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025「週末の救世の勇者」



――土曜日の休日



「やあ、拓海っ!」

「おう、光也~」

「やあ、タクミ氏っ!」


 駅で落ち合った拓海と光也……それと静流。


 静流は光也からの連絡を受けると、一つ返事で参加することとなった。


「二人が『アキバ』に行くのに吾輩がいないなんてことはあり得ない! 断じてあり得ないっ! 大事なので二回っ!!」


 と、まあ、そんなハイテンションの静流と俺たちはその足で一路、『アキバ』へと向かった。



――『アキハバラ』……通称『アキバ』



 アニメやマンガからラノベ、グッズその他いろいろな『物欲』を満たすものがすべて揃っているといっても過言ではない街…………日本最大の電気街だ。


 俺たちの目当ては『アニメ・マンガ・ラノベ』といったところだ。


「いや~、病院で一カ月近くいたから『アニメイティ』に行くのはかなり久しぶりでテンション上がるな~っ!!」

「そっか~。僕は二週間前に行ったくらいかな~」

「吾輩は先週ぶりだな」

「何だよ、二人とも通ってんな~」

「そりゃ~ねっ!」

「至極当然である」


 二人は満足そうな笑顔で答える。


「俺もこれからは一緒に『アキバ』探索するぞいっ!」

「おっ、タクミ氏! それは『ニューゲーミング』の『ぞいちゃん』だなっ?!」

「よ~し、これからは毎週末は『アキバ探索』だね~~っ!!」


 俺、静流、光也は各々テンション高めで電車内ではしゃいだ(もちろん、ちゃんと周りに迷惑かけない程度にね)。


 そうして俺たちを乗せた電車は『アキバ』へ到着。


 駅を出ると、多くのメイド喫茶の『コスプレスタッフ』が広告用のティッシュ配りをする光景が目に入ってくる。


 静流や光也は俺が意識を失ってから一カ月しか経っていないという感覚のようだが、俺からすれば異世界へ行った間はそこでの時間がちゃんと流れているので実際には『一年ぶり』ということになるので、メイド服のコスプレイヤーのテッシュ配りを見るだけでもジーンと嬉しさと懐かしさが込みあがってきた。


「う~ん…………やっぱり日本に帰ってきて本当によかった」


 俺は街並みを見ながら改めてそう実感した。


「でもさ~、拓海…………異世界ではコスプレじゃないちゃんとした職業のメイドさんとかもいたんでしょ?」


 光也が尋ねる。


「ああ、そうだな。目の前にいるメイドよりも『フリフリ』は付いていないし、もっと機能的かな」

「なるほど。やっぱりそういうものなんだな。ちなみに、ああいう…………獣人系もいたりするもんなのか?」


 静流はコスプレショップの店頭で売り子をしている『ウサ耳』とモフモフの肉球で手招きしているコスプレイヤーを見ながら訪ねた。


「ああ、いたよ。ていうか仲間の一人の乙女闘士ヴァルキュリアのマリーナは本気になると『獣人モード』になるんだよね」

「なんですとーーっ?! 仲間に『獣人』がいたのかーーーーーっ!!」

「ああ。ちなみに、マリーナの獣人モードの姿は『赤熊』って言って、こっちでいう『体毛が赤い熊』みたいな毛で覆われた状態に変身するよ」

「くぅぅぅ~~~!! うらやまけしからんっ! ぜひ、一度、見てみたかったっ!!」


 静流が心底悔しそうに天を仰いだ。


「ねえ、拓海…………拓海の魔法で異世界あっちへ移動することはできないの?」

「え? い、いや、さすがに……それは………」

「そっかー、さすがにそれは無いよね?」

「まあな」

「タクミ氏っ! 魔法が使えるのならもしかして異世界へ移動する『空間魔法』とか『召喚魔法』を作ることはできないのか?!」

「え? 魔法を…………作るっ?!」


 俺は静流が言った『魔法を作る』ということは考えてもいなかった。


「さ、さあ、そんなこと……やったことも考え方も……なかったよ」

「何? そうなのか? タクミ氏よ…………君はアニメやラノベで何を見てきたんだ? 異世界で魔法が使えるのなら一度はトライするのが世の常だろうがっ!!」

「うぅ……っ?!」


 何故か、静流が逆ギレ気味に詰め寄る。正直、静流の言っていることが正論のように感じた俺は言葉に詰まった。


「え? た、拓海…………もしかして、静流君の言う通り、召喚魔法を作ることができるのっ?!」

「い、いや、作れるかどうかはわからないけど…………ていうより、魔法自体作ったことないけど…………で、でも、もし、魔法を作ることが俺にできるのであれば、試す価値は…………あるなっ!」

「そうだろ、そうだろ!……………………よし、決めたっ!!」

「「え? 何を?」」


 静流の発言に俺と光也は注目する。


「輝く未来のために、これより『召喚魔法作成研究所』を開設するっ!!」

「「はぁぁぁ~~~?? 『召喚魔法作成研究所』~~??」」


 静流が大声でそんな『中二病的ワード』を叫んだが、ここは天下のオタク街『アキバ』…………周囲が静流の言葉を本気に捉える者など当然なく、むしろ、『ああ、こじらせてるね~』とか、『うむ……闇歴史をまた一つ刻んでるな、少年』といった共感と同情の言葉が聞こえてきた。


「そうだっ! もし、それが成功すれば拓海だって異世界に残してきた仲間や友人たちに会えることができるし、我々も異世界に行くことができるし、と良い事づくしジャマイカっ!!」

「すごいっ! それ良いね、静流君っ!!」


 光也もかなりテンション高くノリノリで静流に乗っかった。


「い、いや、あの…………魔法が使えるっていうのと、魔法を作れるのはまったく別モノだし、仮にできたとしてもそんな『召喚魔法』なんてできるわけ……」

「いいや、そんなことはないぞ、タクミっ! 我々にはアニメやマンガ、ラノベで培った『中二病』という『魔知識』がある! もしかしたら、そこに活路が見いだせるやもしれんぞっ! そして、我々は今、そのアニメ、マンガ、ラノベの聖地『アキバ』に…………いるっ!!!」

「おおおおおおおおおっ!!」


 光也が静流の講釈に感動すら感じているのか興奮しながら聞いている。


「というわけでっ! 今日は『召喚魔法作成研究所』設立にして第一回目の探索活動を行おうと思うっ! 探索するモノは『召喚魔法』に関係しそうな資料集めだぁぁぁぁあぁぁ~~~~~~!!!」

「イエ~~~~~イっ!!!」

「というわけでタクミ氏ッ! 早速行くぞっ!!」

「行こう、拓海っ!!」

「えええええ~~~~~~っ!!!」


 俺は必死に抵抗したが二人は俺の手を掴むとズルズルと強引に引き摺りながら本当に『資料集め』として書店を周りに回った。


 俺、今期のアニメ情報とか、声優本とか、新作ラノベを探したかったんですけど~~~~~っ!!


 こうして、俺の楽しみにしていた一年ぶりの『アキバ探索』は『それじゃない感』で幕を閉じた。



――しかし、この時のことが『きっかけ』で、俺は召喚魔法の可能性をみつけることとなる




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