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第5話~誕生日(れっつぱーりぃ!)~

お気に入り登録やポイント入れてくださった方ありがとうございます!

今回はちょっとは進んだかな?今までで1番文字数多いです。

王様にユミエル姫をよろしく頼まれた後、話題はいつ俺のことを発表するのかと、どこまで俺のこと(正体的な意味で)を公開するかということになった。

だが、発表については、王様がいい案があるといい、特に反対もなくすんなり決まった。そしてどこまで俺のことを公開するかということになったのだが……。


「そのまま言えばいいではないですか」


「精霊の声が聞けぬ者達にとって《神の使い》は胡散臭すぎるだろう」


「いえ、もう胡散臭いとかそんなレベルじゃないと思いますよ?」


「彼ら(貴族連中のこと)は王家に取り入ることしか頭にありませんからね。急にユミエルに近づいたカイト殿を排除するためなら、たとえ真実だろうと受け入れないでしょうね」


上から順にユミエル姫、王様、俺、王妃様。場所はいつの間にか眺めのいいテラスに代わっていて(まぁ普通に移動しただけだが)王様、王妃様、ユミエル姫、俺の4人でお茶会しながら話している。俺とユミエル姫、王様と王妃様がそれぞれ向かい合う形で1つの丸テーブルを囲んでいる。

カイザとミアさんは仕事らしく、テラスに来る途中で別れた。


その後もいくつか案は出たが、イマイチどれもパッとせず、全員でうんうん唸っていると、王妃様が「閃いた!」と言わんばかりの笑顔を輝かせて言う。


「こんなのはどうかしら?カイト殿は近衛を付けたがらないユミエルのためにエドが密かに鍛えていた近衛になるべくしてなった近衛兵なの。初めから用意されていたってことにしちゃうわけ」


いつの間にか話し方がずいぶん砕けている王妃様である。つかなにその人造近衛兵みたいな設定は……。


「お母様、それではカイト殿の眼が黒い理由が説明できません」


そう、ここへきて特に気にしてなかった眼の色が割と足を引っ張っている。前にも言ったと思うがこの世界には黒眼は存在しないそうなので、一国の王女の近衛がそんな未知の眼を持っているのは、俺を快く思わないであろう連中に対して、漬け込むスキにしかならない。

と、ここでふと疑問が頭に浮かんだので聞いてみる。


「あの、目の色って何で決まってるんですか?」


そう気になったのはこれ。ユミエル姫の眼の色はエメラルドグリーン。母親である王妃様はクリムゾンレッド。父親である王様は水色を暗くしたような色合いのダークシアンブルー。

顔立ちを見る限りユミエル姫ユミエル姫が養子とはとても思えない。つまり血は繋がっていて、身体的特徴や醸し出す雰囲気などは十分親子と言えるのに、瞳の色だけがイレギュラーなのだ。瞳の色にだけ遺伝の形跡がない。(ちなみにカイザは燃えるような純色のレッド。ミアさんは映える様に明るいライムグリーン)


「瞳の色はその者が最も得意とする魔法に沿った色になるんだよ。フランなら火。ユミエルなら風。我ならば水。といった具合にな。ちなみに瞳が黄色いものは土だ」


「同じ系統の色でも例えば、私とカイザは同じ赤でも差があるでしょ?ユミエルとミアもそうね。色の濃さに差が出る理由はまだ分かっていないけど、魔力の質が関係してるんじゃないか?って言うのが今1番有力な説ね」


なるほどそう言うふうに決まっていたのか。だから親子でもまるで違うのか。


「でもそれがどうかしたんですか?」


ここで俺は自分の眼の色についていい案が浮かんだが、それにはまずこの世界の魔法のことを多少しっておかなきゃならない。その旨を伝えると、馬車の時同様ユミエル姫が教えてくれたので、またまとめることにする。


まず、この世界にはすべての魔法の元となる基礎魔法がある。火、水、風、土。この4つがそれにあたる。基礎魔法は基礎の基礎のそのまた基礎なので出来ることと言ったら、火を灯す(マッチ1本レベル)、水を出す(徳利1杯分くらい)、風を起こす(ティッシュがそよぐかどうかのレベル)、土を盛り上げる(1センチくらい)という程度のもの。これを直接使うことなんてないと言っていい。


この基礎魔法にはそれぞれに、攻撃系魔法、防御系魔法、特殊系魔法がある。攻撃系と防御系はそのままの意味であり、使い方は人による。魔法学校などで学ぶものは良くある火球(ファイアーボール)とか、風刃(ウィンドカッター)とかで、魔力消費が少なく簡単な分、威力が弱い。(防御系の場合は紙防御になる)


では、いざ戦わなければならなくなったら?ここで必要になるのがイメージ力だ。魔力を介すことで自分の思いを具現化する。その形は様々で、一流の魔法使いは水中でも消えない炎や、中で呼吸の出来る水球、空間を切り裂く風や、見た目では分からないほどに精巧な人間のゴーレムなど、その発現の仕方は多岐にわたる。発現する形を明確に思い浮かべ、それを現実のもとして具現化する。この2つがとっさに出来るくらいになってやっと、一人前の魔法使いである。ちなみに優秀な魔法使いは2種類以上の魔法を合成することで、より強力な魔法を行使する。


ここでさっき出てきた瞳の色と得意な魔法が出てくる。「得意な魔法」というのは他の3つに比べてイメージを具現化しやすい、自分の意思を反映させやすいものをいう。よって、基礎が固まると後は自分と同タイプの人に教えを乞うのが一般的だ。(独学で頑張る人も決して少なくはないそうだが)


次に特殊系魔法について話す。特殊系はそれぞれ、火は強化系、水は回復系、風は補助系、土は創作系となっている。

強化系は主に肉体を強化する魔法であり、前衛で戦う者が使うことがほとんどである。

回復系は主に傷を癒す魔法で、その効果は肉体だけにとどまらず、精神的なダメージさえも(多少は)癒すことができる。

補助系は主に速度強化と索敵、隠密に使われる。(優秀な魔法使いは自身を中心に半径1キロの範囲を索敵することが可能なのだそうだ)

創作系は主にゴーレム(ただし木偶の坊みたいの)を作りだし、一時的に人手を増やすのに使われる。大規模な工事現場などで使用されることが多く、平民にはかなり身近な魔法だ。あまり複雑な動きはできず、単純な作業にあてると効率がいい(結構な力持ち)


ここまで簡単にまとめたがそんなに複雑じゃないな。要は使う人の気合次第でいろんな魔法が飛び出るって寸法だ。個人的に気になったのは魔法が《自分の思いを具現化するもの》であること。これって神様じーさんが俺にくれた《己の思いを現実のものとする力》に似てない?まぁ今は関係ないから別にいいケド。


さて、次で最後だ。最後に出てくるのは魔獣や魔物が持つ《闇属性の魔力》についてだ。ぶっちゃけて言うとこれについてはよく分かってないらしい。行使される魔法(らしきもの)が皆一様に闇色で、どんな魔法なのかイマイチ不明。伝承にも出てきていることから、名前だけはついたと……。


この《闇属性の魔力》は基礎魔法とはまったくの別物であるらしく、どうにも研究のしようがないのだとか。唯一《闇属性の魔力》と対をなすものとして伝承には《光属性の魔力》なるものがあるらしいが、その存在は確認されていない。


ここまで聞いて俺は、自分の案でいけることが分かったのでさっそく提案してみる。


「なら、俺の眼が黒いのは全部の魔法に適性があるからってことにすればいいんじゃないですか?4色混ざって黒く見える。みたいな」


俺がおもいついたのはこれ。多くの色を混ぜたら黒くなるのは子供でも知ってることだ。4色も混ぜりゃ黒くもなるでしょ(たぶん)。


「なるほど!王様(おとうさま)が密かに用意していたっていうくらいですから、それくらいの特異体質の持ち主だとしても不思議はないかもしれません」


「ちょっと苦しい気もするけど……」


「だが、現状1番マシだな。真実でない以上多少苦しいのはやむをえまい」


という訳で、《神の使い》よりは胡散臭くない《人造近衛兵的な何か(全部の魔法に適性がある)》に決定。まぁこれも十二分に胡散臭いケド……。もう後はゴリ押しするしかないです。はい。


---☆---☆---☆---☆---


胡散臭い設定を決めてから3日後。現在は夕方。時計がないので正確な時間は分からないが、たぶん5時くらいだと思う。

今俺は、城の中でもひときわ大きいパーティーホールのテラスにいる。片手に果実酒の入ったグラスを持って、1人のんびりしている。未成年?ここは異世界ですよ?気にしたら負けですよ?ちなみに今の格好は、青と白を基調とした近衛騎士団隊長の礼服だ。軍服って感じのブレザーに皺1つないズボン。ブーツみたいな靴を履いていて、手袋もしてる。さらにマントなんかが付いていて、恥ずかしいうえに動きずらい。


この3日間なにやってたかってーと、カイザとミアさんに近衛兵としてのいろは(・・・)を教えてもらってた。城の構造の把握から書類仕事、制服の採寸もやったし、戦闘訓練にも参加した。訓練の方は特に問題もなく(あるわけがない)楽しかったのだが、いかんせん書類仕事が苦手すぎた。なんせ文字が書けないのである。「翻〇コンニャク」のお陰で話せるし、読めるのだが、書けない。厳密には書けるのだが、書き慣れていない上に文法が日本語とは違う(英語に似てるけど違うとこも多い)ので、書くのにやたら時間がかかる。書類は溜まる一方です。もうホント勘弁してください(涙)ってかんじ。


そんな俺がなんでまったりしているのかというと、今日は何と、ユミエル姫の誕生日パーティーなのである。めでたく16歳になったユミエル姫は貴族連中や他国のお偉方に囲まれっぱなしだ。こっちの世界では16歳は一つの節目だそうで、パーティーはかなり盛大なものとなっている。俺はどっかの風術師よろしく風の精霊と同調することで会場を常に死角ゼロで監視し、ユミエル姫自身に3重の防御魔法をかけることで、護衛役は果たしている。


と、ここでじいや(暫定)が舞台袖から出てきて音声拡張魔法(風の補助系の一種)と唱えた。


「会場にお越しの皆様。只今より、アリネシア王国両陛下より、ユミエル様への祝いの品の贈与を執り行いますので、どうぞ前の方へお願いします」


参加者が舞台付近に集まると、ユミエル姫が壇上に上がる。

俺は舞台裏に移動する。


「まずは王妃様より、ユミエル様への贈与です」


「お誕生日おめでとうユミエル。あなたがここまで立派に育ってくれたこと、誇りに思います」


そう言ってユミエル姫に細長い長方形の箱を手渡す王妃様。ユミエル姫はそれを受け取ると1歩下がって一礼し、そっとはこを開けた。中から取り出したのは青い宝石のついたネックレス。デザインこそ派手ではないものの、とんでもなく高価なものであることはその輝きから、想像に難くない。


ユミエル姫はそれを身につけると、もう一度王妃様に頭を下げた。会場は拍手に包まれる。


「続きまして、国王陛下より、ユミエル様への贈与です」


「16歳の誕生日おめでとうユミエル。思えば早い16年だった。ついこの間生まれたと思ったのにな。長女のお前はいずれこの国を継ぐ者になるだろう。これからも一層励んでくれ」


そこまで慈愛に満ちた声で言い終えた王様は、少し表情をかたくして言う。


「さて、16歳という節目を迎えたお前に授ける今回のプレゼントは……1人の近衛兵だ」


言った途端に会場がザワザワと喧騒に包まれる。

ま、ふつーそうなるわな。なんせ今まで頑なに近衛をつけることを拒んでたユミエル姫だ。そこになんの事前告知もなくいきなり近衛をつけるってんだから、そりゃ騒ぎにもなる。


そう、王様の俺を近衛として発表する案とはこれだったのだ。誕生日プレゼントとして俺をユミエル姫にあたえることで、周りに何も言わせない作戦。近衛であるのは確かだが、あくまで誕生日プレゼントなので、父親が娘にあげるものに、他人が口を挟む余地なんてない。


「カイト君。来なさい」


「はい」


この3日の間に王様の俺の呼び方は「お主」から「カイト君」になった。打ち解けたってことでいいのかな?そんなことを考えながら舞台に入る俺。あ、今ザワザワがガヤガヤに変わった。会場全体を認識している俺には彼らの会話が聞こえる。「若い」「何者だ?」「初めて見る顔だ」「どこの家の者だ?」「いつの間に」「誰だか知らんが先を越された」


若いってそんなに驚くポイントか?まぁいいけど。会場がやや騒がしくなったのでじいや(暫定)が静かにするように言う。喧騒はやがておさまり、今度は会場中の人間が俺をガン見してくる。視線うっとーしぃー!


「彼は我が前々からお前のために用意していた者だ。お前は人数が多いのを嫌うと思ったからな。付けるのは彼一人だが、カイザにも勝るとも劣らぬ腕の持ち主だ。これからはこの者を専属の近衛とせよ。よいな?」


「分かりました。ありがとうございます。お父様」


会場の、特にこの国の貴族と思われる連中はとても複雑そうな顔をしていた。他国からの大使達は興味深そうに俺を見ていた。


こうして無事にユミエル姫の近衛兵となった俺だが、貴族連中の反応を見るに、これで終わり、とはいかなそうだなぁ……。


「これにてユミエル・イル・フォン・アリネシア様の誕生日パーティーを終了させていただきます。ご来場の皆様、本日はご足労ありがとうございました。なお、後日、日を改めまして、王国主催による、ユミエル様の初近衛兵士の任命式典パーティーを開催いたします。本日はお疲れ様でした」


俺はユミエル姫を部屋まで送り届けたあと、部屋に引っこんで(近衛兵は、隊長は場内に広い個室、副隊長は城外にやや広い個室の兵舎、一般兵は城外に少し広い個室の兵舎があり、家族持ちでない兵士はここで生活する)さっさと寝た。


余談だが、王様はユミエル姫に俺とは別にちゃんと、イヤリングをプレゼントしていた。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

次回は任命式典の予定。あくまで予定です。それではまた~


誤字・脱字の指摘や感想などありましたらお願いします。

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