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試練前は殿下の事はそれなりにお慕いしていた。結婚して幸せになれると夢を見ていた。殿下がこんな愚かな人だとは思っていなかったし、信じていたのだから。
でも今となっては、私に落ち度がない状態で婚約解消できるし、協力して良かったと思っているけれど。本当にこんな人と結婚しなくて良かったわ。
「私がジェニー嬢を虐めたと言うのは、彼らとの作り話です。ジェニー嬢が殿下に近づいたのも試練の一環でした。私が虐めを行っていると彼らが訴えた時から殿下の試練が始まりましたの」
「嘘だ…」
顔は青ざめ、声は震えているものの、私の言った事を信じたくないのでしょうね。私には見向きもしないでの後ろにいるジェニー嬢を見つめてるもの。
「私の役目は、殿下に次期国王としての自覚や、きちんとした判断をアカデミー在学中に持っていただく様、見届ける事でした。たとえ政略的な婚約者だとしても、お側で支えていきたいとは思っておりましたから。ですが、殿下は私の言葉には全く耳を貸さず、彼らの言葉のみによって私を裁こうとしました」
ここまで言ってもまだジェニー嬢を見ている。どうしようもない男だわ。ここまで情けない男だったなんて。私も人を見る目をもっと養わなくてはいけないわね。
「でもジェニー、僕と過ごした時間や、愛を誓った気持ちは本物なんだろう…?」
そんなにも彼女の事を愛してしまったんですね。婚約して5年も一緒にいた私が目に入らない程に。でも、私は貴方に同情なんてしないわ。
私はジェニー嬢に振り向き、にっこりと笑って最後通告を促した。
「私は、エドワード殿下に対して愛情をもって接したことは一度もありません」
「嘘だーーーーーーー!」
「そこまで!」
未練たらしくジェニーに縋りつこうとした殿下を一瞥し、陛下が立ち上がる。
「今日をもってエドワードの王位継承権を一時はく奪する!2年間近衛騎士団に入り、己を鍛え直せ。これは国王としてではなく、父としてのお前への温情だ。せいぜい精進するが良い!連れていけ!」
後ろに控えていた3人に両脇と足を抱え上げられ、殿下は強制退場させられた。これから男だらけの騎士団で鍛え直される事だろう。この国の為、2年後少しはまともになっていて欲しいものだわ。
「そして、バレリーには愚息が迷惑をかけすまなかった。試練とは言え、嫌な役回りをさせてしまった。此度の事は全て愚息の責任として全て皆に話し婚約は解消とする」
「ありがとうございます陛下」
スッと立ち上がり頭を下げると、陛下はポンポンと私の頭を撫でながら、君に嫁に来て欲しかったと呟き執務室を後にした。
「おめでとう、で良いのかな?」
「うん。未練も何もないもの」
ジェニーと私はパンと手を合わせ抱き合った。
殿下の試練に協力したことで、私は最低な婚約者から解放され、最高の友人を手に入れた。
その後彼女と2人で冒険の旅に出る事にするのだが、それはまた別の話。
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