ルーイ君の思い
「お前の婚約が決まった。」
そう父上に言われたときは、ただ
(そうなんだ。)
とだけ思った。
「大きくなったら、ママと結婚する~!」
なんて戯言が許された時期も過ぎ、既に王族である自分は国の為に結婚するのだということを知っている。
ただ、結婚が何なのかはいまいちよくわかっていない。
だから、父上からそう言われたら、従う以外の選択肢が無かったのだ。
「相手は誰ですか?」
「隣国の王女殿下だ。エリザベス様というらしい。」
「そうですか。わかりました。」
相手を聞いてみたところで心が動くこともなく、ただ父上が言うのだから国の為になるのだろうとしか考えなかった。
しかし、彼女を一目見て、その考えは変わってしまった。
緩やかなウェーブのかかった金髪にエメラルドのような緑の瞳。
おとぎ話に出てくるお姫様そのものだったのだ。
「いらっしゃい!僕がルーイだよ。」
思わず声が弾んでしまった。
物語に出てきた一目ぼれとは、こういうことを言うのだろうか。
彼女を喜ばせたい。
そう思った僕は綺麗な蝶々が描かれた図鑑を開いた。
「うわぁ、本当に綺麗ね!」
エリザベス王女が嬉しそうにしてくれるのが、くすぐったく感じた。
「エリザベス王女は、普段は何をして遊ぶの?」
もっと喜んでほしくて、そう質問してみた。
「おままごと!あと、マリナや侍女たちに絵本を読んでもらうのも好き。」
そう聞いて、僕は嬉しくなった。
剣は得意ではないけど、本の事なら自信がある。
さっそくエリザベス王女を誘って本棚へと向かった。
そうして、しばらくは二人で絵本を楽しんだ。
その間にも、バレないようにしながら僕は注意深くエリザベス王女を観察していた。
この子は何をしたら喜んでくれるだろう。
どうしたら僕の事を好きになってくれるだろう。
そう思いながら。
すると、エリザベス王女がお腹に手をあてたことに気付いた。
そういえば、僕もお腹が減っている。
おやつに誘うと、
「うん!食べる!」
と元気な返事が返ってきた。
エリザベス王女はまだ四歳とのことだったけど、エスコートの為に手を差し出す。
すると彼女も自然に僕の手を取ってくれた。
まだ小さくて、柔らかい手。
それに触れられたことを心底嬉しく感じてしまった。
もっと彼女の事が知りたい。
そう思って嫌いなことを訪ねてみると、彼女の様子がおかしくなってしまった。
「大人の大きな声が嫌い。」
独り言のように嫌いなことを教えてくれる彼女。
僕は自分が失敗したのだと悟った。
「ごめん。嫌なことを思い出させちゃったんだね。」
慌てて謝罪する。
せっかく仲良くなりかけていたのに、嫌われたらどうしようと内心焦りでいっぱいだった。
「そうだ!僕に名誉挽回させて。」
大きな声が嫌いだという彼女に嫌われないよう、声のトーンに気を付けて提案する。
そうして庭園へ誘うと、エリザベス王女は再び笑ってくれた。
「お花は好き!」
その瞬間、心臓が跳ねた気がした。
(違う、僕じゃなくて花が好きだと言ったんだ。)
そう自分に言い聞かせて彼女を庭園へとエスコートする。
ああ、でも。
もしも彼女が僕の事を好きだと言ってくれたらどうなるだろう。
僕は嬉しすぎて、おかしくなってしまうかもしれない。
そう思った僕は、彼女との距離を縮めようと、愛称呼びの許可をとる。
僕が七歳、彼女が四歳。
結婚まではまだまだ遠い。
でもごめんね。
僕はもう、君を逃がすつもりは無くなってしまった。
必ず、僕のお嫁さんになってもらうよ。
その為なら、なんだってやってやる。
この日、僕はそう決意したのだった。
完全に自己満足で書きました。
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