第90話 「キナコとは」
──後日。私達はローレファルス先生に呼ばれ、職員準備室へと来ていた。
セリアが見渡しながら椅子に座って見渡す。
その空間こ居たのはセリア自身、ルイネ、ミィ、ルーテリア、クローディア、エルマ、ヴィクトリア、ジョルティア、ガーバント、そして呼んだ本人であるローレファルスだった。
「…え、えぇーと。大所帯…ですね?」
「全くだな。」
ローレファルス先生が肩を竦めつつ、資料を開きながら言う。
「ヴィクトリア、資料にあるがいくつか説明を聞いて良いか?」
「大丈夫ですよ」
「一つ、セリア達と数日かの間、過ごしてもらったがこの資料以外に発見点はあったか?」
「──…他よりゆっくりという雰囲気がありましたね。」
「ゆっくり…か。ありがとう」
そう言いつつ何かを書き込む。
「あ、あのー。ローレファルス先生、どういった集まりなのでしょうか…?」
「皆も知っての通りセリア、君の周りにいる人物を集めたんだが。何故増えてるのか…」
「にゃっははー。居心地よくて~?♪」
「質問しつも~ん。ヴィクトリアは最近来とるんは知ってるけど、この集まりやったらなんでおるのか教えてもらってもええかな?」
ルイネさんが手を上げて言うとローレファルス先生が頷く。
「ヴィクトリアにも少しセリアの観察を頼んでいてな。その報酬としてキナコがどんな動物かを調べてほしいと言われてな」
「あっ、キナコの事分かったんですか…!?」
「あぁ。禁書を調べた限りではソレが一番当てはまっていた」
キナコは首を傾げるようにしてセリアの手のひらの上に居た。
「それで、どんな精霊さんなんですか…?」
「豊樹の精霊栗鼠。どんぐりの帽子のような耳、若葉色のふさふさとして尾を持つ。」
私達はキナコを見ながらその特徴を見ていく。
「合ってます…ね?」
私はキナコを優しく撫でると目を細めてぴったりとくっ付いてくる。
「木々の種を運び、魔力で発芽を促す絶滅種。警戒心が非常に強く人の前に滅多に現れない。そして友好の証として木の実を渡す。」
「あっ、だから芽が生えてたんですね…?」
頷きつつローレファルス先生が更に続ける。
「それと同時に渡された奴についても調べておいたが。一つが妖精の種。該当する属性が付近にいて共鳴する時に力を増幅させる種だ」
「ならそれが木になったらどんな風に?」
「属性に応じて変わるが、該当する精霊が寄ってくるようになるといった内容だ。周りがそれに似た環境に変わるような種という事だ」
「桜、みたいな性質をしていますね…?」
「ん…。何故そう思った?」
「お師匠様が言ってたんですが…桜には微量な毒があって、そのせいで雑草が周りに生えないそうなんですが」
「ふむ…確かに周りの影響を受け付けずに周りを逆に変質させるという点では一緒だな」
「にしても少し不思議ですわね。そんな環境変化を起こす種が5個あるなら何かしら反発があるのではなくて?」
「確かに?でもセリアちゃん全然見てる分にはぜーんぜんそういう事ないよねー?」
「んー…確かに発芽しましたけど…何故かずっと元気なままなんですよね…。普通は土の中に埋めないと萎れちゃうのに」
「…土…アシス?」
「え…?」
「…アシス。豊穣の泥小鬼だから。代わりになってるのかなって」
「そうなると水は陽溜まりのスライムのポヨンやな?一応スライムやし水属性持っとるはずやし」
「は、発芽を促すなら…その、セリアさんの袋から出てた光が影響するなら…キナコちゃんのも相まって…発芽するかな…と」
皆がそう言ってくれている間ヴィクトリアさんが口を開く。
「…整理すると、その巾着の中が自然界と同じ状態になっていると言いたいの?そんな魔法聞いた事が無いわ。」
「四季があってという点で考えれば辻褄は合いますわ?」
それらの話を聞いて、それぞれの名称などと照らし合わせてローレファルス先生が纏めていく。
「確かに循環するな。ポヨン、水と太陽。メロデ、風。アシス、土壌。ヒヤン、氷で冬。フラワ、周りの自然。そして発芽を促すキナコだ」
「そうなんですか…?キナコ?」
頭を撫でながら言うと「キュルッ!」と両手を広げる。
「…肯定なんですかね?」
「ん-。多分そんな感じ!そーだよって言ってるみたいに思えるよんっ」
「──それで、あと一つの種はなんでしたの?」
「それが候補がいくつかあったんだが。以前に見せてもらった時のを思い出して考えた結果引っ掛かったのは」
「──名前があるのかもわからない大きい世界樹と霊華幻桜だった。」
「「「──世界樹…?」」」
「あぁ。名称は無かったが、種の形状的にそれかと思った次第だ」
「…流石に、ない?」
「そんな大層なもんやったらめっちゃ力ぶわーっとかあって…ん?力…?」
それをルイネさんが言うと全員の頭に疑問が生じた。
天の剣を現に桜に変えて無力化した種。
あれがキナコの能力でないのなら…?
「え…へ?なんで凝視されてるんですか…?」
首を傾げる私を見つつ「まさか、ねぇ」と言う声が聞こえる中困惑する。
「ローレファルス先生、仮に世界樹の種と仮定した場合、どのような支障が起きるかの想定はありまして?」
「戦争にはなるだろうな。そんな力を使えるのであれば」
ヒュッっと全員が息を吞む。種一つで戦争が起きる。世界樹にはそれを起こすだけの力があるという事。
そう言っていると今まで静観していたガーバント先生が口を開く。
「──…なら、こちらからの依頼だ。この中にいる全員にな」
その言葉にはっと我に返った私達はガーバント先生を見る。
「セリア・レインを守れ。ランクがどうのと言ってられる状況ではない可能性がある。戦争というのはそう言うものだ」
「ハハッ…全く。本当に世界はこういう事から逃がしてくれないな。胸糞悪い程に」
ローレファルス先生が乾いたような笑いを出しつつ目を少し瞑って言う。
「では私からも少し依頼を受けてもらおう。この空間に居る全員はそれぞれでランク戦然り争いを禁ずる。」
「なっ…それは制度が──」
ヴィクトリアさんがそれだけ言いつつ目を逸らしつつ少し考えて「…わかりました」と言う。
私達の不安が募る中、キナコが動いて私の首元にぴとっとくっ付く。
──まるで私をずっと守るように。




