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縁の迷宮と、邂逅と。  作者: 銀筆
第一章
14/35

13:準備

「混雑するかな」


 今回ボスが出たのは浅い階層だったので、安全をとって休んでいたのは必然的に浅い階層を探索する者たちだった。ボスが倒された今、彼らはすぐにでも探索を再開するだろう。


「ロウさん。一つお願いがあるのですが」

「なんだい?」

「私たちが出会った場所へ、一度行ってみたいのです」


 真剣な眼差しだ。迷宮へ入るための正式な許可証を得たのだ、いずれ向かうつもりではいたが。


「いいよ。ただし今行けるのは自然洞窟に繋がる道の手前まで。その先はしっかり準備を整えてからでないと、おそらく危険な場所だと思う」

「わかりました。そこまでの案内をお願いします」

「ああ。あの場所までなら普通の一階層だ。このまま行こう」

「はい。ありがとうございます」


 迷宮門へ入ると中も人でごった返していた。探索者も平均的に若く見える。迷宮へ向かう者たちの流れに乗って進み迷宮へと入る。探索者は各々ここから違う道へと進む。ここの迷宮は特に広いので、余程の事がない限りは迷宮内が混むといったことはないだろう。選ぶ道は慣れた経路なのか人のいない場所を選んでいるのか様々だ。俺とユカリさんはせっかくだから途中まで作った地図の最奥の場所へと向かうことにした。最奥といってもそれ程離れた場所ではないが。


「じゃあここから目的の場所まで進むけど、経路を記録しながら進む?」

「そうします。昨晩借りた一階層の地図も写してあるので、それに書き込みます」


 鞄から複製したらしい地図を取り出す。用意していたらしい。


「最短で進むね。魔物が居てもこの階層ならすぐに倒せる」

「わかりました」


 頷くのを確認し、目的地へと歩き出す。勿論小部屋には入らない。あの場所は一階層でも最奥にあった。辿り着くだけでも時間がかかる。

 途中一匹だけ魔物を倒した。一階層の魔物のオオネズミだ。30cm程で尾が二つある。単体だったので一分もかからずに仕留めた。血抜きと低温保存をし素材袋に入れる。

 問題も起きず最短で来る事が出来たが、それでも二時間程かかっていた。


「ここだね」


 人工の壁にぽっかりと開いた穴の先から自然の洞窟が見える。今更気付いたが、魔素はそこから外へと流れているようだ。


「少し、あちら側の壁や地面を調べてみても良いでしょうか?」

「それぐらいならかまわないよ」


 近くに魔物の気配はない。この迷宮から見える範囲ぐらいなら問題はないだろう。ユカリさんと一緒に向こう側へと出る。透明の壁にぶつかることは無かった。ユカリさんが調査を始める。俺はふと邂逅のカードの事を思い出し、ポケットから取り出す。

 ふむ。数字に変化はないか。このレベルといったか? の数値はどうやれば上がるんだろうな。俺が上がったのはユカリさんの窮地を救った事でこのカードから力を授けられたから? ……いや、確かテンカは二人に力を授けると言っていた。ユカリさんの数値が1だから、それは別にあるのだろう。ならあのスライムを倒したからか。確かに初めて倒したから、その経験が糧となって個人の強さが増したとも言えるが。だがこれまで俺は数十種類以上の魔物を倒している。それでもあの時点ではレベルが7だった。スライム一匹倒しただけで三つも上がるのはおかしい。それともスライムというのが特別なのだろうか。

 ユカリさんの方を見ると、壁の一部を削って瓶に回収していた。


「ユカリさん。壁を削るのに違和感はない?」

「はい。普通の岩壁ですね」

「迷宮の壁はとても硬いんだけど、ここは違うみたいだね。やっぱり迷宮の外になるのかな」

「なんとなく、そんな気はしますね」


 迷宮独特の空気ではない気がする。ここは迷宮のすぐ側だからわからないが、この奥へ行くほどに魔素が薄くなる気はする。


「そういえばユカリさんは以前より力が強くなったとかそういうのはある?」

「力ですか? どうでしょうか、少し身体が軽くなったような気はしますが、おそらく空気の綺麗な環境に居るおかげなのではないかと」

「そっか」


 俺も特に何か変わったという感じはないんだよね。一体どういう力を授けられたのか。


「いきなりどうしたんですか?」

「ちょっとね、このカードに意味深な事が書かれているみたいでさ」


 邂逅のカードをユカリさんに渡す。


「て言っても俺にはそこに何が書かれているのかほとんど読めないんだけどね。読める人が言ってたんだ」

「私たちの名前が書かれていますね」

「そうなんだよ。それは手に入れたときから……って、え!? ユカリさんも読めるのそれ!?」

「古代文字ですね。一応研究していたので部分的には読めるんです。これに書かれている部分だと、私たちの名前以外には『レベル』? と数字。あとは……『えた、に、を? ける、あらんことを、う』ですか。私にも詳しくはわかりません」

「この迷宮で手に入れたものでね。迷宮のアイテムには古代文字が使われているから」


 古代文字という共通認識はあるみたいだ。言動からおそらくユカリさんは前時代の人なんだと思うけど、その時にも既に古代文字として扱われていたのか。


「そこに俺たち二人に力を授けるって書いてあるらしいんだ。けど今のところそれが何か全く見当がつかなくてね。ユカリさんも何か変化を感じたら教えてくれないか? 勿論俺も何かわかったら言うから」

「わかりました。私も気になるので色々試してみますね」


 付近の調査を終えたので迷宮を出ることにした。帰りはいくつか小部屋によるのもいいだろう。


「こちらでは古代文字の解読が出来るのですね」

「いや、どうだろう。古代文字に関しては何故かほとんど秘匿されているんだ。普通の探索者が読めるのは数字ぐらいだね」

「そうなのですか?」

「研究している人はそれなりに居るらしいし、実際解読できていないとつじつまが合わないようなこともある。ただ何故か古代文字そのものの情報は制限されているね」


 そしてそれをしているのは間違いなく迷宮ギルドだ。それが出来る力があるのはそこしかないというのもある。


「普通は読めなくて困るって状況にはならないから。迷宮内に古代文字が書かれてある場所があったら、迷宮ギルドから専門の人たちが解読に向かうらしいし」


 そこでトラブルが起きたとか、そういったことは聞いた事がない。まぁあっても揉み消されているか。


「私も古代文字関連の事は口に出さないほうがよさそうですね」

「……そうだね。誰かに目をつけられても厄介だ」


 テンカに口止めしていないが大丈夫だろうか?


 時間的にまだ余裕がありそうだったので三つほど小部屋に入ってみたが特に変わったこともなく、魔物に遭遇する事もなく人が混む前に迷宮を出た。魔物素材を売り迷宮前広場に出ると、ユカリさんが口を開く。


「あの先に向かうには何が必要でしょうか」

「そうだなぁ。まずはあの崖を登る道具が必要だね。あの先はどんな感じ?」

「私が通ってきた時は高低差はあっても走ってなんとかなるぐらいです。飛び降りたとかもしなかったので、造りが変わっていなければ出口まで道具を使わず行けるはずです」

「ふむ。とりあえず一回で行けるなんて考えずに、少しずつ進めばいいか」

「はい」


 なら崖対策だけしてとりあえず挑むか。あまり荷物を増やしていくわけにはいかないしな。


「あとは根本的な事になるけど、他に何人かの協力者がほしいところだね。最低でも一人は欲しい」

「クロウズさんにお願いできるでしょうか」

「頼むつもりだし大丈夫だとは思うけど、無理だったら他に探さないとね」


 さすがにあの場所へ二人だけでは危険だろう。あの奥で何かあった場合、魔物などに襲われて逃げることになったとしたら、あの崖を降りる必要が出てくる。俺が単独で行くならなんとかなるが……。


「じゃあ必要な道具を探しにいくか」


 まずは絶対に必要となる道具探しへと向かうことにした。





「なんか色々買ってきたんだね」


 買ってきた道具をテンカが興味深そうに見ている。


「まあね。テンカは今日は迷宮に行ったの?」

「行ったよ。昨日研究所へ見学させてもらった時に知り合った研究員の人から頼まれたものがあってさ、二階層を探索するパーティーに混ぜてもらって行ってきたよ」

「へぇ。目的のものは見つかったの?」

「残念ながら今日は見つからなかったね」

「もしかして明日も?」

「いやまだ決めてないよ。頼まれ物も急ぎじゃないみたいだしね。何かあるの?」

「明日……はまだ無理そうだけど、明後日ぐらいに一階層の奥に行く予定なんだけど、出来ればテンカにも付いて来てほしいんだよね。ちょっと少人数で行くには危ないところだから」

「一階層なのにか? ……ああ、例の場所か。なるほどそれでこの荷物か」

「あと関係ないけどこれあげる」


 以前テンカ用に買った服を渡す。


「お? いいのかこれ? 高そうだけど」

「あんまり服買ってないみたいだしさ、俺も買ったからそのついでだよ」

「あぁ悪い。ありがとう。その、ここだと皆毎日同じような服を着てる人が多いからさ、同じの着続けていても気にならなかったんだ。助かるよ」


 受け取った服を見て嬉しそうにしている。嫌じゃないみたいで良かった。


「ああ、それで例の場所に行くんだっけ。勿論一緒に行きたい。けど迷宮に入るのはどうする? ユカリさんと行動しているからもうオレも一緒に行動するか?」

「そうなんだよね。うーん、どうしようか。せっかくテンカ自身で作った今の人間関係を壊したくないからね……」


 ウルグスの時のようにはなりたくないしさせたくない。俺と親密だからと他の魔族とパーティーを組んでもらえなくなるのは申し訳ない。


「よし、じゃあ明日一日迷宮ギルドで頼めそうな人を探してみるよ。もしかしたらこの前の人たちが協力してくれるかもしれないし」


 確かにこの前一緒に迷宮へ行ったパーティーならある程度状況を察して協力してくれるかもしれない。


「わかった。よろしく頼むよ」

「おう」




 翌日、迷宮内にて。


「ユカリさん。魔物を倒してみる?」

「え? ……はい、そうですね」


 一瞬驚いた表情を浮かべるも、少し考えてすぐに答えを出す。


「ここだと昨日のオオネズミでしょうか?」

「そうだね。俺が弱らせるから、止めをお願い」

「わかりました。これもあの先へ行くのに必要なことなんですね?」

「え? ああ、いやこれはちょっとした実験なんだ」

「実験?」


 なるほど、昨日の今日なのでそう思ったわけか。確かにいきなり言った俺が悪い。

 邂逅のカードを取り出してユカリさんに見せる。


「この名前の横にある数字がそれぞれの強さを表しているらしいんだ。俺が10でユカリさんが1だね」

「なるほど? なるほど」

「強さがどういう基準のものかは全然わからないんだけど、これ俺が手に入れたときは俺の強さは7だったんだよ。あ、手に入れたのはユカリさんと出会う少し前だね。それでその夜にカードを確認したら俺の強さが10になっていた」

「……スライムですね」

「ああ。それぐらいしか思いつかない。俺の元々のレベル?が7だったことを考えると、スライムだけじゃなくて魔物を倒すことでこの強さというのが上がるのかもしれないなと思ってね」

「私は今まで魔物と言うものを倒したことがないのでレベル?が1だと考えられるわけですね。それで試しに魔物を倒して変化があるか確認してみようと」

「話が早くて助かります」

「いえいえそれほどでも」


 嬉しそうだ。


「槍で刺すか、短剣でグサッとやるか」

「槍でお願いします」

「ではこれを」


 迷宮門の道具やで買った短槍を渡す。短いと付く割には俺の身長とあまり変わらないのが何とも言えない。


「だからこれを買ったのですね」

「安物だけどね。最初は難しいと思うけど、弱らせたオオネズミなら練習相手にはちょうど良いと思う」


 今日は地図作成の続きをしている。測量をしつつ魔物の気配を探り近づいていく。


「居たよ。ユカリさん良い?」

「大丈夫ですっ」


 オオネズミへ近づくと、条件反射のように突進してくる。単調な動きを簡単にかわして足に傷をつける。


「ユカリさん!」

「はい!」


 手に持った槍を伸ばす。初めてにしてはずいぶんと綺麗な動きだ。だが当たらない。


「槍で刺すのは難しいからね。何度もやってみよう」

「はい!」


 二撃目。サクッと当たる。


「お?」

「やりました」


 オオネズミは死んでいる。見事倒せたようだ。素材回収に移る。


「すごいね。もっと時間がかかると思っていたよ」

「長物の扱いには少しは慣れていますので」

「そうなの?」

「武器としてではないのですが。小さい時はそれで遊んでよく怒られていました」


 懐かしそうな顔で笑う。


「そっか。けどまぁそれが役に立ったんだ。経験を無駄にせず良かった」

「ですかね? ふふふ」


 素材を袋に入れてから邂逅のカードを確認する。


「……変わってないみたいですね」

「そうだね。さすがに一匹だけじゃ変わらないのかな?」

「ロウさんはこれまでにどのくらいの魔物を倒したのですか?」

「数かぁ……最低でも千はいくな」

「千! そんなに倒しても7だったんじゃ、一匹倒したところで上がるわけないですよ」

「なのかなぁ? 正直この指数は他の人と比べられないからどこで変わるかわかんないんだよ。それにスライム一匹で3も上がったし、最初は簡単に上がるような気がする……なんとなく?」

「そうなのでしょうか。確かに他の人で試せないのでは私たちで色々調べてみるしかありませんね」

「うん。今日また魔物を見つけたら倒してみよう」


 その後三匹のオオネズミを倒した。ユカリさんの槍捌きが様になっていたので、少し危険だが一匹は俺は手を出さず全てユカリさんだけで倒してもらったが、二人の数値に変化は無かった。


「強さとは」

「間違いなく昨日よりは強くなりましたよ。見てくださいこの槍捌き」


 そう言って見せてくれた突きの動作はなかなか鋭かった。もしかして授けられた力とはこれか?

 地図作成は追加で小部屋八個分終えて今日の迷宮探索は終了となる。


「迷宮ギルドには8階層までの詳しい情報はあるみたいなんですよね。ただその資料が結構ばらばらにまとめられてあるらしくて、この前私が作成した地図を基に新しく地図を作るつもりだとおっしゃっていました」

「それでも8階層までしかないのか」

「調査部を希望する人が少ないらしいです。それで情報がなかなか集まりにくいとか」

「ほとんどは採集か魔物討伐希望とは聞くね。パーティーを既に組んでいる人が形だけ調査部にっていうのも」

「そうなのですね」


 今朝は迷宮ギルドへと寄ってきた。中では別々で行動したので、その時の情報だろう。


「一階層を全て調査しそれを地図にすれば特別に報酬をいただけるそうです。よろしいでしょうか?」

「勿論良いよ」


 お金もちゃんと稼げているし、まずは目の前の出来そうな事からやっていくのも良いと思う。




「迷宮一緒に行ってくれる人が見つかったよ」


 本日の報告会である。


「それは良かった。この前のパーティー?」

「いや、あのパーティーは魔族の人が戻ってきていて何かあったら困るからやめておいたよ」

「あーそっか。ごめん」

「いやいや、謝るようなことじゃないよ。まぁそれで迷宮ギルド内とか迷宮門前とかで色んなパーティーを見てたんだけど、やっぱりほとんどのパーティーに魔族の人が居るんだね」

「他の迷宮だと居ないパーティーもそこそこ見かけるけど、ここではほとんどないみたいだね」

「本格的な探索パーティーを選ぶわけにもいかないしね。あ、そういやふと思ったんだけどさ、魔族の人って魔力を増やすのにどういう練習をするんだ?」

「普通は練習しなくても増えるんだって。俺みたいに成長が遅い魔族とかもっと魔力量を増やしたい魔族がするのは、できるだけ大きい魔力を使って魔法を遠くへ放つとか、自分より魔力の大きい人と共同で魔法を使うとか、ミルクを飲むとかだね」

「最後のいる?」

「いるよ!」


 今日も飲みましたけど!


「迷信的な方法はいくらでもあるんだけどね、結果が出なかったから俺にはわからないな」

「そ、そっか。魔力量とかいうぐらいだから、魔法を使うのに限度はあるんだよね」

「うん。使いすぎると長い立ち眩みの様な症状が出て、限界まですると魔力枯渇状態になって意識を失うみたいだね」

「ロウはなったことあるの?」

「あるわけないよ。魔力枯渇状態になると魔族にだけある魔力の器とかいうのが傷ついて、修復される際に頑丈になるって言われててね、その際器は頑丈になるのと引き換えに成長が止まるって言われているんだ。魔力量を増やしたいなら柔軟性のある状態を保っていないといけないんだって。そのかわりに魔力の器が頑丈になればなるほど魔力枯渇時の状態悪化がマシになるって言われてる。女の人だとあまり成長したくない人が稀にその方法で成長を止めるって聞くよ」


 魔族が一番最初に教わることだ。魔法を使いすぎると成長が止まるよ、と。よほど狂ってない限りは試さないだろう。一度や二度ぐらいなら差はないみたいだけど、明確な基準がない以上は普通は無理しない。


「テンカの能力を使ったときとは症状が違うみたいだね」

「そうだな。こっちのはたぶん脳の処理の問題だと思う」

「んー?」

「身の丈にあってない力って事だよ。自分より何十倍も重いものを持とうとして骨折するようなものかな? たぶん。ちょっと持ち上げるくらいなら平気なんだけど、全部持とうとしたら潰れる。そしてこの能力を使うときに使っている場所が腕や足じゃなくて脳……なんだと思う」

「そうなのか。どう考えても魔法より危ない力だね」

「魔法は魔法でとんでもないんだけどな」

「……確かに」


 自分と離れた場所に自然現象を任意で発生させる。確かに言われてみればとんでもない事な気がする。


「話を戻そう。それで協力してくれる人ってどんな人なの?」


 テンカはスッと目線をそらす。


「明日の現地集合を楽しみにしておくと良いよ」

「え? 何その反応ちょっと怖いんだけど? 信用できる人なんだよね?」

「今日話してみた感じ、それは大丈夫だよ。信用して欲しい!」


 どこ向かって言ってるんだ。その言葉、こっちを見て言うんだ。


「安全性も高くなる。それは間違いない」

「明日会って、信用できないと思ったら解散だよ?」

「わかってる」

「一応、名前」

「……おやすみ」

「……おやすみ」


 嫌な予感しかしないんだけど?




 翌日早朝。テンカとの合流地点にした迷宮内の小部屋の一つ。


「どんな人なんでしょうね」

「ちょっとでも怪しかったら今日の探索は中止だね」

「はい。そうですね」


 コンコンと扉がノックされる。

 ユカリさんと頷きあい、扉の先の人物へ声をかける。


「錬金術師は」

「宝箱」

「入れ」


 扉を開けて部屋へ入ってくる人物が二名。


「このやり取りいる?」


 そんな事を言っているテンカと、


「きちゃった」


 相変わらず感情の乏しそうな眼差しの幼馴染がそこに居た。



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