026「動き出した宇龍会と救世の勇者」
――S県A市内にある温泉スパ施設
S県内で人気の高いこの温泉スパ施設は通常の夕方であれば、仕事帰りのサラリーマンや観光客でごった返す場所だが、今日は『臨時休業』という名の『貸切』となっていた。
通常であれば、夕方の稼ぎ時に『貸切』などあり得ない…………あり得ないのだが、彼らはその『あり得ない』を『あり得る』だけの力と金を持っていた。
その彼らとは、
「よう~……久しぶりだな~、鮫島」
「ハア、ハア……ご、ご無沙汰しており……ます…………堂島組長」
『宇龍会』…………『特定危険指定暴力団』として警察からマークされているS県最大の暴力団組織である。
そして、今、その温泉スパ施設のサウナ内で会話をしているのが、『黄龍』の総長の鮫島郁実と、角刈りで鮫島の巨躯よりもさらに一回り大きい宇龍会組長の『堂島斉玄』である。
「鮫島~……少し顔色が悪いようだがどうした~?」
「ハア、ハア……」
鮫島の顔半分とほぼ全身は包帯まみれであり、また、今は一人で歩くこともままならないため、車イスに乗っている。
「病院だったら拉致されることもないとでも思ったか? 残念だったな~……宇龍会のネットワークはお前が思っている以上に『広く深い』んだ…………よっ!!」
バキャっ!!
「あぐあっ……!?」
堂島は鮫島の潰れて包帯巻きにされている鼻に右拳を容赦なく叩きつける。
鮫島は痛みのあまり、一瞬、気絶しそうになったが顔に冷水をぶっかけられ、強制的に目を覚まさせられた。
堂島は部下に命令。部下は事前にその鮫島がいる病院の医院長へ連絡し、『脅し』と『金』で鮫島を拉致してきた。
「ううぅ……」
鮫島は痛みとサウナの熱に意識が混濁しているのかフラフラしている。
「鮫島……お前ら……誰にやられたんだ?」
「あぐ……あ……」
「ああんっ?! 何言ってんだテメーっ!! ちゃんとしゃべろや、コラーっ!!!!」
ただでさえ、鼻が潰れ、さらには意識朦朧としてマトモに喋れない状況であるのは誰の目から見ても明らかだが、堂島はそんなものはまったく関係ないとでもいうように今度は車イスを蹴飛ばした。すると、
「あ、ああああああ、熱いっ! 熱いぃぃいいぃい~~~~~っ!!!」
鮫島がサウナの熱で暖められた床に倒れると同時にその熱で軽いやけどをした。
「あ……あさひ……な……」
「ああっ!! なんだ~~~?!」
「あ、朝比奈……朝比奈、拓海…………その男一人に……じ、自分たち『黄龍』のほぼ構成員全員が……倒され……まし………………た……」
鮫島はそこまで言葉を返したところで完全に気絶した。
「朝比奈……拓海…………?」
闇が再び動き出そうとしていた。
すみません、あまりの眠さに…………今日はここまでということで。




