第20話 マスクを作ろう
俺は早朝から教会に行くと、既に診療室の前には行列ができており、ダンカンが仕切っている。
ざっと、20人くらいは並んでいそうだな。
「ノワール。やっと来たか。今日は頼んだぞ」
「ああ、どこまで出来るかわからないがやってみるよ」
セーラさんは準備万端で、白衣に口元をガーゼで覆っていた。
「おはよう、セーラさん」
「おはようございます。ノワールさん、今日はよろしくお願いします」
俺は口元をガーゼで覆っているセーラさんに違和感があった。
「セーラさんは口元をガーゼで覆っているが、それは感染防止か?」
「はい、そうですが何か変かしら?」
「ガーゼよりもマスクを付けた方が効果的だ」
「マスク? 初めて聞きますが、どのような物でしょうか?」
やってもうた…… 異世界あるあるだ。
「え――と、マスクはガーゼを重ねて口元を覆うように…… まぁ、実際に一緒に作ったほうが良いな。明日、時間があれば一緒に裁縫ギルドへ行こう」
「はい!! 行きましょう」
セーラさんは飛び切りの笑顔で応える。
まさに白衣の天使だ。セーラさん、可愛いな。
「おい、ノワール。良い感じのところで悪いが、そろそろ診療を始めてくれ」
「ああ、わかった」
俺は色々な患者に、鑑定を駆使して診る。
風邪を引いている者、捻挫や骨折で添え木をしている者、傷口が化膿している者など症状は様々であった。
診察は鑑定により症状を判断して、ハイヒールやハイキュア等で治療する。
これは患者には申し訳ないが、光属性の良い鍛錬になる。
治療後は、セーラさんが症状に合わせて漢方薬のような薬を渡していた。
ざっと、50人ぐらいは治療しただろうか。
獣人以外にも人族やドワーフも交じっていたが、皆を公平に診察した。
「ノワールさん、今日は本当に助かりました。お陰様でお布施を頂いたので、当分運営することができます」
「それは良かった」
「それにしてもノワールさんが使う魔法の効果は凄いです。まるで、神官様が治療しているようでした」
神官と言えば中級クラスだ。おれは下級クラスだけど中級クラス並みの魔法効果があるようだ。
俺のオリジナルスキルの幸運は、こんな効果もあるのか。
◇
カザト邸に戻ると早速、俺はカザトさんにマスクのことを話す。
「カザトさん、マスクもカイトを同じようにマラッカス商会で販売できないでしょうか?」
「それは良いですな。カイトは既に注文が殺到しているので、マスクもきっと良く売れるでしょう」
「それは良かった。販売権ですが、獣人区住居に近い教会にしたい」
「教会ですか?」
「そうです。そこの教会に修道女のセーラさんと言う人がいるので、その人で販売権を登録してほしい」
「難しいですね。既にノワールさんはカイトで販売権の実績があるので、他人に譲渡することができないのです」
「それでは、全権ではなく5割をセーラさんにできませんか? セーラさんの教会は、人族以外にも治療を施していますが、安いお布施しか貰っていないので経営が厳しく手助けをしたい」
「5割ならばできます。それに、そう言う事ならマラッカス商会も全面的にバックアップしましょう」
「ありがとう」
「ところで、そこの教会のセーラさんと言う方はどんな人かしら?」
シェリーさんから聞かれた俺は、気が緩んでいたこともあって、気軽に返事をしてしまった。
「俺よりも少し年上ですが、可愛らしい人で皆からも大変慕われています。明日、マスクの製作について一緒に裁縫ギルドに行く予定です」
と言った瞬間、周りの空気の温度が急激に下がったような感じがした!!
「そうですか、可愛いらしい人ですか…… マスクの製作には私も興味がありますので、娘のソアラも一緒に同行させてくださいね」
駄目だ…… 顔が全然笑っていない。
こんな時はこの人に逆らってはいけない。
「はい!! 是非お願いします」
それを聞いたシェリーさんとソアラちゃんが頷き合う。
どうやら俺の選択は間違っていなく、危機は過ぎ去ったようだ。
カザトさんは我関せずと固まっている……
そんなこんなで夜が更けていくのであった。
翌朝、俺はソアラちゃんと一緒に教会に行く。
「ノワールさん、おはようございます」
笑顔で挨拶するセーラさん、それを見ていたソアラちゃんがセーラさんに挨拶する。
「おはようございます。貴方がセーラさんですね。私はマラッカス商会の娘でソアラと言います。私のノワールさんからお話を聞いていまして、今日は私も同行しますのでよろしくお願いしますね」
うおっ、いきなりの先制攻撃!!
表情が曇るセーラさん……
ここは、いつものように訂正しておこう。
「おはよう、セーラさん。ソアラちゃんが言っている私のは、私の所で居候していることを言っているので、勘違いするなよ」
「そうですか……」
「おはようございます。初めましてソアラさん」
セーラさんはソアラちゃんに笑顔で挨拶するが、なんだか怖い。
そして、俺の方を向くとセーラさんのターンが始まる。
「ノワールさん、昨日はずっと二人で一緒に治療してありがとうございました。皆さんからは、良いカップルですねと言われるので、私は困っていますぅ――」
ぬぉっ!! こんなこと言われたら、俺も困ってしまいますぅ――と思っていると、今度はソアラちゃんのターンが始める。
「困ってしまうのであれば、もう、セーラさんだけで診察は十分ですね!!」
二人の様子を見ていた修道女が、ガタガタと震える。
「挨拶は済んだかな? それでは裁縫ギルドに行くぞ」
俺は何事もなかったように二人の会話を受け流し、二人を連れて裁縫ギルドへ向かう。
今ので、俺の受け流しスキルが上がったような気がする。俺にそんなスキルはないけどね……
◇
俺達は裁縫ギルドに着くと受付に向かう。
「あら、ソアラちゃん。それにそちらはセーラさん? 今日はどうしたのですか?」
「はい、今日はギルド長のローラさんに会いに来ました」
受付の人とは慣れているソアラちゃんが対応してくれたので話がすんなり通り、俺達はギルド長室に案内された。
「私がギルド長のローラです」
ローラさんが綺麗な女性のエルフだったので、俺は見とれてしまった。
「んんん」
間髪を入れずに、ソアラちゃんが咳払いする。
「ああ、初めまして、俺は冒険者のノワールです。カイトの件ではお世話になっています」
「ふふふ、貴方があのノワールさんね。マラッカス商会のカザトさんから聞いてはいましたが、カザトさんが言うように貴方は冒険者ではなく、貴族か商人のように丁寧な言葉使いですね」
しまったな。
綺麗な人だったので思わず緊張して、冒険者の言葉遣いを忘れてしまった。
「そうですか。カザトさんから他に何を言われているのか気になるな」
「お気になさらずに大丈夫ですよ。ところで、今日はどうされたのですか?」
「はい、今日はカイトの件ではなく、マスクのことで来ました」
「マスクとは聞いたことがない言葉ですが、一体どのようなものですか?」
俺はローラさんにマスクの製作方法と効果について説明するのであった。
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