしすぎたせいで、小晴がまたあらぬ誤解をしかけている。


「あー、つまり…その…」


 拓也は、片手で目元を覆った。それから、覚悟を決める。


「はいらないと思うんだよね。……うん」


 言い切って、やっぱり心許なくて、誤魔化すように自分に相槌を打つ。


「はいらない?」


 まだわかってない小晴から拓也は完全に視線を逸らした。


「そう。小晴の中に、俺の…うん」


 やっぱり、ど直球には無理だった。なんでこの話をし始めてしまったんだろうと後悔したが、後には引けない。最後まで有耶無耶な言い方をしてしまって、より居た堪れなかった。


 でも、どうやら鈍感な小晴にもやっと意味が通じたらしい。息を飲むと全身を真っ赤に染めて無言の悲鳴をあげた。胸元に飛び込んできた彼女を抱き止めて背中をさする。そんな拓也の耳も赤く色づいていて、とても気恥ずかしそうな顔をしていた。


 こんなにウブな気持ちにさせられたのは、初めてを捨てた日以来な気がすると、拓也もまたむず痒い気持ちを感じていたのだった。




 完。


 最後までお読みいただき、ありがとうございました!!


「恋人未満、スキャンダル以上――これは恋じゃない。ホラーです。」前編、後編ともに無事に完結することができました。

 みなさんにとって、この恋はときめきでしたか? それともホラーでしたか?


 命短し、恋せよ乙女。ときに狂ったって、飲み込まれたって、ちゃんと自分を取り戻せたら、きっと恋は素敵な時間になると信じています!笑

 みなさんも自分のこと一番大切にしてくださいね。


 もしよろしければ、レビューやご感想をお寄せいただけると励みになります。

 この物語が少しでも皆様の心に残っていましたら、書き手としてこの上ない喜びです。

 ここまで作品を読んでくださった皆様に感謝を込めて。


 みなさん。本当にありがと~~~!!!(BIG LOVE)


さくらしゅう

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