憎み、そして苦しみ
七勇者達は倒した邪竜の骸を持ち帰って神殿に封印した。 その神殿は邪竜の神殿と呼ばれている。
邪竜の神殿はミブ大陸の治癒の勇者エニーシャが統治する砂漠エリアにある。
ちなみに俺もその砂漠エリアで生まれ育った。砂漠だけあって、もちろん作物はろくに育たない。いつもちょっとしか採れない。
しかしそんなことにお構い無しにエニーシャは税をかける。俺には兄弟はいない。両親は病気で死んじまった。お金さえあれば街で治せる病気だ。だが死んだ。
生まれ育った砂漠の村のみんなはガリガリだ。エニーシャがここいらを治める前は貧乏ながら幸せに暮らしてたんだ。だけど、あいつらが統治を始めてからは…
「憎い、あいつらが憎い‼︎」
思わず叫んでしまった。飢えのせいで大きい声も出なかったが。
とぼとぼと村を抜け出して歩いていると、邪竜の神殿まで来てしまった。もう夕暮れだった。
「邪竜に怯えてるときの方がマシだったな。」
ボソッと呟いた。
あいつらが統治を始めてから幸せなど何もなかった。そして、この先も来ないだろう。街で勇者達にぺこぺこして優雅に暮らしている奴らも憎らしかった。
「もう…死のうかな。憎み疲れた…」
そう呟いて俺は舌を噛みちぎった。
意識が遠のいていく。薄れゆく意識の中、神殿の邪竜が描かれた石版が赤く光った気がした。
そして俺は、、、、
死んだのだ