温かな雨
「生きたらどうなるの」 この世界で君は言う
「なんにもならないよ」 期待はずれの僕の回答
放課後の教室で 黄ばんだカーテンのドレスを纏う
身を丸めて隠れた 君の小さな体
僕はみとれて立ち尽くしたんだ 泣いている顔も愛おしかったから
机に詰められた虫の死骸 画鋲で満たされた上履き
濡れた教科書 捨てられたお弁当 なくした感情
「今夜は雨が降るよ」 帰りを促す僕の声
「帰ったところで地獄だよ」 予想通りの君の回答
ガリガリに痩せた白い腕 掴んだら簡単に壊れそう
引っ張りあげて抱き締めた 君の小さな体
僕はその場で立ち尽くしたんだ 伝える手段がなにもなかったから
「平和」という言葉の存在理由は その裏側を生かすため
「幸せ」だって同じで そんな言葉がなければ 知らずに済んだのに
僕たちがこの世界に馴染める日は 死ぬまでこない
「死んでしまえばこの世界を愛せるかな」 愛す気なんてないくせに
未だに死ぬことに意味を求めてしまうんだ 虚しくなってしまうから
物語に込められた感動なんて 僕たちにはないんだよ
せめて楽になろうね これ以上期待しなくていいように
精一杯生きてきたよ 君も僕も下手くそでよく笑われたけど
死ぬことくらいは 生きている人たちよりかは上手に出来るはずだから
100均で買ってきた新品のカッター たった100円で奪える命
僕の分と君の分 お揃いの白 汚れちゃうかな
「死んだらどうなるの」 この世界で君は言う
「僕が悲しむよ」 期待はずれの僕の回答
「よかった。じゃあ一緒の気持ちになれるね」
一番の笑顔を僕は見た 本当は守りたかった
「おやすみなさい」
君の温かな鮮血を浴びて 僕もゆっくりと後を追う