表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】自由を取り戻した男娼王子は南溟の楽園で不義の騎士と邂逅する  作者: オリーゼ
南溟の楽園

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/104

夫婦の契りの日(R-15版)

ムーンに掲載した作品のR-18抜きの物です。本編に関わるので一応掲載しておきます。


 年越しから断続的に開催される祭礼と王宮行事の最後の一つ、新年を寿ぐ舞踏会が終わった。

 正装も解かず寝椅子のアームレストにもたれかかったアレックスに、ケインがコーヒーを差し出した。

 ソーサーごと受け取ってカップに口をつけ、アレックスは小さくため息をつく。

「寄る年波には勝てないな」

「新年の予定は消化だ。後は若いのに丸投げしてのんびりしよう」

 コーヒーテーブルに食器を置き、ケインを指で呼び寄せたアレックスはその耳元で囁いた。

「まだ、あと一つ大切なのが残ってるだろ」

「何かあったか?」

 本気で思いあたらないらしい無欲な恋人の頬を撫で、顎を指で絡めて持ち上ると噛み付くように挑発的なキスをしてやる。

「閨始め。フォルトルに夫婦愛と離れぬ運命を誓う大切な儀式だ」

「……俺と?」

 年明けの祭の最終日である今晩は夫婦は交歓をおこなうことと神殿の暦で定められている。

 どれほど不仲な夫婦でも、実際に行為は行わなくても、その日は部屋を共にする。

 だからこそ二人はあえてその日だけは関係を持たないようにしていた。

「後ろめたさがないとは言わないが、生きているパートナーであるお前を大切にしたい。愛しているよ。ケイン」

 今度は優しく唇を触れ合わせ、舌を絡ませ、睦み合ってあがった息と共に顔を離すと目の下を赤くしたケインが言葉もなくアレックスを抱きしめた。

「……いいんだ。無理をしないで。貴方の妻は義母上だけだ」

 しばらくの後に絞り出された言葉にアレックスは首を振る。

「レジーナとの事で自覚した。お前とジーナの事だけは死者への想いよりも優先だ。優しさに甘えて蔑ろにしたくない」

 死者への未練に引きずられ、レジーナを失いかけた。

 そんな事は二度とごめんだ。病の表出で再び彼らを傷つけないとは限らないが、出来るかぎりの事はしたい。

「無理なんてしていない。俺は、お前と、今日のこの日にそういうことがしたいんだ」

 アレックスは言葉に気持ちを込める。

 神に認められる夫婦になる事はできないが、伴侶としてあらためて契りを結ぶまたとない機会だ。

「お前は俺に指輪がわりのピアスをくれたろう。今宵は共に過ごそう。ケイン」

 ためらいがちなケインの腕を引いてソファーに座らせ、アレックスは床に跪いてケインの手を取って彼の指輪にくちづける。

 そして、二人は愛し合い、蕩けるような一夜を過ごした。

 

◆◆◆


 カーテンが音もなく上げられて部屋に光が差し込み、アレックスは眦を擦った。

「殿下。お休みのところ申し訳ありません。昼餐のお時間です」

 はっと身を起こして横を見ると、すでにそこはきっちりと整えられて誰の温もりもなかった。

「ああ、悪い。今日の服だが」

「すでにフィリーベルグ公からご伝言いただき、ご用意させていただいております。間違いございませんか?」

 閨始めの翌朝の服は配偶者が選ぶ。

 その慣例を受けてケインもクローゼットから自分の物を選んでいったらしい。

「ああ、もちろん」

 アレックスは決意と共にガウンを身体から落とし、性交の徴の残る身体を晒した。

 一瞬手を止めた侍従長にかすかに唇をあげて笑みを作りながらアレックスは言った。

「長く仕えてくれているお前には明かす」

「……そのように。公爵閣下にも、これからはお気遣いなくこちらでお過ごしくださいとお伝えください。寝台も私と信頼できる者達で整えさせていただきますので」

「ああ」

「では、お手伝いさせていただきます」

「よろしく」

 今の彼は身支度を手伝う職位ではないが、かつて自分の従者をしていた。

 刺青のこともあり、朝晩の肌を見せる支度の時だけこうして頼んでいる。

 彼の手によって一部の隙もなく典雅に着衣を整えられ、昼餐に向かうと昼餐室の前でケインが待っていた。

「似合っているか?」

「今日の姿は格別だ」

「お前もな」

 当然、ケインの服も事前に自分が選んで彼の部屋に支度させておいた物だ。

 屈託のない笑顔を浮かべたケインに侍従長からの言葉を伝えると、驚きの表情で固まった末に頷いた。

「隠していたままでも良かったんだ」

「リベルタにいた時のように朝日の下でお前の寝顔を見たいんだ。ああ。それと、ヴィル達に俺達の関係を話したい。いいな?」

「まあ、知っているだろうが……」

 ケインの了承をとって昼餐の席についたアレックスは使用人を全て下げ、ヴィルヘルムとリアム、ベアトリクスに二人の関係を報告した。

 げほ、とむせこんだベアトリクスにヴィルヘルムが水を差し出している。

「その様子、二人とも知っていて私だけ蚊帳の外だったって事かしら?」

 眦を上げたベアトリクスの問いにヴィルヘルムは目を逸らした。

「いや、俺も旧都離宮で探らせていた配下から報告されただけだ。口止めはしてある」

「リベルタではお二人が想いあっているのは既知の事でしたし。ソフィアも知っていますよ。お二人が話すまでは僕たちの胸の内で留めようと話していました」

「何でわざわざ言う気になったんだ?」

 ヴィルヘルムの疑問も最もだった。今まで関係を隠してきたのだ。

 メルシアにおけるフォルトル教はずいぶんと形骸化している。

 だがそれでも結婚相手以外との関係は不道徳にあたり、嫡出の子を持てない愛は白眼視されがちだ。

「世間に知らしめるつもりはないよ。私的な事だ。だが身内にすら隠しながら関係を持つのは違うからな。祝福して欲しいわけでもない。だが、私達が愛し合っているのは知っておいて欲しかった」

 自分に来るものは断れるが、親切心でシュミットメイヤーからケインに今、縁談など持ってこられても困る。

「いつからですの? どちらから?」

「きっかけはケインからだ」

 硬い声で尋ねられ、アレックスは包み隠さずリベルタでのなれそめの話をした。

 全て聞き終えて、ベアトリクスは息を吐く。

「そう、そんな事が……。ならばいいのです。初恋が叶って良かったわね。ケイン」

「あ! 姉上!!」

「城から帰ってきた時、きらきら目を輝かせながらエリアス殿下の素晴らしさをずっと語って、熱を上げてましたものね」

「ばらさないでください! じゃなくて、その時のそれはそういった感情ではなかったです!」

 あまり見慣れぬ子供っぽい顔でケインがベアトリクスを止めた。

「いいのよ。隠さなくて。ああ……貴方がやっと昔みたいな顔を見せてくれて嬉しいわ」

「姉上。ご心配をおかけしました。俺は今、幸せです」

 頭を下げたあと、しんみりしているベアトリクスの前で顔を綻ばせる伴侶の姿を見つめて、アレックスもまた小さく微笑んだ。

お読みいただきありがとうございます。

18歳以上でR-18相当シーンが気になる方は番外編に置いてありますのでそちらをお読みください。

ブックマーク、エピソード応援、評価、全てモチベーションになっています。

まだの方はぜひ★★★★★で応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ