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027「召喚魔法作成研究所と救世の勇者」



――日曜日



 昨日、光也と静流の三人で『アキバ』へ出かけた後、午後は三人で家に戻り、麗香とメグが父さんとの組手を行った後、庭でバーベキューをしながら一日を過ごした。


 そして、日曜日……父さんは仕事に戻るということでまたメキシコへと旅立った。俺は玄関で見送った後、静流と光也、そして麗香と『秘密基地』で待ち合わせをした。


『秘密基地』と言っても、S県A市とB市の県境にある『明峰山めいほうざん』という山の市民公園から山道に入り、1キロほど進んだところに残っている『廃墟』である。


 その『廃墟』は小さい事務所みたいな建物で、静流の話だと10年前に『第二市民公園』を作る計画があったようで、その工事関係者の『事務所』として使われていた建物とのこと。


 現在は、誰も使用していないということで静流が中学の時に使っていた『秘密基地』だったが、中学が終わる頃には俺たち4人の『秘密基地』となっていた。



「うわ~、なつかしい~っ!!」



 麗香の第一声は皆の気持ちを代弁していた。


「中学校以来だけど、相変わらず誰も使っていないようだね」

「ああ、そうみたいだな。とは言え、吾輩は半年前くらいに一度様子を見に来たことはあったがな」

「へ~、そうなんだ」


 皆、思い思いにいろいろと二年前の中学三年の当時を思い出しながらしゃべっていた。


 それなりに皆の興奮が一段落した頃あいに、


「でも、どうしていきなり『秘密基地』に行く話になったの?」


 麗香がふと俺たちに疑問を投げかける。


「うむ。それなんだが、レイカ嬢…………実は昨日付けでこの『秘密基地』は『召喚魔法作成研究所』へと名前を変えましたっ!!」


 静流が勢いをつけながら麗香へ本題をぶつけた。


「しょ……『召喚魔法作成研究所』? 何のこっちゃ?」


 まさにその通りである。


 と、ここで、静流では話下手、伝え下手ということで光也が麗香に説明する。


「まあ、要するに…………この『秘密基地』を拓海に『召喚魔法』を作ってもらうための場所…………『研究所』として利用するよ、ていう話」

「し、召喚……魔法……?」

「召喚魔法ってのは別の世界から特定の人物を自分たちの世界へ移動させる魔法と言えばわかる?」

「ん~……何となくは」

「ほら……拓海は意識不明の1カ月の間、『異世界』に行ってたって言ってたでしょ? それで、今度はこの世界から逆に『異世界』へ移動できないかって話でね…………で、もしかしたら拓海自身でその『召喚魔法』を作り出せるんじゃないかって話になって……それで今に至るって感じ」

「え? 拓海、召喚魔法なんて作れるのっ?!」

「いやいやいやいや、そんなの無理だってそう言ってんだけどさ、二人が『やってみなきゃわからないだろ』なんてこと言って、勝手に盛り上がって、『召喚魔法作成研究所』を勝手に設立したというのが……真相だ」


 俺は深いため息をつきながら麗香に説明をした。すると、


「コラっ、タクミ氏っ! 試しもせずに否定するなぞ、愚の骨頂だぞ!?」

「そうだよ、拓海。ほら! 昨日、『アキバ』で買った資料もあるからいろいろと試してみようよ」


 そう言って光也は、昨日、『アキバ』で買った様々な書籍や雑誌を並べた。そこには、『物理科学系』の雑誌や本といった『日本語でおk』というような難しい本から、『異世界転移もののラノベやマンガ』といった本など、何とも『ふり幅が極端なチョイスで選ばれた本』が並べられている。


「で? 俺はどうすればいいんだ?」

「うむ。タクミ氏……まずはタクミ氏が使える魔法の中で移動系の魔法っていうのはどういうのがあるんだ?」

「そうだな~……前にみんなに使った空を飛んで移動する『飛翔魔法』くらいかな。まあ、『飛翔魔法』にも種類があって前に皆に使ったのはスピードが一番緩やかなやつで、更に高速で移動できる飛翔魔法もある。だけど、瞬間移動みたいな魔法はないかな……」

「へ~、前に使ったあの空飛ぶ魔法にもスピードの違いで別にいくつかあるんだ」

「ああ。スピードを出すと重力加速度……いわゆる『G』がかかるから肉体への負担が大きくなってしまうんだよ。だから、スピードが増す飛翔魔法を使いこなすには、それ相当の『G』に耐える肉体でないと、たぶん気絶するかも……でも」

「「「でも?」」」

「その『G』に耐えられるだけの『身体強化』の魔法を付与すれば移動はできるよ」

「付与? つ、つまり、それって……ボクたちに魔法の効果を与えられるってこと?」

「ああ……。だって、お前らが空飛んだ時は俺がお前らに『飛翔魔法』を付与したから飛べただろ?」

「あ、そうか! たしかに……。で、でも、それって…………凄い能力だね」

「ああ。異世界もののラノベやマンガ、ゲームでは付与魔法……『パフ』ってやつはよくある魔法だろうけど、実際は…………まあ、俺が転移した異世界では『付与魔法』は特別な魔法とされていたよ」

「う~む……確かにゲームとかマンガでは付与魔法なんてよくある魔法だが、よくよく考えるとすごい魔法というのは納得がいくな。簡単に言えば、例えば『何も能力を持たない普通の人間』にも『身体強化』の魔法効果を与えれば、そいつは『普通の人間以上の身体能力』が手に入るわけだからな」

「まあ、そういうこと。とは言っても、付与魔法はあくまで付与に過ぎないから『一定時間』しか効果が持続しないけどな……。基本的には、だいたい効果の持続は平均1分ってとこだな」

「そうなんだ……でも、1分でもすごいよね!」

「まあな。それに連続で付与すれば1分以上の効果の持続は可能だし、付与魔法自体の効果持続時間を長くすることだってできるぞ。ただ、その効果持続時間を長くするのはけっこう魔力を消費するからよっぽど魔力量が高い人じゃないと使えないけどな……」

「「「…………」」」

「?? ど、どうした……お前ら?」


 三人が口をポカーンとしていたので俺は何事かと尋ねる。


「い、いや、何か、タクミ氏と話している内容が……あ、あまりにも……現実離れしているなと……つい、実感してな……」

「う、うん……。当たり前のように魔法についてのことをスラスラ話すもんだから……ちょっと……自分の今の状況が異常だなって……つい、冷静になってしまって……」

「う、うん…………。な、何だか、私は今、夢の中にいるのかなって……何だかあまりにも常識外れなことを拓海が当たり前のように話すもんだから……つい、ね……」


 三人は、今の俺の話を聞いて改めて本当に俺が異世界に行ったんだな、と実感したとのことだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「コホン! それでは改めて………………タクミ氏っ!」



「お、おう……?!」

「まず、吾輩が考え付いた方法で試してほしいのがあるのでそれを試してみてほしい」

「静流が? また変なこと考えてないだろうな~……」


 俺がジト目で静流に問いかける。


「バカモーーーーーンっ!! 吾輩、『召喚魔法』にかける情熱に偽りはない! 故に、そこに『不純な動機』『悪ノリ的なアレ』などは1ミリも持っておらんっ!!」


 静流が力強い口調とドヤ顔で叫ぶ。


「わ、わかった……わかったよ。それで…………俺は何をすればいいんだ?」

「うむ。まずは『飛翔魔法』の最大出力で飛んでほしい」

「え?『飛翔魔法』の……最大出力で?」

「ああ。昔、見たラノベでは超スピードで空を飛ぶことで『空間』を突き抜けることができ、その先に『異世界の入口』がある、とか……何か……そう、言ってたぞっ!」


 静流がすごく曖昧な…………ものすご~~く曖昧な『理屈』のソレを試すよう言ってきた。


「えええええ~~~? そ、それは、どう……だろう……」


 俺は正直、『無いだろう』と言って否定しようとしたが、


「あ、それ、良さそう! やってみてよ、拓海っ!」

「うん! とりあえずやってみせて、拓海っ!」


 二人が思いのほか静流の『案』にノリノリだった。


 ていうか、お前ら、ただ単に『飛翔魔法』が見たいだけでは?


 とは言え、『3対1』ということで俺に否定する力はないので、仕方なく、その静流の『案』を試すこととなった。


「わ、わかったよ……じゃあ、とりあえずやってみるけど…………たぶんだけど、お前らには俺の姿が見えないと思うけど……それでもいいの?」

「え? どういうこと?」


 麗香が尋ねる。


「最大出力の『飛翔魔法』…………魔法名は『ジェットムーブ』って言うんだけど、それを発動すると初速から『マッハ5』で飛んでくから、俺の姿が消えるような感じになると思う」

「「「マ、マッハ5っ?!」」」


 三人がまたも口をポカーンとする。


「お~い……三人とも~……」

「あ、ああ……わかった。いや、とりあえず吾輩たちがタクミ氏を見失ったとしても、タクミ氏自身が試して結果を教えてくれればいいから……そこは問題ないと…………お、思うぞ」

「あ! それもそうか…………わかった! じゃあ、やってみるよっ!」


 そう言うと拓海は何度か深呼吸し呼吸を整える。そして……、


「飛翔魔法…………『ジェットムーブ』っ!!」


 拓海が魔法名を言った瞬間、拓海の姿が消え、そして、少し、遅れてから『パーーーーンッ!』という大きな音が辺り一面に響く。


「「「た、拓海が…………消えたっ!!!!」」」


 三人は拓海にずっと目を離さずにしていたにも関わらず、拓海がその場から消えたようにしか感じられなかった。そんな、拓海の超スピードを目の当たりにした三人は腰を抜かし、その場にヘタッと座り込んでしまった。



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