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縁の迷宮と、邂逅と。  作者: 銀筆
第二章
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24:悪魔リズミエラ

 俺がその名を知ったのは、迷宮ギルドの探索者になった後だった。

 魔力量を増やす手段を探すため、ギルドの資料室にある魔族に関しての情報を調べている時の事だ。俺自身、自分がそこまで特別だとは思っていなかったため、同じように魔力量が増えない魔族の記録もあるだろうと思っていた。その人達はこの問題に対してどう向き合っていたのだろうとか、そういうことを知りたくて調べまわったのを覚えている。結果として、見つかった情報のほとんどは、彼らは努力して魔力量を増やしました、とあるだけだった。彼らが魔力量を増やしたという方法は既に試している。空しさだけが残った。ただそれでも、魔力量が増えなかった魔族の情報も少しだけはあった。そしてその中の一人が『悪魔リズミエラ』だったのだ。

 リズミエラの情報はかなり断片的だった。記録に残されているのは、魔力量の少ない魔族、研究者、同族である魔族に敵意を抱いていた、対魔族に特化した毒薬を生み出した、ぐらいだ。そしてこの生み出したという毒薬だが、それは俺にとっても最も怒りを覚える作用をもたらす物だった。そう、魔力量の低下である。その力は絶大で、飲んで一晩経つと身長が十センチ以上縮むというのだ。この毒薬の被害を受けた者達は皆、大人の最低限以下の身長になったという。自身の魔力量の低さに嘆いたリズミエラが逆恨みで生み出した物だと言われているが、真相はわからない。

 リズミエラが晩年どうなったのかは記録に残っていない。ある書物には、リズミエラは魔族達によって粛清されたと書かれていたが。

 そういった過去があるため、魔力量が低いままの魔族や研究者になろうとする魔族は同族から警戒される。本当に物好きな魔族は気にせず研究者となるが、あまりよくは思われないようだ。それでも今はまだマシな方らしく、リズミエラの居た時代に近づく程に研究者となる魔族には迫害に近いものも行われていたらしい。リズミエラの毒薬によって被害を受けた魔族達によって行われていた、と書いてあった。


「そんなわけで、近年まで研究者になる魔族がとても少なかったんだよ。幸い彼らには迷宮探索者としての適正があるからね、わざわざ研究者にならなくても生きていくのに困ることは無かったと思うよ」


 探索者になればその能力から優遇、賞賛される。研究者になれば警戒、迫害を受ける。となれば前者を選ぶのは当然だろう。


「その毒薬は今もあるんですか?」

「誰かが隠し持ってない限り、もう残って無いと思うよ? 作り方はリズミエラしか知らないって言われてるね」


 もし知っている者が居たとしても、迫害のあった時代に消されている気がする。


「マナさんの知り合いに魔族の方は居られるんですか?」

「残念ながら居ないねー。ボクはギルドの研究員ではあるんだけど、ほとんど自宅で研究してるから。あんまり他の研究者の人と交流がないんだよ」


 だからテンカとは面識が無かったのかな。


「この魔力回復薬を研究するのも、今のところ君達に協力してもらわないと出来ないかな?」


 魔力回復薬を作る際、テンカは魔素が迷宮内よりも少し濃い状態になるよう要求していた。今のところその要求に応えられるのはフチだけだろう。


「これは有ると無いとじゃ探索効率が大きく変わる。クロウズさん、これの消費期限とかある?」

「こういった瓶に蓋をするぐらいの保存でも半年はもつよ」


 一応これの作成方法は、テンカが古代文字を解読して発見したという事にしてある。実際はテンカの鑑定で得た情報だ。


「マナさんがここに来る度、少しずつ作っていこう」

「ここで色々実験していくってわけだねっ。良いね!」


 フチの提案にマナさんは乗り気だ。確かにここでなら人目を気にすることもないし安全だ。

 今回は実験的に俺とテンカとフチの三人で作ったが、専門家が居るならその人に任せた方がいいだろう。素材の違いや作成方法を少しずつ変えたりした場合どうなるかなど、そこから得られるものはこれからの発展に大きく貢献するだろうし。


「ふふふふふ。ここでなら世界樹の枯葉も手に入れることが出来そうだね。それで作ったらどうなるんだろう。楽しみだなぁ」


 あ、なんかマナさんの様子がおかしい。

 ここは女性陣に任せて退散しよう。




 今夜の夜番は今朝集まった時の組み分けにした。俺とユカリさんは最後になる。夕食をとってからしばらく雑談をしてから寝入り、起こされたのは空が白み始める半刻ほど前だった。

 昨日も色々あったが、話に聞く限りこの地は優先すべき開拓地として少数先鋭で開拓していくことになるだろうという事だ。再生の大樹のおかげで早くに移住も可能だそうで、食料の安定供給の目処さえ立てばすぐにでもギルド員が常駐する事になるだろう。


「家を建てるならどの辺りが良いかなぁ」


 まだ浄化がほとんどされていないため、この辺りの正確な地形すら分かってはいないのだが、ぼんやりと浄化された後の理想的な土地となった未来を想像しそんな言葉が口に出る。


「昔はこの近くに小さな湖がありました。ちょうどマナさんの持ってこられた苗木を植えに向かっていった辺りですね。この辺りは広い森だったのですが、あの辺りは開けていてとても綺麗な風景でしたよ」

「そうだったんだ。大気汚染は水に対しては影響が弱いと言われているけど、これだけ汚染されている状態だとどうなっているんだろう。もしその湖が無事なら、あの辺りに家を建ててみるのも良いかもね」

「家を建てるのに必要なお金はどのくらいなのでしょうか」


 そういやいくらぐらいなんだろうか。今まで家を建てようと考えた事が無かった。


「ごめん。俺もよく知らないや。宿の良い部屋の料金を五年分だと……450万ぐらいか。それぐらいあったら建てられるかも?」

「調査部の依頼を見てみましたが、貯められるのはかなり先になってしまいますね」

「魔物討伐なら迷宮深部の素材次第では早めに貯められるね。協力して探索したら報酬を分けられるから、パーティーを組んでくれる人が増えたら一緒に挑戦してみたいね」

「その時はよろしくお願いします」


 ウルグスの迷宮最下層の魔物で高い奴が一体二万になる事がある。そいつと遭遇するのは稀だったが、平均して一日四千ほど稼げていた。初心者向けの迷宮でそれなのだから、ここならもっといくだろう。互いの家を建てるとして、合わせて九百、いや一千万ぐらいは欲しいな。貯まる頃には俺も高身長になっているだろう。レクラースに戻ったらそれも調べないとな。

 ふと、魔力回復薬を販売したら一気に稼げるのではないか、と思ったが、考えてみれば今のところあれに関する全ての権利はテンカが持っているといっても良いのだから、その利益を当てにするのはよくないなと考えを改めた。


 夜番に何か問題が起こることも無く、陽が昇るまでは魔素で動く照明道具を試したりして過ごした。

火、木、土日更新が理想かな。ストック次第ですが。

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