Act112-安全地帯
「ただいまー……って、のんきだなこいつら」
仲良さそうに眠る五人の少年少女を見て、ついそんな言葉が漏れる。
この森が安全地帯なのかは知らないが、それにしても無防備過ぎる。
「どうする? 起こす?」
「いや、そっとしておこう。特にミユとか怒りそうだし」
「ミユ?」
「あー……そうか、説明しなきゃいけないんだったな」
俺は香澄に座るように促し、ミユたちとは少し離れたところで二人揃って腰を落ち着ける。
「さて、どこから説明したものか……」
「最初からだよ?」
「おい何時間かかるかわかんないぞ?」
「大丈夫だよ。それにこうして会ったんだし、色々話そうよ」
「ここでか……まぁ、いいけど」
俺はミユたちがぐっすり眠り続けてくれていることを祈りながら、彼女たちとの出会いを一つ一つ話し始めた。
◇◆◇◆◇◆
「ーーって感じだな」
「なるほどねー」
「……俺しか話してないじゃん」
色々話すと言っていた割には、香澄はたまに相槌を入れる程度で、終始聞き役に徹していた。
「いやー、よく考えたらお兄ちゃんの半年って、私たちが現実で過ごした数時間だったんだよね」
「それも……そっか」
今まですっかり忘れていたが、俺の半年間は現実でいうところの数時間にしかならないのだ。香澄からしてみれば、俺と別れてまだ全然時間が経っていないことになる。
「あ、誠也があの後も輪つなぎ作り続けてたくらいかな」
「あいつ懲りないな」
”輪つなぎ”。些細なそのワードが、今はやけに懐かしく感じた。そういえばパーティの準備は終わったんだろうか。
それも気になるところだが、俺は香澄にもう一つ聞きたいことがあった。
「そういや、香澄はいつログインしたんだ?」
もし、ログインしてから結構な時間が経っていて、その間に戦闘を行っていたのなら、さっきのブランクを感じさせない剣さばきにも説明がつく。
香澄は少し考える素振りを見せるが、すぐに諦めて答える。
「んー、この前……かな。正確な日付までは覚えてない」
「その間に、誰かと戦ったか?」
同じく、「覚えてない」という答えが返ってくる。
「なんか突然意識がふっと無くなる時はあったけど」
「なんだって!?」
今までの事例からして、まさに”誰かに操られている現象”の典型的な症状だ。
「詳しく聞かせてもらえるか?」
「うん」
「それ、私にも聞かせてもらえる?」
いつの間にか近くに腰を下ろしていたミユが会話に混ざってくる。
「……起きてたのか」
「たった今だよ。ちょっと気になる話してたからさ。カスミちゃん、私がいても大丈夫?」
「なんで私の名前を……?」
聞いてから、少し離れたところで眠る誠也の姿を認めたのか、なるほどと得心したようだ。
「わかりました。では、話します」
「ありがと」
姿勢を正すと、香澄は重苦しそうに話を切り出した。
「私がログインして最初に見たものは、人が光に包まれて消えていく光景でした」




